転職のノウハウ

転職でキャリアが積めない……転職成功のために考えるべき重要な視点は?

転職市場では、どのようなキャリアを積めばいいのか悩む人は多い。転職で昇進や昇給を起こせばそれでよいという考え方は、キャリアが積めない・劣化させかねない。転職でキャリアが強化される人と劣化する人、その違いを人材コンサルタントの小松俊明が解説する。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

転職でキャリアが積めない人とは……キャリアが強化される人との違い

転職でキャリアが積めない人とは

転職でよりよいキャリア形成ができる人と、キャリアを劣化させてしまう人の違いとは

職業や技能上の経験という意味で使われる「キャリア」という言葉がある。転職市場ではキャリアが評価されることから、どのようなキャリアを積めばいいのか悩む人は多い。勤める会社の上司からの指示で部署の異動や昇進が実現していくキャリア形成もあるが、自分が能動的に動く転職の場合、キャリア形成も主体的に考える必要がある。転職でキャリアが強化される人と劣化する人、その考え方の違いを人材コンサルタントが解説する。
 
<目次>
 

ひとつの企業に長く務めるキャリア形成と、転職でのキャリア形成の違いとは

ひとつの会社での長期間勤務では、異動や昇進に本人の努力や能力以外にも組織の事情が働くことも多い。上司の命に従って一定期間で異動を繰り返しながら、ゆっくりと組織の階段を上がるキャリアが形成されがちだ。

様々な分野で多様な経験を積んだジェネラリストが組織の長につくことには一定の合理性があり、だからこそ多くの企業には、ジェネラリスト型のキャリアを持つ管理職がたくさんいるのだろう。

与えられた仕事とその都度真摯に向き合い、自分の持ち場でしっかりと責任を果たして、事業や社会に貢献している人も多く、キャリア形成のきっかけは受け身であってもいいのである。

一方、転職のタイミングは個人の事情で決めるものだ。転職を考えるきっかけは、組織の都合が発生したときであることも少なくない。その際、組織の都合を優先することを看過できれば転職を考えないだろうし、個人の都合を優先したいと思えば、転職は現実的なソリューションとなってくる。

受動的なキャリア形成か、能動的なキャリア形成か……「ひとつの企業で長く務める場合」と「転職する場合」のキャリア形成の違いはここにある。
 

組織都合のキャリア形成は個々人にとって不適切なタイミングでも起こりうる

一般に、物事はタイミング次第で結果が大きく異なるものである。組織に命じられた異動が個人にとってはタイミングが悪いことは頻繁に起きるものだ。仕事を覚え始めたところで異動を命じられれば、仕事のノウハウや経験が定着しない。顧客の信頼を獲得できる前の中途半端なタイミングで異動を命じられれば、大切な人脈を形成できない。

もっと個人的な事情を抱える人もいる。住宅ローンを組んで新居を購入した直後に異動になる人(それも部署の移動だけでなく、勤務地が変わるケースなど)がいかに多いことか。子どもが学校に入学して、やっと親友ができたと思ったら転勤が決まることも珍しい話ではない。

一方、タイミングの良し悪しは、ある程度自分で予測しておくことで、そのインパクトを減らすことはできるかもしれない。周りに起きた人事は少なからず自分に影響するため、多くの人は同僚社員の人事予測を日常的にしながら、多様な意見交換を同僚と重ねることで、最終的に自分に降りかかる出来事の将来予測の精度を上げている。これは、長期間ひとつの会社で働くことを前提とした職場で、世代を超えて行われてきた伝統行事だ。

ゆえに昨今の在宅勤務や多様な働き方が進んだ職場では、組織の都合で次に何が起きるのか、その影響が個人にどのように降りかかってくるのか、予測しにくくなったのではないだろうか。会社の上司から見れば、部下が転職する兆候がつかみにくくなったかもしれない。
 

