子供の教育

実現を急ぐ「GIGAスクール構想」、1人1台端末で子どもの教育の質はどう変わる?

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、政府は「GIGAスクール構想」を前倒して進めています。GIGAスクール構想で目指す「教育の質の向上」とは具体的にどういうことなのでしょう? またPCやタブレット学習と従来型学習のそれぞれのメリット・デメリットを上手く補い合いながら活用するコツも押さえておきましょう。

森 大輔

執筆者:森 大輔

子供の教育ガイド

新型コロナの影響で前倒しを進める「GIGAスクール構想」

2020年3月、新型コロナウイルス感染症防止のために学校が全国一斉臨時休校となり、「オンライン授業」が行われた学校がほんの一部あった一方で、そもそもその環境が整備されていなかった学校も多くありました。改めて日本の学校におけるICT(情報通信技術)環境整備状況が脆弱であることが浮き彫りとなりました。
 
2021年3月までの実現を急ぐ「GIGAスクール構想」

GIGAスクール構想により、「教育の質の向上」と「教職員の負担軽減」を目指す

そんな中、当初2023年度までの実現を目指すとしていた「GIGAスクール構想」が、2020年度末までを目標に前倒しされることになりました。しかし、全国での端末の調達実現は難しく、たとえ用意されたとしても運用できるところまではたどり着かないというのが現状でしょう。

GIGAスクール構想とは、簡単にいうと「1人1台の端末」を確保し、「高速大容量の通信ネットワーク」を整備すること。そして、その目的としては主に「教育の質の向上」と「教職員の負担軽減」の2つが挙げられます。教職員の方の大きな負担の一つである「採点や添削」が、タブレット教材等を使用することで軽減されるのは、「働き方改革」にもつながるでしょう。では、子どもの教育の質は、どのように変わることが期待されるでしょうか。
 

GIGAスクール構想で目指す、教育の質の向上「学びの主体化」

GIGAスクール構想で目指す「教育の質の向上」には、「学びの主体化」と「学びのパーソナル化」という大きく2つの方向性が考えられます。まずは「学びの主体化」からお伝えします。

みなさんは「PISA型学力」という言葉をご存じでしょうか。PISA型学力とは、「これまでに身につけてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるか」というものです。近年、受験問題においてもこのPISA型学力を図る問題が多く出題されるようになってきました。

PISA型学力を伸ばすためには、従来の教師からの一方向型の授業ではなく、生徒が能動的・主体的に学習をする「アクティブラーニング」が求められ、このことについては国の教育方針ともいえる「学習指導要領」の中でも触れられています。「学校だけで通用する力を育てる」のではなく、「社会に出て役立つ力を育てる」という方向に、やっと、公教育がシフトしてきたといえるのではないでしょうか。

そして「1人1台の端末(PC)」が実現することにより、この「学びの主体化」が図られるということです。例えば、以下のようなことが挙げられます。
  • インターネットを利用した調べ学習 …… 課題や目的に応じて、インターネット等を用い、様々な情報を主体的に収集・整理・分析する
  • 文章作成やプレゼンソフトの利用 …… 文章作成ソフトやプレゼンソフトを利用し、自らの考えをまとめて発表したり、共同編集で、リアルタイムで考えを共有したりしながら学びあう
  • 写真や動画を活用した学習 …… 写真や動画を撮ることで、より深く分析・考察できる

このようにPCやタブレットを利用することで、「学びの主体化」が図られるということです。子どもの学習理解度を図るために、「子ども自身に教えてもらう」という方法があるのですが(きちんと理解していないと教えられないため)、これと同じようなことが、日常的にできるのは非常にメリットだと思います。
 

もう1つの教育の質の向上「学びのパーソナル化」

「1人1台の端末」が確保されることによる「教育の質の向上」に関するメリットの2つ目が、「学びのパーソナル化」です。

従来の集団授業の最大の問題点は「子ども一人一人の習熟度や理解度が異なる」ことでした。最近は、「習熟度別クラス」などを設けている場合もありますが、それも限界があります。そんな中、「1人1台の端末」が確保されれば、この問題も従来より大きく改善されると思われます。近年、教育分野においてもAIが活用されてきています。例えば、AIが学習データを自動で分析し、その学習者に合った学習内容を生成するようなタブレット教材もあり、そういったものを導入すれば「学びのパーソナル化」が図れるでしょう。

また、英語学習においても「1人1台の端末」があれば、例えば、海外在住の外国人講師とマンツーマンで英会話のレッスンを行うことも可能です。

このような「学びのパーソナル化」も大いに期待できるでしょう。
 

PISA型学力に必要な「読解力」、PC・タブレット教材の活用例

今回はPCやタブレットを利用して「読解力」を育成するおすすめの教材をご紹介します。近年、上述した「PISA型」に入試問題が変わりつつある中で、読解力は国語以外の教科においても、今まで以上に求められるようになってきています。そのため、各教科の学習の前提として育成することが重要です。

その力を育成するための教材として、今回おすすめするのが「速読解力講座」です。

■速読解・思考力講座
ホームページ:https://www.sokunousokudoku.net/terrace/

いわゆる「速読」に近いものですが、目的としては、ただ速く読めるだけでなく、「速く正しく読む」ことを追求する教材になります。文章を「速く正しく」読むことができるようになれば、その力は、すべての教科の学習に役立つだけでなく、社会人になっても、大いに役立ちます。

実際、私の経営する塾でも導入していますが、1度トレーニングをしただけでも、一定時間内に読める文字数が増えたことが実感できます(目の動き方が全然違います!)。
 

PCやタブレット学習に頼りすぎるのもNG!

PCやタブレット学習で従来型学習はメリット・デメリットを補い合いながら

PCやタブレット学習と従来型学習はそれぞれのメリット・デメリットを補い合いながら

お伝えした通り、PCやタブレットを使用することで、GIGAスクール構想が目指す「教育の質の向上」を図ることができます。ただ、その一方、PCやタブレット学習のデメリットがないわけではありません。

例えば、算数や数学の問題演習をPC等で行うと、正誤も自動で判断されます。しかし、「なぜ間違えたのか」というところまでは判断できない場合が多いように思えます。その原因を明確にする作業は、まだまだ人間が行うべきものといえるでしょう。

そのため、「従来型の学習」と「PC等を活用する学習」のそれぞれのメリットとデメリットを明確にし、それぞれのメリット活かし、デメリットを補い合うような教育設計が求められることになるでしょう。
 
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