人間関係

SNS交流、オンライン飲み会はさびしい?友達関係の深め方

【公認心理師が解説】友だちとのつながりはあるのに、さびしい、むなしい……。デジタルツールに依存して友情をつないでいると、そのような感情を覚えがちです。そもそも、人間にとってなぜ友情が必要なのか、友だちとの深い語り合いが必要なのか。友情を深めるために必要なことについてお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

デジタルに頼りすぎると、友情に不全感を覚えやすい

ベッドでスマホを見る女性

SNSにはたくさん友だちがいる。オンライン飲み会もやっている。それなのにさびしい、むなしいのはなぜ?

SNSでつながっている友だちは、たくさんいる。写真やつぶやきをアップすれば、「いいね!」がたくさんもらえる。オンラインで飲み会をすれば、それなりに盛り上がる。それなのに、どこかさびしい、むなしい……。友情にそんな思いを抱える方も、少なくないのではないでしょうか。
 
新型コロナの影響によって、人と直接会って話す機会が失われ、SNSやメール、オンラインミーティングなどのデジタルツールのみで、友だちとのつながりを保っているという方が増えているものと思います。

デジタルツールは、いつでも好きなときに連絡ができ、どこでも誰とでも情報のやりとりができる便利な道具です。ですが、それに頼りきっていると、コミュニケーションにはどこか不全感を覚えやすくなってしまいます。
 

「SNSでつながるさびしさ」……思いを深く伝いあえないジレンマ

私はカウンセリングを通じて、「SNSだけでつながるさびしさ」や「オンライン飲み会につきあうむなしさ」についての悩みをよく聞きます。こうした感情の中核にあるものは何か。それは、“コミュニケーションが深まらないもどかしさ”なのかもしれません。
 
SNSは、情報をコンパクトに伝えるツールです。そのため、抱えている思いを深く伝えたい、相手の本意を知りたいという気持ちがある場合には、物足りなさを感じやすくなるものです。
 
また、SNSは重すぎる内容の伝達には、向かないツールです。LINEなどに深刻な打ち明け話を長々と書き込まれると、受け手には大きな負担となりますし、TwitterやFacebookなどで愚痴や悪口をつぶやいたり、Instagramなどで陰鬱な画像を発信し続けると、受け止めきれないと感じる人も増えるでしょう。

そのため、友情を保つためには、できるだけライトでわかりやすく、しつこくないもの、余計な気遣いを与えない内容にしておかなければ、という意識が働きます。したがって、SNSだけで友情を維持しようとすると、どうしても、自分が本当に言いたいことを言えない、分かち合いたいことを分かち合えない、そんな“コミュニケーションが深まらないもどかしさ”が生じてしまうのでしょう。
 

「オンライン飲み会のむなしさ」……モニター越しの高揚感で話が深まらない

同様のことは、「オンライン飲み会のむなしさ」にもいえます。オンラインミーティングを行うと、モニターにはお互いの姿形が映し出されます。それだけで視覚情報の方に過剰に意識が奪われてしまい、話の内容に集中できないと感じる人も少なくないようです。
 
オンライン飲み会では、「モニターごしに酒を飲む」という特殊な状況によって意識が過剰に高揚し、エンターテインメント性を楽しむだけで、会話が深まらないと感じる人も少なくないでしょう。飲み会は見た目には盛り上がっているけれど、浅薄な会話ばかりでつまらない。モニターを見つめ続けて、疲労感が募ってしまう。オンライン飲み会を続けていると、このような気持ちになる方も少なくないようです。
 

友情が必要な理由……自他理解の深まりや共感から得られるもの

ところで、なぜそもそも人は友情を求めるのでしょう。人間には、お互いの感情や思考を態度や言葉に乗せて他者とコミュニケートし、自他を深く理解したいという欲求があります。相手の中に自分と似たものを感じれば、共感して喜び、違うものを感じれば、その違いからさらに自他の理解を深めようとします。
 
真の友情には、利害関係や上下関係は必要ありません。だからこそ、本音の語り合いができ、深い胸の内を語り合うことによって、自他理解や共感が深まるのです。
 
とくに10代、20代の若者にとって、友情は必要不可欠なものです。なぜなら、この年代はアイデンティティを模索して、自分らしい生き方を築いていく時期だからです。友だちとの真剣な語り合いと関わり合いを通じて、新しい思考や行動を生み出そうとする時期でもあるからです。
 
他の年代にとっても、自分を飾らず本音で語り合える友だちは、お互いを成長させ、心のバランスを保つためにも必要です。しかし、デジタルツールに頼っているだけでは、自分の思いを話しきれない、相手の本意を確認しきれない不全感が残ってしまいます。こうして「つながってるのにさびしい、むなしい」という感情が生まれてしまうのでしょう。
 

友情は対面で深まる……”ノンバーバルなもの”が友情をつなぐ

では、ウィズコロナの時代、なかなか会えない友だちとの関係を深めるにはどうしたらいいのでしょうか?
 
友情を深めるための基本となる行動は、やはり“直接会って、対面でたっぷり話すこと”です。友情を支えるコミュニケーションは、言葉だけではありません。むしろ、会話をしたときにお互いの間に生じる波長や相互反応、このような“ノンバーバルなもの”こそが自他の理解と共感を深めてくれるのです。
 
しかし、デジタルツールはノンバーバルな情報をつかみにくいツールです。電話では相手の声の調子がわかりますが、表情までは読み取れません。オンライン飲み会では、表情も声も読み取れますが、モニター越しの緊張感や高揚感にかき消されると、相手の本意がつかみにくくなります。
 
したがって、デジタルツールに依存する環境では、リアルな場に比べると友情を深めにくくなってしまいます。コロナ下ではそうしたジレンマを抱え、さびしさとむなしさを感じている人がたくさんいるものと思います。

しかし、コロナが落ち着く日は、必ず来ます。やがて会える日が来ることを楽しみにして、それまではデジタルツールを上手に(依存せず、雑に扱わず、断絶せずに)活用しながら、コミュニケーションをつないでいきましょう。
 
そして、友だちと直接会えるときがきたら、心ゆくまで話をしましょう。そのときにはきっと、デジタルツールでは感じ取れない友情の深みを味わうことができるものと思います。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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