感染症

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査法…PCR検査・抗体検査・抗原検査の違い

【医師が解説】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査法として行われている「PCR検査」「抗原検査」「抗体検査」。それぞれメリット・デメリットがあり、発症時期や検査時の状態から、どの検査を受けるかを考慮する必要があります。そしていずれの検査結果も目安にはなるものの100%の精度ではありません。各精度・受けられる場所・検査法・費用の目安について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

PCR検査とは……精度・受けられる場所・検査法・費用の目安

PCR検査を受ける人

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査にも使われるPCR検査。抗原検査や抗体検査とはどう違うのでしょうか?

PCRとは、「Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)」の頭文字をとった略称です。そもそも遺伝子は核酸(デオキシリボ核酸はDNAと呼ばれ、リボ核酸はRNAと呼ばれています)と呼ばれる物質が鎖のような構造になっていて、「ポリメラーゼ」という酵素によって複製されます。通常、ごくごく微量なウイルスだけでは、その遺伝子情報について十分な検査ができませんが、PCR検査ではポリメラーゼによって元の遺伝子を増やし、その遺伝子があるかどうかの検査を可能にします。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)におけるPCR検査では、新型コロナウイルス遺伝子を増やすことで、ウイルス遺伝子を検出します。新型コロナウイルスに限らず、遺伝子が判明すれば、その他さまざまな菌・ウイルスに対してもPCR検査を行うことができます。

■PCR検査の精度
国立感染症研究所によると、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2ウイルス)の遺伝子検査法の性能評価は、遺伝子増幅する時間が1時間以上であれば50個ウイルスの遺伝子が必要ですし、15分未満では200個ウイルスの遺伝子が必要になります。

PCRの精度は検査する時期によりますが、鼻腔からの検体によるPCR検査の陽性割合が、発症日で94.39%、発症10日後では67.15%、発症31日後では2.38%でした。咽頭からの検体では、発症日で88%、発症10日後で47.11%、発症31日後では1.05%と推定しています(Wikramaratna Pらの報告)。

PCR検査は感度も精度も良い検査ですが、発症時期によって陽性率が異なりますし、あくまでも見ているものは「ウイルスの遺伝子」なので、ウイルスが壊れていて実際には感染力がなくても陽性になることがありますし、ウイルス量が少ないとウイルスに感染していても陰性になります。いずれも100%とはいえないのですが、症状が出ているときにPCR検査で陽性になった場合は、体内にウイルスが存在することが推定されます。

■PCR検査が受けられる場所・医療機関
PCR検査は保健所を介した行政検査、医療機関からの検査会社での検査、医療機関においてもPCR検査キットとPCR機器があれば受けることが可能です。また、民間でも自費で検査可能になっています。

■PCR検査の検査方法・結果が出るまで
検査方法は、鼻の粘膜またはのどを綿棒で拭う方法と、唾液を採取する方法があります。そうして取った検体を処理し、PCR検査を行います。PCR検査の結果は数時間でわかりますが、検査する場所によっては検体を運搬する必要もあるため、結果がわかるまでに数日かかることもあります。

■PCR検査の費用の目安……保険診療か自費診療かでも差
新型コロナウイルス感染症の可能性があるときには保険診療になりますので、検査機関での検査で1万9500円(自己負担3割として5850円)、医療機関での検査で1万5000円(自己負担3割として4500円)になります。一方で、無症状だが不安で検査を希望するような場合は自費になりますので、各医療機関によって費用が異なります。現在は3万~4万円前後が相場になっているようです。民間の検査では、3000円程度で検査可能になっていますが、証明書や検査を急ぐ場合には料金が加算されることがあるようです。
 

抗原検査とは……精度・受けられる場所・検査法・費用の目安

抗原検査は、ウイルス粒子のある成分で、そのウイルス特有の構造(抗原)を検出する検査です。抗原に対して反応する抗体蛋白質を使い、抗原抗体反応を目に見えるようにするもの、と考えてください。

■抗原検査の精度
抗原検査キットによりますが、PCR検査との比較で、ウイルスが400個以上で93%、100個以上83%、30個で50%といわれています。したがって、ウイルス量が少ない時期には、実際は感染していても陰性になってしまう可能性があります。

