亀山早苗の恋愛コラム

できすぎた彼の日常に「嫌な予感がした…」。34歳独身女性が不倫相手の自宅で見た昨夏の光景

去年の夏、家族が不在にしているからと10歳年上の不倫相手が自宅に誘ってくれた。けれども「ノリで行ってはいけない場所だった」と、30代女性が苦笑いしながら一部始終を振り返った。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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お盆やお正月などは、不倫をしている独身女性にとって「寂しい時期」というのが一般的なイメージだろう。もちろん、寂しいと感じている女性もいるはずだが、以前より女性たちは活動的。不倫の彼に精神的にも経済的にも依存してしまうのは少数派だ。とはいえ、興味津々で行ったことが、のちに後悔の種となることもある。
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ノリで行ってはいけない場所だった

「去年のお盆でした。つきあって4年たつ不倫の彼から、『お盆は家族がいないから、いつでも遊びに来てよ』と言われて。それまでそんなことはなかったんだけど、それだけ私に心を許してくれるようになったのかなと少しうれしかったのは事実です」

そう言うのはナオさん(34歳)だ。10歳年上の彼とは仕事関係で知り合い、毎週のように会っていた。ナオさんがひとり暮らしだったため、外で会って食事をしたり、時間があるときは一緒に映画を観に行ったりして、最後はナオさんの部屋で過ごすのが常だった。

「彼には中学生と小学生、子どもがふたりいます。家族が大事だというのもわかっていた。だから彼は私の部屋に泊まったことはない。それでもいいと思っていました。子どもたちが18歳になるまでは待っていてほしいと彼も言っていた。それを信じていたわけでもありません。私が彼を好きではなくなるときまでつきあっていたい。そう思ってた」

だから彼が「自宅においでよ」と言ったことが、彼女には信じられなかったのだ。いいのかと何度も聞いた。

「信用しているから、と彼が答えたんです。私が妙な痕跡を残したり、SNSなどに匂わせ投稿などをしないという意味だと思う。3年かかって、彼が完全に私を信用してくれたことがうれしかった」

彼の妻と子どもたちが出かけた翌日、ナオさんは彼の家へ行った。郊外の一軒家を見たとき、ここが彼が家族と暮らす家かとしみじみしたものを感じたという。玄関を入ると、家族の写真があった。このくらい片づけておいてくれればいいのにと少しムッとしながらも、彼の招きに応じてリビングへ。

「きれいな家でした。奥さんがよほどセンスがいいんでしょうね。すっきりと片付いていて、居心地がよかった。彼はニコニコしながら、『いいセンスだろ』と。妻自慢かと思っていると、『全部、オレがやったんだよ、インテリア』と。びっくりしました。部屋の隅にありながらすごい存在感を放っていたランプは、ヨーロッパのアンティークだそう。それがいちばんの自慢なんだと言っていました」

彼が意外な側面を見せてくれたことで、彼女はますます彼に惹かれた。
 

彼の話は“できすぎ”ている?

その日は彼と一緒に料理を作ったが、彼の手際のよさと味のセンスにまたまたびっくり。

「彼は仕事もできる人なんですよ。『うち、共働きだから。妻は料理が苦手なんだ』と。少し嫉妬しましたね。彼は子どものためを強調していたけど」

おいしいイタリアンを食べたあと、映画でも観ようよと彼が誘ってくれたのは2階の自室だった。広い洋間で、大きなテレビが置いてあった。

「ここがいちばんくつろげるんだ、と言っていました。妻は家で仕事をすることも多いので、部屋は別なんですって。『寝るときも別なの?』と聞いたら、『完全に別。子どもたちが部屋に引き上げたら、オレたちもそれぞれ自室にこもるんだよね』と。変わった夫婦ですよね。でも距離があるほうがケンカしなくてすむと言うので、そんなものか、と」

一泊した翌朝、階下に降りていくと、彼が朝ご飯を作ってくれていた。ホテルの朝食のように完璧な洋食だった。

夕方、彼女は彼に送ってもらって狭い1Kのひとりの部屋に帰宅した。複雑な気持ちだった。

「彼は自分の理想に近い家庭生活を送っている。それでいて私を必要とするのはどうしてなんだろう、と。彼にメッセージしたら、『きみは僕にとって特別な存在だよ。唯一無二なんだ』って。話ができすぎている。そのとき、嫌な予感がしたんです」

彼女は翌日、再度、彼の家に行ってみた。妻子はまだ戻っていないはずだ。チャイムを鳴らした。帽子とめがねで変装しているから、彼女とは気づかないはずだ。

「彼が出たのでお荷物のお届けです、と言いました。彼は不用意に玄関を開けた。玄関には女性もののサンダルがありました。彼が止めるのもかまわず入ったら、リビングで若い女性が半裸のまま朝ご飯を食べていた。前日、私が食べたものと同じです。彼はあわてて『いや、違うんだ、これは』とわけのわからないことを言っていました。彼女に言ったのか私に言ったのかは不明ですが。

私は若い彼女に、『私も昨日の朝、それと同じものを食べたのよ』と言ってやりました。彼女は『へえ、そうなの』と平然と食べ続けていた。すごい神経ですよね」

彼は彼女に「妻じゃないから」と言った。ナオさんは不意に笑いがこみ上げてきたという。そうだ、若い彼女と自分は同じ「不倫相手」という立場に過ぎないのだ、と。

「もちろん、そのまま帰りました。彼とはそれきり。彼からは『オレにはナオしかいない。あの子はただの遊びだから』『お願いだから妻には内緒にしてほしい』など、情けないメッセージがたくさん来ましたが無視しました。遊びで女とつきあっていると言うのも嫌だった。妻にバラしてやろうという気持ちは最初からありませんでした。自分が惨めになるだけだから」

ナオさんにとっては本気の恋だったのだ。もちろん、たとえ不倫でも男性が本気であることは少なくない。ナオさんの場合だって、彼がナオさんに本気だった可能性はある。

「家族を愛する気持ちも本気、私にも彼女にも本気。確かにそういう人だったのかもしれない。でも私は無理。妻がいるのはわかっていることだからいいけど、同じような立場の“恋人”をふたり作る男とはつきあいきれない」

あれから初めてのお盆時期。去年のことを思い出すと、自業自得だから苦笑いするしかないとナオさんは言った。
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