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フランス語を肴にお月様を愛でる……詩的な感覚を愉しもう!

太陽のまばゆさとは対象的に、神秘的な輝きで絶えず人の心を魅了し続けている「お月様」。熟語表現から恋愛映画まで、フランス語を肴にとことん「お月様」を愛でながら、一味違ったお月見を楽しんでみましょう。

越智 三起子

執筆者:越智 三起子

フランス語ガイド

フランス語を肴にお月様を愛でる

フランス語を肴にお月様を愛でる

フランス語を肴にお月様を愛でる

太陽のまばゆさとは対象的に、時代を問わずその神秘的な輝きで人の心を魅了し続けているlune(リュヌ/月)。フランスには、日本のようなお月見の習慣はありませんが、そのイメージが言語や文化に与えた影響はかなりのもの。今宵は、世界中で愛されているお月さまを肴にフランス語を楽しんでみましょう。
 

詩的な感覚を愉しもう! お月さまフランス語

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エッフェル塔と巨大なお月さまの相性は?
ハネムーンがlune de miel(リュヌ ドゥ ミエル/蜜月)、croissant(クロワッサン)が「三日月」であるというのは、多くの人が知っているメタファー。

それでは、lune d'eau(リュヌ ド/水の月)とも呼ばれることのある植物についてはご存知でしょうか?正解は、nénuphar blanc(白い花の睡蓮)。水にたゆたう美しく白い花を月にみたてたその感覚には、日本人である私たちにも共感できるものがあります。

また、poisson-lune(プワソン リュヌ/月の魚)、あるいはlune de mer(リュヌ ドゥ メール/海の月)という別名を持っているのは水月(くらげ)ではなく、môle(モル/マンボウ)。銀色に光り輝く巨体に申し訳程度についた眼と口がとてもかわいらしいマンボウですが、同時にGeorges Méliès(ジョルジュ メリエス)の『Le Voyage dans la Lune』(月世界旅行)にでてくるシュールなお月さまのvisage de lune(ヴィザージュ ドゥ リュヌ/真ん丸の顔)を連想してしまうのは、ガイドだけでしょうか?
 

神秘的かつ移り気な様子が魅力のお月様

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太陽よりも月のような怪しげな世界を得意とするTomi Ungerer
それでは次に、「お月さま」が登場する熟語表現をみてみましょう。

まずは、日常会話でも耳にすることの多いêtre dans la lune(エートル ダン ラ リュヌ)。「月の中にいる」という直訳をもつこの表現は、「ぼんやりしている」という意味を表します。

また「月の中に頭を持つ」という言い回しで「夢見がちである」という意味を表すavoir la tête dans la lune (アヴワール ラ テット ダン ラ リュヌ)も月の神秘性を示す似たような表現でしょう。

さらに、lunatique(リュナティク/気まぐれな)という形容詞の中にも、lune(月)の名残が見られますが、これもまた月がその姿を様々に変えていく様子を連想させる表現です。

絵本作家Tomi Ungererの作品に『Jean de la lune』(ジャン ドゥ ラ リュヌ/邦題:『月おとこ』)というのがありますが、主人公Jeanは、月の住人でありながら地上に降り囚われの身となり、月の満ち欠けにあわせて自分の姿を縮小させ脱獄したりします。とてもpoétique(ポエティック/詩的)で素敵な絵本ですので、初心者の方は、フランス語版にもチャレンジしてみるといいかもしれませんね。
 

手が届かないからこそ美しい!? お月さまは「不可能」のシンボル

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「月を手に入れる」のは全世界共通の夢?
では、引き続き「お月さま」を用いた熟語表現を見てみることとしましょう。先ほどのような表現に加えて、お月さま熟語にはimpossibilité(アンポシビリテ/不可能)の同義語として用いられる表現がいくつかあります。

まずは、demander la lune (ドゥマンデ ラ リュヌ)、vouloir la lune(ウ゛ロワール ラ リュヌ)。どちらも直訳すると、「月を欲しがる」ですが、「不可能なことを要求する」という意味で使われます。

アメリカ出身でフランスでも高い人気を誇る絵本界のカリスマEric Carleの『パパ、お月さまとって!』は、お月様を欲しがる女の子にパパがはしごに上ってとってくれるという夢のある内容ですが、現実はそう簡単にはいきません。

décrocher la lune(デクロシェ ラ リュヌ/月をとりはずす)とは、「不可能を試みる」という意味。promettre la lune(プロメットル ラ リュヌ/月を約束する)という表現もありますが、やはりフランス語では「できそうもない約束をする」という意味になります。
 

恋愛の小道具としてはうってつけのお月さま

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月夜に見てみたい『Pierrot le fou』
こうした表現をみてみると、フランスの「お月さま」は、人の頭をおかしくさせるような不思議な能力をもっており、ころころ姿を変え、美しいけれど入手不可能な美女のような存在。女性名詞であるのもうなずけますし、ある意味amour(アムール/愛)の同義語であるようにも思われます。

そんな月と恋愛の相似性を素晴らしい映像でみせてくれるのが、Jean-Luc Godard(ジャン リュック ゴダール)の『Pierrot le fou』(邦題:『気狂いピエロ』)。

Jean-Paul Belmondo(ジャン ポール ベルモンド)演じるFerdinand-PierrotとAnna Karina(アンナ カリーナ)演じるMarianneが草むらに横たわり月を見ながら語り合う幻想的なシーンは多くの人の脳裏に刻まれていることでしょう。そして、語られるのは、美しい女に恋をして地上へ降りてきた男の話。

Marianne: Qui c'est ?(誰?)
Ferdinand: C'est le seul habitant de la lune. Tu sais ce qu'il est en train de faire ? Il est en train de se barrer à toute vitesse.
(月の唯一の住人さ。そいつが何してるところか知ってるかい?ものすごい速さで逃げているんだ。)
Marianne: Pourquoi ?(なぜ?)
Ferdinand: Regarde...(見てみろよ。)

画面には、圧倒的に美しい月のcontrechamp(コントルシャン/リバースショット)。続く三人称のIl(イル/彼)から一人称のJe(ジュ/私)へとさりげなく展開する次の台詞は、おそらく世紀を代表する口説き文句の一つであるでしょう。

Marianne: Où il va ?(彼はどこへ行くの?)
Ferdinand: Ici. Parce qu'il trouve que tu es belle. Il t'admire. Je trouve que tes jambes et ta poitrine sont émouvantes»(ここさ。君が美しいと思って。君に魅せられて……。君の脚、そして君の胸は感動的だ。)

Mon-ami-Ferdinand(モナミ フェルディナン)」と口ずさむAnna Karinaを思い出しながら、今宵はAu clair de la lune(オ クレール ドゥ ラ リュヌ/月の光に)をBGMにお月見を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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