ただ、発症2日目から9日以内の有症状者については、抗原検査キットとPCR検査の結果の一致率が高いため、鼻咽頭拭い液による検査は、発症2~9日目までの患者について、検査結果が陰性なら、陰性の可能性が高いとされています。富士レビオ社の抗原検査キット「エスプラインSARS-CoV-2」が保険適応されています。

■抗原検査が受けられる場所・医療機関
抗原検査は、このキットのある医療機関で可能になっています。現在は、医療用の検査キットが薬局で販売されるようになりました。薬剤師から説明を受けて購入可能です。

■抗原検査の検査方法・結果が出るまで
検査方法は、鼻の粘膜またはのどを綿棒で拭って、検査します。検査から結果まで約30分程度です。抗原検査には陽性か陰性の定性検査とウイルス量を見ることができる定量検査がありますが、定量検査は機器が必要で多くは検査会社で行うことになりますので、検体運搬時間がかかります。

■抗原検査の費用の目安
新型コロナウイルス感染症の可能性があるときには保険診療になりますので、7690円(自己負担3割として2307円)になります。希望で検査する場合は自費になります。自費の場合は1万円から2万円のようですが、税金や手技料などを含むか含まないかで変わってきますので、医療施設によって異なります。また、医療機関で実施していない場合もあります。
 

抗体検査とは……精度・受けられる場所・検査法・費用の目安

PCR検査、抗原検査はウイルス自体を検出して有無を調べる検査ですが、抗体検査はウイルスに感染したときに人間の体内で作られる抗体を検出して有無を調べる検査です。

人の免疫では、ウイルス粒子にある特有の成分で免疫細胞が認識し、抗体が作られます。抗体検査では、感染から1週間程度で産生されて6週間後に低下する「IgM抗体」と、感染から1~2週間程度から産生され、年単位で持続する「IgG抗体」を検出します。

■抗体検査の精度
精度については、検査時期や検査方法によりますが、感度が66.0~97.8%、特異度が96.6~99.7%と考えられています。現在、日本国内で体外診断用医薬品として承認を得た抗体検査はありません。抗体がウイルスに対して有効な抗体かどうかも今後の検討課題になっています。つまり、抗体検査が感度100%、特異度100%でない限り、感染していても抗体が検出できない人もいれば、感染していなくても抗体があると判断されてしまう人もいるということです。

■抗体検査の検査方法・結果が出るまで
検査方法は、血液検査です。キットを使用すると数分で結果がわかりますが、感度、特異度の良い方法は検査会社で研究的に行われており、結果がわかるまでに時間がかかります。

■抗体検査が受けられる場所・費用の目安
抗体検査は現時点では承認されていませんので、検査可能な医療機関が限定されています。さらに保険診療ではありませんので、費用もすべて自費です。1万円から2万円のようですが、税金や手技料などを含むか含まないかで変わってきますので、医療施設によって異なります。また、医療機関で実施していない場合もあります。
 

新型コロナでベストな検査法は? 精度や目的を正しく理解を

以上のように、一言で「新型コロナウイルスの検査」といっても、「PCR検査」「抗原検査」「抗体検査」はそれぞれ異なります。どの検査がよいかは、発症時期やその時の状態による検査判定までにかかる時間などを考慮し、メリット・デメリットを考えて判断することになります。

例えば、何かしらの症状が出て発症から4日目で抗原検査で陽性になれば、新型コロナウイルス感染症であろうと診断されます。一方で発症1日目で病院を受診されても、抗原検査では感染していても陰性と判断される可能性があるため、PCR検査を行う必要があります。抗体検査は、かかったかどうかをある程度判断する指標になりますが、先述した通り、新型コロナウイルスの抗体の意義についてはまだはっきりしておらず、仮に陽性(以前かかった形跡が見られた)としても、十分な安心材料にはならないでしょう。

いずれの結果も100%の信頼性とはいえない点も含め、どのような目的でその検査を受けるのかを正しく理解しておくことも大切でしょう。

抗原検査、PCR検査では、検査においては、しっかりと検査できる成分が取れているかどうかも重要です。つまり、どんな検査をどのようにして行い、結果についてどう判断するかが重要になってきます。
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