亀山早苗の恋愛コラム

高校時代に見てしまった母の「密会」現場。そのとき僕が、母に声を「かけられなかった」理由

母の不倫現場を目撃した息子は、どう思うのだろう。親子の関係性や、それを知った年齢によるところも大きい。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

  • Comment Page Icon
子どもは親の不倫をどう見るのだろう。子どもの反応は、知ったときの年齢が鍵となりそうだ。それまでの親との密着度にもよるし、子どもの感性にもよるので個人差は大きいが、思春期に知った場合、やはりショックは大きいだろう。大人になった場合は、親に説教することもあるようだ。
1
 

高校生で母の密会現場を見てしまった……

地方出身、のどかな田園地帯で母が知らない男と密会しているのを目撃してしまったと言うヨシキさん(34歳)。彼は当時高校生、学校帰りのことだった。

「いつもならそのルートは通らないんですが、その日、仲のいい友人が風邪で学校を休んでいたんです。試験が間近だったのでノートやプリントを届けようと彼の家までチャリを漕いで行った。彼のお母さんにプリントなどを渡した帰りがけ、畑が続く道の行き止まりのところに見慣れた車があった。あれ、と思って近づくと母の車でした。いかにも怪しいじゃないですか。もっと近づくべきか離れるべきか迷いました」

そんな場所に止まっている車なのだから、ろくでもないことが起こっているに違いないとヨシキさんの頭の中で「行かないほうがいい」と赤信号がともった。だが、もしかしたら母が危険な目にあっているかもしれない。意を決して近づいていった。

「途中で自転車を横倒しにして置き、見つからないよう中腰でそうっと歩いて行きました。途中で助手席に男が乗っているのがわかった。ふたりの頭が並んでいたので、とんでもないことをしているのではない気がしたのを覚えています。そばまで行って見たら、話をしているだけでしたが、男がいきなり母の手を握り、母は泣いていた。見てはいけないものを見たような気がして、中腰で戻って自転車に乗って帰りました」

なぜ声をかけなかったのか。大人の空気に「かけられなかった」のだという。その晩、彼は母に他の家族に知られないよう小声で尋ねた。

「今日、○○の家の近くにいなかった?」と。母は「あっちのほうへは行かないよ」と即答した。あまりの即答だったので、彼は一瞬、自分が見たのは母の車ではなかったのだろうかとさえ思ったという。

「もしかしたら母は僕に気づいていたのかもしれない。自転車を飛ばして帰っていくのを見たのではないか。そんな気もしました。だから行ってないという答えを用意していたんじゃないか、と」

その後、母に不審な言動はなかった。だから彼も蒸し返したりはしなかった。あのとき、男と別れ話をしていたのかもしれない。彼は今、そう思っている。
 

「親父に見つかるなよ」と声をかけた夜

「僕が母の不倫を知ったのは27歳のときです。就職して5年目、家を出てひとり暮らしを考えていた時期でした。仕事が飲食関係のマネージメントだったので外回りが多かった。ちょうどそのころ持ち場が変わってホテル街を含む繁華街の担当になったんです」

マサトさん(40歳)は当時を振り返ってそう言った。両親と、当時大学院に通う弟との4人暮らしだったが、両親はもともと仲がよくなかった。だから彼は資金を貯めてひとり暮らしをしようとしていたのだ。

「仕事でホテル街を歩いているとき、母が知らない男と腕を組んで入っていくのを見てしまったんです。動揺しました。僕自身ももう大人だったけど、さすがに自分の母親の浮気現場を見ると平常心ではいられなかった。当時、母は51、2歳だった。今だと若い50代はたくさんいますが、自分の母親を“女性”と認識していませんからね。ショックというほどではなかった。むしろ、母にもそんな楽しみがあってよかったような気がしました」

その晩、仕事から帰ると、母はいつもと同じように迎えてくれた。おかずを温め直し、ご飯もよそってくれた。母はそのころ、感情の浮き沈みが激しかったのだが、その日はとても機嫌がよかった。男と会っていたからかと思ったが、彼は何も言うことができなかった。

「数日後にアパートを決めてきました。どこでもいいから越したかった。両親には家を出るからと告げて、10日後には友だちが車で来てくれて引っ越しました。母は少し戸惑っていた。『ここからだって会社に通えるじゃない』と最後まで言っていた。家を出るとき、父は知らん顔でしたが、母は玄関まで来てくれたので、『親父に見つからないようにしなさいよ』と言ったんです。母はびっくりしたような顔で見ていました」

母は離婚を考えているわけではないだろうとマサトさんは思っていた。ずっと専業主婦だったし、もし不倫がバレて離婚するとなったら経済的に立ちゆかなくなる。うまくいっていない夫であっても、最後まで添い遂げるのが自分の義務だと思うような母だと踏んでいた。それは当たっていたようだ。

「3年前、定年後も仕事をしていた父が突然、亡くなったんです。一時期、ぼんやりしていた母ですが、四十九日を過ぎたあたりから急に元気になって。今はずっと続けてきた趣味で、ほんの少し収入があったりボランティアをしたりと、生き生きと活動している。先日、母に『再婚とかしないの?』と聞いたら、『するわけないでしょ。男はもうこりごり』と言っていました。あのときの不倫はどうなったと聞きたいんですが、まあ、母もひとりの女性ですから、今さらね……。話す気もないでしょうし」

それまでの夫婦仲や親子関係によっても、息子の反応はさまざまだろう。大人になっていれば、よほどこじれたりしない限り、静観することが多いようだ。そして多くの場合、不倫はそれほど長続きはしない。子どもが気づいてしまうようでは脇が甘いともいえるので、それほどの覚悟をもった関係ではないのかもしれない。


【関連記事】
思春期に「父の不倫」を知ってしまったら娘はどうする?経験者が振り返る、あの頃の話
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます