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国立小学校の受験……倍率・学費・メリット・準備を解説

小学校受験において、国立大学附属小学校(国立小学校)を第一志望にした場合にどのような対策と知識が必要でしょうか。入学検定(受験・入試・試験とは呼びません)に対して、どんな準備をしたらいいのか、倍率や学費などの基本的な受験情報を紹介します。

高橋 公英

執筆者:高橋 公英

学習・受験ガイド

国立小学校の受験

国立小学校の受験

読者から「国立大学附属小学校受験一本で行きたいけれど、どのように準備したら良いか」というご質問を頂きました。こうした質問は今回が初めてではありません。

国立大学附属小学校に狙いを定めた受験について、どんな準備をしたら良いのか考えてみます。

<目次>  

国立小学校受験を決めた理由は? 受験のメリットは何か

国立小学校受験のメリットと対策

国立小学校受験のメリットと対策

受験される理由はご家庭ごとに様々ですが、多いパターンは以下の通りです。
  • 通学圏内に適当な私立小学校がない
  • 私立小学校は授業料が高いので見送りたい
  • 公立小学校と私立小学校の良いところを併せ持った、国立小学校に通わせたい
それぞれうなずける点があります。

国立小学校の入学者選抜は、多くの学校で抽選があります。中には2回の抽選があって、最初の抽選に通らないと選抜試験すら受けられないこともあります。

抽選のリスクを考えると、国立小学校一本に絞っての受験はリスクが高いのですが、「通らなければ公立小学校へ通えばよい」と割り切るのならば、それも選択肢の一つです。

そこで国立大学の附属小学校受験に的を絞って、準備をどのようにしたらよいかを考えてみましょう。
 

国立小学校と私立小学校の違いを比較

国立小学校と私立小学校、受験が必要という点は一緒ですが、その他の点はどのように違うのでしょうか。
項目 国立大学附属小学校 私立小学校
教育費 制服などの学用品や通学費用がかかるが、私立よりずっと安い 高い(平均的には授業料が40~50万円)
中学進学 ほとんどが系列中学へ進学 同左(系列中学がある場合)
高校進学 中高一貫校とそうでない学校がある。一貫でないと同系列の高校へ進む割合は私立よりもずっと低い 成績や出席日数・素行等に問題がなければ系列高校へ進学できる
学習内容 教育実験校という位置づけから実験的な授業が行われる。また教育実習も頻繁に行われる 公立小学校よりも主要教科の時間数が多く、特色のあるカリキュラムとなっている。また、国際化を意識して英語の学習時間も多い

国立小学校は私立小学校に比べて学費が安く、児童が選抜されてきているので、子どもの理解度のレベルが揃っており、学習に集中できる環境が整っている点が最大のメリットです。

一方、実験的授業や教育実習が多く、教科の学習面では家庭学習で補う必要がある、という声を聞きます。敷地は広いことが多いのですが、国の予算削減によって、施設や設備には私立小学校ほどは期待できません。

また、最初に述べたように「選抜時に抽選が含まれる」ことが最大の難点です。つまり、「十分な準備をしても抽選で外れてしまう」というリスクは避けられません。
 

国立小学校に合格するのはどんな子ども?

国立小学校は「教育実験校としての位置づけがある」「公共交通機関を使って通学する」ことから、「先生の指示を聞き漏らさない」「通学時に周囲の人に迷惑をかけない」という点が重要になってきます。

また、教育実験校として、新しい授業の効果が確かめられる子どもたちであることが期待されます。入学前に最低限できていることが求められる項目が以下です。

■先生の指示や約束をきちんと守れる
実験的な授業をする際に、先生の指示を聞き漏らされては困ります。また頻繁にある教育実習で実習生の言うことを聞かないのも困ります。そこで指示行動が守れることが重要になってくるのです。

また、先生と「電車の中で走らない、大声を出さない」などの約束をしたら、先生がいなくても守れる子どもであって欲しいわけです。現実は必ずしもそうはなっていないようですが、私が電車で見かける某国立小学校の児童は概ねきちんと乗車しています。車中で読書をしている姿が印象的です。

自分の意思を言葉できちんと伝えられる
授業をしていても児童から何の反応も返ってこないと、授業の成果があるのかどうかわかりません。先生に話しかけられたら、それにきちんと答えてくれることが必要です。

また電車やバスで通学していると、事故や定期券の紛失など不測の事態に遭遇することがあります。そんな時に周囲の大人の助けを借りて解決できるためには、コミュニケーション能力が大事なのです。

■好奇心が旺盛
新しい試みをするのにしり込みする子ばかりでは困ります。面白がってどんどん積極的に関わってくれたほうが授業もやりやすいでしょう。

国立小学校は、保護者からしてみると、入試に際して「おやっ?」と思うことが多々あります。それが学校の「アドミッションポリシー(どんな児童を望んでいるか)」の表れなのです。

たとえば、出願から入学まで保護者が何度も学校へ足を運ばされるのは、配布文書をきっちり読んで手続きを済ませられるかを試しているのでしょう。試験当日に寒空の下長い時間立って待たされるのは、その間の忍耐力と集中力を試されているのです。公立小学校の先生の話では、配布されたプリントをきちんと読まない保護者が増えているそうです。そうした保護者は学校に迷惑をかけることも少なくないので、それを避ける意味があるのでしょう。

こうした細かい手続き等に各校のポリシーが見え隠れするので、入学検定の手続きや内容をよく注意して観察してみましょう。
 

国立小学校受験のための準備と対策

国立小学校受験のための対策と準備

国立小学校受験のための対策と準備

国立小学校を目指すとしたらどのような準備をしたらよいのでしょうか。

まずは、入学検定(受験・入試・試験とは呼びません)の内容を見てみましょう。
 
領域 内容
ペーパーテスト 知的発達の状況を見るためのテスト。文字を読む必要はなく、ナレーションを聞いたり、動画を見て○をつけたりして解答する。
個別テスト テスターの先生と一対一で、フリップで示されたり、口頭で聞かれたりすることに答える。
運動テスト 身体的発達を見るためのテスト。スキップやなわとび、ケンパー、クマ歩き、模倣体操、ボールの扱いなど。
行動観察 自由遊びであったり、グループで協力して何かをするものだったりするが、他者との関わり方や意欲を見られる。また、特にこの項目がなくても待機している間の行動もチェックされている。
制作 絵画や工作等の制作課題。テーマが与えられ、自由にできるものや、示された手順を記憶し、その通りに時間内に作りあげる。
面接 入学願書や事前アンケートに基づいた質問に答える。
すべての学校でリストアップした領域がテストされるわけではありません。ペーパーテストがなかったり、制作がなかったりします。

中には行動観察と面接だけの学校もあります。志願者の多い学校では足切りのために、ペーパーテストを取り入れていると思われます。また、これらの領域にまたがり「指示行動」の要素が加わります。指示に従って一連の運動を行う、あるいは行動観察の中で指示行動をさせるなどのものです。
 

国立小学校に向いていない子どもとは?

「国立の小学校は元気な子が合格しやすい」という意見が多いようです。一方で、「うちの子はどちらかと言えばおとなしいけれど、合格しました」という方もいます。

「国立小学校に合格しやすい子どものタイプ」というものはあるのでしょうか。

少し考えてみて頂きたいのですが、もしクラス全員が同じタイプの子どもだったらどうでしょう? ちょっと気持ちが悪いですよね。

そもそも子どもの性格は様々ですし、敢えて似たタイプの子どもばかり集めていたらデータが片寄って実験的教育ができません。大事なのは、一つか二つの得意分野があって、かつ苦手な分野でも一生懸命に取り組めること。おとなしい子も、じっくり考えて慎重に行動する子どもにもチャンスはあります。

ここでは、「こういう子どもは合格する」ではなくて、「どういう子どもは合格しないのか」と逆の視点から考えましょう。

抽選も含め、国立小学校受験は、「これをしたら合格する」とはなかなか言い切れません。よって、「どのようにして不合格の要素を取り除いていくか」を考えて取り組むべきなのです。
 

国立小学校に不合格になってしまう親子の特徴

ではどんなマイナス要素を除くか検討しましょう。

■「不作法・無神経」を「元気だから構わない」と思っている
「うちの子は元気がよすぎて、ちょくちょく他の子とケンカをします」とすましている方はいませんか?「元気がよい」ことは「乱暴」や「不作法」ではありません。 また、遊び時間と静かにすべき時と場所をわきまえることができなくてはなりません。

言葉づかいも同じです。普段は乱暴な口をきいても、改まった席や見知らぬ大人にはきちんとした言葉で話しかけられる賢さが必要です。ただし、ここは子どもらしい丁寧語で十分です。「お父さま・お母さま」等と呼ばせる必要はありません。

■省略した言葉で会話している
親子というのは目配せだけでも意思が通じます。会話も簡単に済ませてしまいがち。多くの国立の小学校では面接で先生からの問いかけがあり、これに答えられるようにしておく必要があります。単語を並べただけの会話は極力避け、主語・述語・目的語のあるセンテンスで話しましょう。

