離婚

自分の貯金を夫に取られた?“下流老人”予備軍に?「熟年離婚」を後悔する50代女性の本音

悲願の「熟年離婚」だったはずが……離婚後、金銭面で苦しむケースが増えています。のべ3万5000件以上の相談にのってきた夫婦問題研究家の岡野あつこが、「熟年離婚」の前に知っておくべきことを解説します。

岡野 あつこ

執筆者:岡野 あつこ

離婚ガイド

「夫が家庭をかえりみない」「夫から心ない言葉を言われる」「私への感謝の言葉がない」……そんな不満が積もりに積もって熟年離婚に踏み切る妻は少なくありません。

人生100年時代、残りの時間をどう生きていくかを考えた時、「今ならまだ新しい人生をスタートできるはず。今度こそ、自分らしく生きよう」と長年連れ添った夫に別れを告げることを決心するといいます。

ところが、熟年離婚をした結果、必ずしも夢に描いていたハッピーな人生が待っているわけではないのも事実。かつて、貧困状態で生活する高齢者のことを指す「下流老人」というワードが話題になったことがありますが、熟年離婚の末、下流老人といえる暮らし向きになって後悔している人もいます。
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例えば、実際に私が受けた相談で「こんなはずじゃなかった」と熟年離婚を後悔している妻たちの2つのケースをご紹介します(※以降、登場された方のプライバシーに配慮し、実際の事例や設定を一部変更、再構成しています)。

ケース1. 自分の貯金が夫にとられた!

A子さん(50代)は20代のとき、4歳年上の夫と結婚。夫は、彼の親が所有する土地やアパートの管理をしていました。A子さん自身は、大学卒業後に就職した会社で管理職として活躍中。「私たち夫婦に子どもはいないので、仕事に専念したおがけで私の貯金は相当なものになりました」と話します。

夫とは「価値観の違い」を理由に熟年離婚を決意。「私には新しい人生を自由に生きるだけの貯金があるし、さらに夫の不動産を半分もらえれば家賃収入として安定した生活ができると思っていました」。

ところが、いざ離婚の話を進めていく段階で明らかになったのは、夫に貯金がまったくなかったことだったといいます。

「いくら私が自分ひとりで稼いで貯めたお金でも、夫婦で築いた財産とみなされるため、『A子さんの貯金の半分は旦那さんに渡さなくてはならない』と教えられた時は愕然としました」。

しかも、A子さんが当然もらえるものと思っていた夫の不動産も、名義がまだ彼の親のものだったため「夫婦で築いた財産」とはみなされないといわれたとのこと。つまり、夫からは何ももらえないどころか、夫に自分の貯金を半分とられてしまうことになったのです。

A子さんはすでに夫に離婚を切り出し、夫もそれを了承していたため、もう後には戻れない状態に追い込まれていました。「このままでは離婚後、今より働かなくてはならないでしょう。自由とゆとりある生活を手にするつもりが、まさかこんなことになるなんて……」と憔悴しきるA子さんでした。

ケース2. 離婚後に夫が急死した!

B美さん(50代)は、繰り返される夫の浮気に嫌気がさしたことで熟年離婚を決意。「これまで何十年も夫の浮気には泣かされ、我慢してきたのに一向にやめる気配がない。夫の定年退職をきっかけに、私も妻という役割から卒業させてもらいます」と息巻いていました。

B美さん夫婦には、成人している2人の子どもがいましたが、どちらも「なんで今さら?」と離婚には大反対。それでも夫は「自分には妻を引きとめる権利はない」と離婚を承諾し、「年金も財産も一般的なルールにしたがってもらって別れた。金額は少なかったけれど、このまま一緒に夫婦でいることに耐えられなかった」といいます。

ところが、離婚が成立して半年もたたないうちに、元夫が交通事故で急逝してしまったのです。B美さんいわく、「正直な話、こんなことなら強引に離婚しなくてもよかった、と後悔しています。夫の財産などは子どもたちに渡りましたが、離婚に反対されたことをきっかけに、私と子どもたちの関係には深い亀裂ができてしまったのです。離婚によって、お金も子どもも失った形になりました」。



今回は、熟年離婚を急いだために、下流老人になってしまった2つのケースをご紹介しました。

「離婚はしないに越したことはない」が私の持論ですが、これから幸せに生きていくためのベストな選択肢が離婚ということであれば、それもいたしかたないと思います。

ただ、どんな場合でも離婚をする前には準備が必要であることは忘れてはいけません。とくに大事なのは、離婚に関する「知識」です。今回、ご紹介した2つのケースに圧倒的に欠けているのは、熟年離婚に関する知識です。「今、自分が離婚したらどんな生活が待っているのか?」をあらかじめ正確に知っておくことで、本当に離婚して幸せになれるのかどうかが見えてくるからです。

「今、自分が離婚したらどんな生活が待っているのか?」は、ひとりひとり状況が異なります。それを正しく知るためには、「ネットで調べる」「弁護士に相談する」「経験豊富で親身になってサポートしてもらえる専門家に相談する」などさまざまな方法があります。いずれにしても、後悔しないための知識武装は必要不可欠といえるでしょう。
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