疲労回復法

寝つきをよくするお風呂の入り方…不眠に効果的な入浴のコツ

【温泉療法専門医が解説】寝つきが悪く、なかなか眠れない…。特に寒い季節は眠りの悩みを抱える人が増えますが、冷えによって深部体温が下がり、交感神経が高まりやすいことが原因です。睡眠の質をあげる上手なお風呂の入り方のコツをご紹介します。

早坂 信哉

執筆者:早坂 信哉

医師 / お風呂・温泉の医学ガイド

寝つきが悪い、夜中に目が覚める……不眠症は日本人の国民病

寝つきをよくする入浴法のコツは

寝つきをよくする入浴法は? お風呂で睡眠の悩みを上手に改善していきましょう

厚労省の調査によると、日本人成人の約20~30%が「途中で目が覚める」「睡眠の質に満足できない」「日中、眠気を感じる」といった不眠症状を感じています(令和元年(2019) 厚労省「国民健康・栄養調査」より)。不眠症は「日本人の国民病」とも呼ばれていますが、多くの方が眠りに関する悩みを抱えています。 

コロナ禍では在宅勤務やおうち時間の増加から、生活習慣の乱れによる不眠に悩まされる人も増え、「コロナ不眠」という言葉も登場しました。診療の場でも、特に寝る直前までリモートワークをしている人から、寝つきが悪くなったというお話をたびたび伺います。

これらに加えて、冬になると体が冷えて、なかなか寝付けないという方は少なくありません。今回はこれから寒くなる季節に向けて、寝つきが悪くなる原因と、簡単にできる対策法について解説します。
 

寒い夜に寝つきが悪くなる原因……「深部体温」「自律神経」

寒い時期になると寝つきが悪くなるのはなぜでしょうか。ポイントになるのが「深部体温」と「自律神経」です。
 
1つ目の深部体温というのは脳や体の中心部の温度で、普段私たちが脇で測る温度よりも1度ほど高い37.0~37.5度前後を保っています。深部体温も1日の中で上下する日内変動があり、夕方頃に最も高くなり、その後夜にかけて急激に低下し、明け方最も低くなります。ヒトは、この深部体温の急激な低下によって眠気が誘発され、眠りに入るといわれています。そして、この温度低下のメカニズムに重要なのが、手足など末端部分の皮膚からの熱の放散です。
 
寒い時期に体が冷えていると、手足などの血流が悪くなり皮膚からの熱の放散がうまくいかなくなり、深部体温の低下が鈍くなるため寝つきが悪くなってしまうのです。
 
2つ目の自律神経は、交感神経と副交感神経の2つがあります。この両者がバランスを保って私たちの体を調整しており、交感神経が緊張、副交感神経がリラックス状態を担っています。睡眠時は、リラックス状態なので副交感神経が優位にはたらいていますが、もし就寝時に体が冷えていると逆に交感神経が高まってしまい体を緊張状態にしてしまいます。これも寒い時期に寝つきが悪くなる原因の1つです。
 

寝つきをよくする入浴のコツ・ぐっすり眠れるお風呂の入り方

睡眠の改善、特に寝つきをよくする入浴のコツは、湯温と入浴時間、そして入浴するタイミングを意識することです。
 
まず、湯温は40度程度にし、入浴時間としてはのべ10~15分、肩までお湯に浸かるのが良いでしょう。体を洗うために途中で浴槽から出ても構いません。肩まで浸かることで、温熱効果により深部体温が上昇し、また、手足の血液の巡りもよくなります。多くの入浴剤は温熱効果を高めますので、お好みで使っていただくのもお勧めです。
 
さらに、お湯の浮力によって筋肉の緊張がほぐれ、全身のリラックス効果が期待できます。ただし、熱すぎるお湯は、交感神経が優位になってしまい体が緊張して逆効果になってしまう他、熱中症などのリスクも出てくるので注意が必要です。
 
そして、入浴するタイミングは就寝の約90分前が最適です。手足の血流も入浴で良くなるため、熱の放散もスムーズになりますが、このタイミングで入浴して布団に入ることで、入眠と深部体温低下のタイミングを合わせることができ、より効果的に寝つきを改善できます。
 

上手な入浴法で叶う睡眠の質改善とストレス軽減!

良質な睡眠をとれないと、日中に眠くなったり、集中力が低下したりと日々の活動にも支障が出てしまいます。適切な入浴にはストレス軽減の効果もあります。ポイントを押さえた入浴法では、一石二鳥の健康効果が得られるのです。

1日の終わりに上手にお風呂を活用して、良い睡眠をとりましょう。
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