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課長以上(管理職)は残業代が会社から出ない?労働基準法から解説

課長以上など「管理職」の役職はどんなに働いても残業代が出ない? 労働基準法では、「管理監督者」に対しては残業手当や休日出勤手当を支払わなくても良いとの規定があります。残業代がない理由とは? また課長は管理監督者と言えるのでしょうか。

執筆者:元榮 太一郎

<目次>
 

課長以上(管理職)の残業代は会社から支給されない?

課長になると残業代が出ない!

課長になると残業代が出ない!そんなことあるの?


会社勤めをしている方だったら、昇進して役職が上にあがることは誰だって嬉しいことですよね!でも、課長、部長という管理職の肩書になった途端に残業代が出なくなってしまうとしたらどう思いますか?今回は、課長以上の管理職の肩書であっても残業代が会社から支給されるのかについてご説明しましょう。

たとえば次のケースを例に見ていきましょう。ある会社の課長職のAさん。残業が続いたため、会社に対して残業代を支払ってほしいと請求したところ、「就業規則にも書いてあるとおり、課長以上の管理職に残業代は出ません。その代わり管理職手当を支払っています。」と言われてしまいました。

Aさんは課長という肩書ではあるけれど、平社員と同じように時間管理されていて、出社時と退社時にタイムカードを打刻しています。しかも、管理職手当は少額すぎて平社員に支払われている残業代よりも少ない状態です。このような場合でも、役職が課長以上になってしまうと、残業代は一切支払われないのでしょうか?
 

労働基準法では労働時間1週間40時間・1日8時間以内が原則

労働基準法では、従業員の労働時間は、1週間40時間・1日8時間以内(休憩時間は除きます)に制限されています。そして、従業員が、この時間を超えて働いた場合には、会社は通常の賃金の1.25倍以上の割増賃金を残業代として支払わなければなりません。
 

管理監督者に対して残業代を支払う必要がない理由(労働基準法にて)

他方で、「管理監督者」に対しては残業手当や休日出勤手当を支払わなくても良い、と労働基準法は定めているのです(ただし、深夜勤務手当は支払う必要があります)。

どうして管理監督者には残業手当や休日出勤手当てを支払わなくていいかというと、管理監督者というのは、自分の職場での時間管理について裁量権を与えられているし、経済的にもそれなりの待遇を受けているので、法律によって労働条件を定めてまであえて保護する必要はないと考えられているからです。
 

課長以上でも残業代が支給されるポイント……課長は管理監督者なのか

それでは、課長は管理監督者と言えるのでしょうか?課長のような、いわゆる「中間管理職」については、管理監督者と言えるのかどうかは微妙になってきます。一般に、管理監督者とは、
  • 労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的立場にあるかどうか
  • 名称にとらわれず、実質的に管理監督者としての権限と地位を与えられているかどうか
  • 出社退社等の労働時間について厳格な制限を受けていないかどうか
  • 地位にふさわしい賃金面での待遇がなされているかどうか
などの点を総合的に判断して決められます。ですから、課長という役職名がついているからといって、一律に残業代が出なくなってしまうわけではないのです。つまり、課長であっても、上記のポイントを総合的に考慮した結果、管理監督者ではないと判断される可能性があるのです。これは、就業規則に「課長以上は残業代が出ない」と書いてあっても同じことです。

さっきのケースでは、Aさんは出社と退社の時刻が決められていて、タイムカードで時間管理されているうえに、毎月の管理職手当も少ないということでした。このような場合だと、課長という肩書を持っていても、会社はAさんに残業代を支払う必要がある可能性が高いといえるでしょう。

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