個人事情を優先した主体的なキャリア形成の流布で転職市場は成熟する

コロナ禍が長期化する中で、社員の副業規定や復職制度を見直す会社が後を絶たない。なぜ今、このタイミングでこのような傾向が見られるのか。

組織都合を優先に人事は決まるものだが、組織の都合に振り回されることに我慢できなくなる個人が増えている中で、会社も社員の個人事情にもっと寄り添う姿勢を強めてきたということかもしれない。そうしなければ、今働く社員を社内に抱え続けることや優秀な社員を外部から新たに獲得することが難しくなりつつあるのだろう。

副業規定の緩和は、会社を辞めなくても社外の仕事をして収入を得る道を広げる。それにより、転職して収入を増やしたいと考える人を抑える効果を狙っている。

復職制度は、いったん辞めた社員でも、本人がもう一度復職したいと願い、一定の条件があえば優先的に復職を歓迎する制度であるが、外部から人材獲得をすることの難易度が上がっていることが背景にあるのは明らかである。転職には成功と失敗がつきものであるから、復職制度を歓迎する人が一定数いることも予想できる。

このように、今後も社員の個人事情に注目が集まる傾向が強まっていけば、転職社会はより成熟化していくことだろう。なぜなら、社員にとって我慢を強いられる受け身なキャリア形成ではなく、個人事情を軸とした主体的なキャリア形成が実現しやすくなれば、社会全体で人材の流動化が進み、本人にとって適材適所な職場が市場に急激に増えていくからである。

ポストに空きができるから、そこを埋めることができるのであり、人の動きが増えていけばチャンスが増え、転職市場全体にも好循環が生まれるのだ。
 

転職のチャンスが広がる社会では、転職判断の技術も高めなければならない

もちろん転職にはリスクがある。転職で、自らのキャリアが強化される人と劣化する人が生まれるのである。チャンスが広がっても、自らのキャリアを強化するような転職判断ができなければ、前職の方がよかったということになり、結局復職制度を使わざるを得なくなるかもしれない。会社は、そこまで先を読んでいるのである。

そこで提案がある。今回転職する会社や仕事を選ぶときは、次の転職を意識してはどうか。「これを最後の転職にしたい」という声を聞くことがある。過去に転職の失敗を経験した人が、そう言いたくなる気持ちもわからなくはない。しかし、今回の転職が最後になるかどうか、それは自分のキャリアがすべて終わった時にわかることである。先のことは誰もわからないわけだから、今起きている出来事を未来につなげることが大切だ。

今回の転職で選んだ会社や仕事は、次回転職をするときに経歴に加わる。今回の転職の結果は、次回の転職の際に直近で取り組んだ仕事になるわけだから、そこが最もアピールするポイントになる。今の転職のことだけ考えて、ましてこれが最後の転職になるよう願うのではなく、次に転職する時のことを意識してみるのがよい。今回の転職では自分のキャリアを強化する会社や仕事を選べているか、転職判断では常に自分の市場価値を意識することを忘れてはならないのである。

特に異なる職種を経験したジェネラリスト型のキャリアを積んでいる人は、過去に経験した複数の異なる仕事の関連性やそれらを経験したことの業務上の相乗効果を具体的な事例をもとに説明できるようにしておくことが、自らのキャリアを強化していく上で効果的である。

同じ職種を長年続けているスペシャリスト志向の強い人でも、立場や組織が変われば仕事のスケールや性質は異なり、業務自体の複雑性も変化するものであるから、こちらの場合も同様の考え方ができる。
 

キャリアを強化するには「次回の転職を見据えた転職を今回すること」

転職には自分のキャリアを強化させるチャンスもあれば、逆に劣化させてしまうリスクもある。転職で昇進や昇給を起こして過去の内容を上書きすればそれでよいのではない。

未来にも評価されるキャリア形成を見据えた転職とは、過去に経験した複数の仕事の関連性や相乗効果を最適化できる仕事を探すことであり、今回選ぶ仕事は、次の転職で出会う雇用主に自分の発展性を明確にアピールできるような内容でなければならないのだ。

「次回の転職を見据えた転職を今回すること」、転職でキャリアが強化される人と劣化する人の違いは、この視野の広さの違いにある。

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