子「お母さん、お水」
母「おかあさんはお水じゃありません」
子「お母さん、お水を下さい」
母「お水を何に使うの?」
子「のどが渇いたの」
母「のどが渇いたからお水を飲みたいのね」

しばらくすれば「お母さん、のどが渇いたからコップにお水を下さい」と理由や目的を交えつつ、自分の要求を話すことができるようになります。大人との会話でも自分の意思をきちんと伝えられる子どもに育ちます。

■虫や動物を怖がる
国立の小学校は敷地が広く豊かな自然に囲まれているところが多いためか、虫や動物に触れる機会が多いようです。試験でも生き物を触ったり観察して絵を描く課題が出たりします。気味悪がって近くに寄ることもできないのでは困りもの。普段から虫などは平気で触れるようにしておくとよいでしょう。そして自分の目で見て虫や動物の絵を描いておくといいでしょう。

■家事を一切やらせない
一人っ子が多いためか、子どもがまるでお客さんのように上げ膳据え膳で何もしなくなっていませんか。特に男の子は要注意。入試で風呂敷に物をつつんだり、ひも通しをしたり手先を使う課題が多く出されます。

「食器に付いたマヨネーズをぬぐう」という課題も実際にありました。過去の出題例を一つずつ練習するよりも、普段から家事の手伝いをさせるようにしましょう。その時にちょっとしたコツを伝授してやると、何かの時に役立ちます。洗濯物を干すときには「パン!」と音を立ててしわを伸ばしてからとか、すすいだ食器は伏せておくと水切りが早いなどのことです。

過去と違った出題がされても、お手伝いの中で似たような経験をしていれば、なんとかなるものです。色々なお手伝いをどんどんさせましょう。

お手伝いができるようになってきたら、少しずつ指示を複雑にしていきます。例えば「お皿を拭いたら、食器棚の下から2番目の棚に置いて」と。複雑な指示も聞き漏らさずにできるようになれば、入試の指示行動も楽勝です。

■「知能教育はまだ早い」と考えている
「幼児にお勉強なんて必要ない」と考えていませんか?
多くの国立小学校ではペーパー試験があります。私立小学校に比べ少し難易度が下がるとはいえ、準備してくる受験生が大多数ですし、かなり高度な出題がされる学校もあります。全く何もしないでいて合格する例は珍しいといえるでしょう。2、3歳から簡単な迷路や線引きのペーパーを、1枚でも2枚でもやる習慣をつけましょう。

家庭学習の習慣がつけば、国立小学校受験用問題集を購入し、毎日少しずつやって入試に備えます。これは入試の1年前くらいからで十分間に合うでしょう。ですが、それまでに学習習慣ができていないとうまくいきません。その前は幼児向けの簡単なプリント類を遊びの一貫として与えればいいのです。
 

国立小学校受験に、幼児教室・塾通いは必須?

小学校受験に合格する子

小学校受験に合格する子

これまで説明したような、家庭で学習と運動としつけができれば、幼児教室・塾は絶対に必要というわけではありません。ただし、実際の試験においては、経験したことのない雰囲気と環境で大勢の子どもと一緒に受けることになります。

雰囲気にのまれたり、周りの子に影響されたりするかもしれません。たとえば、指示された運動で、前の子が間違えたら自分もまねしてしまうなど。他の子につられずに正しくできるための経験は必要になります。

ですから、幼児教室に通わなくても、模擬試験は経験させておくほうがよいでしょう。主催者や会場が異なる模試を受験すれば、本番に慣れる目的を果たせます。幼児教室が主催する、「○○小学校受検直前講習」などを受けることも有効です。

現代は情報があふれています。インターネットで「国立大学附属小学校 受験」のようなキーワードで検索すれば、関連する情報や動画がたくさんヒットします。

かつては書籍や静止画でしか見られなかったものが、具体的に調べられるのです。こうした情報を活用して準備できるでしょう。

繰り返しになりますが、国立小学校には抽選がつきものです。考査に合格しても最終抽選で涙をのむこともあります。

しかし、入試に向けて親子で準備したことは、公立小学校へ入学しても必ず役に立ちます。家庭学習の習慣は大学受験までつながる貴重な財産です。お手伝いもできて、コミュニケーション能力をもった子どもが頼もしく見えるはずです。

受験が必ずしも成功しないことも覚悟しつつ、国立大学附属小学校受験に臨んで下さい。

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