ワイン

いま人気の「ナチュラルワイン」、何がどう違う?二日酔いしないってホント?おすすめワインもご紹介

地球環境にやさしいワインとして最近人気の「ナチュラルワイン」ですが、ほかのワインとの違いをご存知ですか? 「ナチュラルワイン」の定義について、解説します。

友田 晶子

執筆者:友田 晶子

日本酒・焼酎ガイド

最近よく見聞きするナチュラルワイン。「サステナブル」や「エシカル」などが注目される昨今、地球環境にやさしいワインとして気になる方も多いでしょう。

EU内のオーガニック製品市場規模は、この10年で約2倍になり消費も右肩上がりです。しかし、「いったい何がどうナチュラルなのか」という基本的な疑問が浮かんできます。

理由は、ナチュラルワインには法的な定義がないからです。どこまでがナチュラルで、どこまでがそうではないのかがわかりにくく、造り手や地域によって考え方や捉え方にも違いがあり、実に曖昧模糊としたものなのです。
 

 

ナチュラルワインとは

ワイン

最近よく聞く「ナチュラルワイン」。その定義について解説します

まず整理しておくべきは呼び方。ナチュラルワイン(Natural Wine)は英語で、日本語では自然派ワイン、フランス語ではヴァン・ナチュール(Vin Nature)です。ナチュール・ワインなどまぜこぜにして使うこともままあります。
 
曖昧ではあるのですが、それでも共通認識はあります。まずは、「できる限り化学的な肥料や薬品、添加物などを使わず、また人的操作を行わずに、ブドウ栽培し、ワイン醸造する」ことです。

その目的は、ワインに原料ブドウや風土の個性を活かすため、農作物の延長としてのワインにすることです。化学的なものを使わないことが第一目的ではありません。ここは重要です。

自然に任せるワイン造りなので、何らかの要因でおいしいワインにならなそうな場合は、控えめな人的操作をすることもあるのです。こういった流れは、1960年代から90年代にかけて、コストダウンを目的に化学物質を多用した生産者の意識変化が影響しています。
 
では逆に、アンナチュラル、ノンナチュラルワインはどういうものでしょうか。

それはたとえば、機械導入を続けることで質が悪くなった土壌で、大量の化学肥料や化学薬品を使用して育てられたブドウを、人工培養酵母で人的管理した発酵を行い、糖分や酸味料で味わいを補い、とことん濾過して仕上げた大量生産ワインがイメージです。

安価で楽しめるワインともいえるのですが、農作物の延長にあるとはいいがたいですよね。 
 

ナチュラルワインの種類

飲み手のみなさまにとって必要な「いま、市場で買えるナチュラルワインの基本情報」をご紹介します。まずは大枠で、以下の3つの種類を見ることができます。

ナチュラルワイン

左から、ビオディナミ農法、ビオロジック農法、リュット・レゾネ農法で造られたナチュラルワイン

1. ビオディナミ農法(Biodynamie/Biodynamique・フランス語)/バイオダイナミック農法(Biodynamics・英語)/超自然農法(日本語)

オーストリアの哲学者であり、教育者であるルドルフ・シュタイナーが提唱した農法のこと。

生き物としての土壌の潜在力を高め、科学的なものは一切使用せず、月など天体の運行に合わせて畑作業を行い、プレパラシオンと呼ばれる特別な自然調剤を使用する。野生酵母で発酵させ、自然の力を最大限に引き出すように造られたワイン。
 
2. ビオロジック農法(Biologique・フランス語)/オーガニック農法(Organic・英語)/有機栽培農法(日本語)

化学肥料や化学薬品(除草剤、殺虫剤)を使用しない。遺伝子操作を行わないとする場合もある。野生酵母で発酵を行うなど、自然を尊重した農法のこと。 
 
3. リュット・レゾネ(Lutte raisonnée・フランス語)/サステナブル(Sustainable・英語)/減農薬農法(日本語)

土地や環境に配慮しつつ、農薬や化学肥料を状況に応じて少量用いる農法のこと。
 
そのほかにも、上記の条件を3年以上満たすことや、隣接する非オーガニック農業の畑の影響を受けないようにすること、酸化防止剤として使われている亜硫酸を使わない、または最小限に抑えることも共通認識ですが、亜硫酸無使用が第一定義ではありません。

亜硫酸は自然に生まれることもある物質で古くから使われている、いわゆるナチュラルなものという考えがあるためです。
 
見分け方としては、ボトルやラベルを見ると、「エコセール(ECOCERT)」「アグリカルチュールバイオロジック(Agriculture Biologique)」「デメテール(Demeter)」「ユーロリーフ(Euro leaf)」「USDA(米農務省)認証 オーガニック」「有機JAS規格」などの認証機関が認証したマークがついていることがあります。参考にしてください。
  
このほかにも、以下のような名称のワインがあります。
 
・ビオワイン(日本の造語)
フランス語のビオと、英語のワインを組み合わせた造語。特に規定はない。
 
・無添加ワイン
文字通り添加物を使用していないワインのことで農法は問わない。また、フィルターをかけたり、加熱処理をすることもあるので瓶内熟成はしないものが多い。国内大手メーカー産の「酸化防止剤無添加ワイン」は、自然派ワインとは異なるカテゴリーですが、お手頃価格でどこか優しいイメージがあります。
 
ちなみに、曖昧な「ナチュラルワイン」をわかりやすくするため、フランス農業省、フランスのINAO(国立原産地名称研究所)などが、2020年『Vin Méthode Nature ヴァン・メトード・ナチュール(自然方式ワイン)認証』をつくりました。消費者に「どんなワインが自然派に当てはまるのか」を一目でわかってもらうための認証マークが、ワインにつけられています。 
 

ナチュラルワインの特徴

・見た目
できるだけナチュラルに造られたワインとして濾過をしないため、澱やにごりがあることがあります。昔は、にごりのあるワインはNGという風潮でしたが、ナチュラルワインが普及するにつれ、澱やにごりは自然な証拠とみられるようになりました。そのほか、ヴィンテージによる差、ボトルの差があるともいわれます。

・香り
「ビオ臭」と呼ばれる、オフフレーヴァーを生じるワインもあります。お漬物のような、かすかに雑巾のような匂いで、醸造中の雑菌汚染が原因ですが、最近は改善傾向にあります。
 

ナチュラルワインは二日酔いしない?

二日酔いしにくいといわれることもありますが、科学的根拠はありません。よくいわれるのは、「亜硫酸無添加だから二日酔いしない」ということですが、二日酔いの原因は亜硫酸ではなく、飲みすぎによることの方が俄然多いのです。

さらに、自然派の造り手でも、品質を維持するために酸化防止剤を使用することがありますし、酸化防止剤をまったく使用していないワインでも、醸造中に二酸化硫黄がごく微量、自然発生することがあるため「酸化防止剤含有」の表記をするナチュラルワインは多いです。

あくまで個人的な経験からですが、ナチュラルワインは、どこか優しい口当たりでビリビリせず、なめらかな印象で、飲みやすい印象はあります。 

次のページでは、「おすすめのナチュラルワイン」をご紹介します。

  • 1
  • 2
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます