人間関係

「8時10分前」は「7時50分」ではない!? 世代間の「日本語感覚」の違いが生み出す弊害とは

最近話題になった「8時10分前」問題。47歳女性が17歳の娘に聞いてみると、8時10分前は「8時7分か8分」と言ったという。「8時10分前集合は7時50分」という以前の「共有感覚」は今や完全に崩壊している。だがそこには注意も必要だ。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

プロフィール詳細執筆記事一覧
世代間の「日本語感覚」の違いに愕然(画像出典:PIXTA)

世代間の「日本語感覚」の違いに愕然(画像出典:PIXTA)

世代によって、また出身地域や育った環境によって、言葉の感覚は異なるものなのかもしれない。最近、「8時10分前」が何時を指すのかが話題となっている。

娘に聞いてみたら……

「8時10分前問題についてはテレビで知りました。帰宅した娘に早速、問い掛けてみたら、『8時7分かな、8分くらい?』と当然のように言ったのでビックリ」

苦笑しながらそう言うのはユリコさん(47歳)だ。「8時10分前といったら、7時50分でしょう」と言うと、17歳の娘は目を丸くしていたという。

「なにそれ、だったら7時50分って言えばいいじゃん、と。それはそうなんですが、そういう話ではなくて、集合時間は8時10分前、という言い方はよくあるでしょと言ったんです。そうしたら『それはない』と。8時10分前といったら、8時10分より前に集まれという意味になるはずだって。デジタル世代なんですかね。8時10分前と言われたら、私や夫の世代は、時計の短針がほぼ8のところ、長針が10を指しているところが目に浮かぶ。でも娘の頭には8:10という文字が浮かぶんですって。だからそれよりちょっと前に行けばいいのねとなるらしい」

興味を持ったユリコさんは、職場にいる外国人に話をしてみた。アジア出身の20代の若者はユリコさんの娘と同じ感覚だった。

「8時7分か8分か、はっきりさせてほしいけどねと彼は笑っていました。本当は7時50分のことよと言ったら驚いていた」

さらに驚いたのは、「8時10分前を、7時50分だと誤解している人がいる」というネット記事だった。自分の方が「間違っている」のが、今の時代の現実らしいと知り、がっくりしたそうだ。

言葉の勘違いが増えている?

「言葉は時代によって変わるというけど、なんだかそういう問題ではないような気がして……。難しいことでなくても、読み解けない人、勘違いする人がやたら多くなっているように思うんです」

例えばつい先日、テレビの字幕に「明日も全国的に猛暑 都心35度 38度の地域も」と出ていた。35度か、明日もつらいなと思っていたら、娘が「38度だって」と騒いでいる。

「いや、都心は35度って書いてあるじゃないと言ったら、だってここ都心じゃないもんって。ん? と思いました。私の解釈では全国的に暑い、都心は35度、全国の中には38度になる地域もある。だけど娘は都心は35度、それ以外の東京は38度になるかもという解釈なんですよね。難しいなあと思いました」

どう解釈するか、どう思うかは人によって大きく違うのかもしれない。

“1000円弱”、“~以来”も

職場でおいしいランチ、一緒に行きませんかと後輩から誘いを受けたミスズさん(40歳)は、「いくらくらい?」と聞いた。すると後輩は「1000円弱ですかね」と答えた。

「コーヒーもデザートもつくというから、それで1000円しないなら安いじゃないと思ったんです。でもいざ行ってみると1200円でした。別にいいんだけど、1000円弱って言ったよねと言うと、『ええ。1000円弱でしょ』と。20代後半の後輩ですが、彼女にとって1000円弱というのは1000円を少し超えた額だという。じゃあ1000円強はと聞いたら『1400円くらいですかね。1500円よりは下というイメージ』と。面白いなあと思いました」

1000円程度なら問題にならないかもしれないが、それが1万円となったら「1万円しないって言ったじゃない」と文句が出る可能性もあるだろう。

「言葉の共有感覚」が崩壊した先に起こること

「そういえば、映画好きの年下の友達と話していて、『このところ映画を観に行けてないの。5月以降、観てないな』と言ったら、『最後に観たのが5月ですか……』と。いや、5月から観てないという意味と言い換えました。以降とか以来とか、そういう言葉も誤解を生じやすいですよね」

こういった言葉の感覚は、以前だったらある程度「常識としての共有感覚」があったはずなのだが、今やそれは完全に崩壊している。自分の常識は相手の非常識だと思って、一つひとつ確認する必要がありそうだ。世間話の範疇(はんちゅう)ならいいが、仕事上の納期や金額などで思い違いが生じていたら、大問題となる恐れもあるからだ。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます