亀山早苗の恋愛コラム

【実録・飯がまずい妻たち #4】味音痴なわけではない…?異臭が漂う手料理を泣きながら食べた日

夫婦の味覚が合わない、片方が食に興味がないなど、「食」にまつわる話は次から次へと出てくる。周囲の人と「食が合わない」ことへの不満や違和感を抱えている人が多いということなのだろう。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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夫の実家の食卓がなんかヘン!

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夫婦の味覚が合わない、片方が食に興味がないなど、「食」にまつわる話は次から次へと出てくる。周囲の人と「食が合わない」ことへの不満や違和感を抱えている人が多いということなのだろう。

 

夫の実家の食卓がしんどすぎた

「結婚して初めて夫の実家へ行ったのはお正月でした。お雑煮が出てきたのですが、これには本当にびっくり。同じ関東圏ですから食材は、我が家でも使っているものばかり。ごく普通の昆布と鰹節の出汁に、具は鶏肉、小松菜、三つ葉くらいですかね。ところが義母のお雑煮は、まったく出汁が利いてなくて、なぜかつゆがドロドロに濁ってる。しかもツーンと鼻をつく妙な匂いが(笑)。お餅は煮すぎて溶け出してるし。あれは衝撃でした」

カヨさん(38歳)はそう言って苦笑した。結婚して8年。7歳のひとり娘がいる。夫は男ばかり4人きょうだいの末っ子。義実家には年に数回行く程度だが、それでも数日は泊まるので義母の料理が苦痛でたまらなかった。

「特に妊娠中は、こっそりフルーツやおせんべいなどを持ち込んで食べていました。普通の炊飯器で炊いたご飯なのに、かなり固くて食べづらいので、夜中に夫にコンビニに行ってもらったこともありました」

ところがそんな義母は、自分では「料理が大好き」と言ってはばからない。娘が3歳になったときは自ら焼いたケーキを持って来てくれたこともある。

「生クリームがもともと柔らかすぎたんでしょうね。箱を開けたら、ドロドロになっていて。義母はそれを見て自分で笑いながら、『見た目はしかたないわよ、素人なんだから。でも味は自信があるから大丈夫』って。でもねえ、味も悲惨だったんです(笑)。ケーキなのに甘くない、スポンジは流れ出した生クリームで上のほうはぐちゃぐちゃ、下はパサパサ。娘は一口食べて『もういい』と。私も涙目になりながら一口だけ。義母はけっこうガンガン食べてましたけどね」

帰宅した夫に出すと、夫もため息をついていたという。その後、夫の実家での食事がどんなものだったのか、結婚して4年経ってカヨさんは初めて実情を聞かされた。

 

みんなが“勝手”に食べる不思議な光景

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「夫は長男と10歳、すぐ上の三男とは6歳離れているので、物心ついたときは周りがみんな、食卓で好きなものを食べていたんですって。義母は盛大に作るんだけど、みんな少ししか口をつけず、それぞれ好きなものを買ってきていたようです。それなら義母も作らなければいいのに、“大家族の主婦、母”としては作らないのはプライドが許さなかったんでしょうね。夫は幼いころから兄たちにいろいろもらって食事をすませていたみたい」

義父は、平日、家で食べることはなかったという。週末は義父がよく庭でバーベキューなどをしてくれた。

「みんな、義母の料理がまずいのはわかっている。だけど誰も何も言えなかったのか言わなかったのか。義母を傷つけたり家庭内の雰囲気が悪くなったりするのを避けたかったんだと思うと夫は言っていました。だけど、そのためにどれだけの食べ物が無駄に捨てられたのか……。ちょっと腹が立ってしまいました」

ここ数年、見るに見かねて正月はカヨさんが義実家でお雑煮を作っている。きょうだいたちもやってくるのでかなりの人数になるから大変だが、「せめてお雑煮くらい普通のものを食べてもらいたい」というカヨさんの心意気だ。

「誰も表だって、おいしいとは言わないけど、みんなおかわりしてくれるんです。義母も、普通の顔をして食べてる(笑)。自分のはおいしくないのかもしれないという疑惑をもつこともないようです。実はそこが本当に不思議なんですけど」

もめごとの種を作りたいわけではないので、カヨさんも「お義母さんが大変でしょうから、私が」ということにしてあるのだ。

「味覚は人それぞれというけど、とんでもなくまずいものは誰が食べても、やっぱりまずいんですよね。今、義実家は離婚して子どもとふたりで戻ってきた三男が、80代の義父母と暮らしています。ただ、特に義母は元気なので、相変わらずフードロスを作り出しているみたい。今までどうして放置してきたのか……。夫にもそう言ったのですが、『あのエネルギッシュな母親を止められる家族はいない』と苦笑していました。料理を取り上げたら、がっくりきちゃうかもしれませんけど、釈然としませんね」

おいしくないから家族が食べない。結果、大量の食べ物を捨てることになる。この悪循環を断つために、誰かが猫の首に鈴をつけるしかないのかもしれない。

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