マティーニのはじまりはジン&イット

 
ビーフィータージン&トニック

ビーフィータージン&トニック

 19世紀を通じ、そしてアメリカ禁酒法(1920~1933)施行前まではオランダのジュネヴァの時代だった、と前回(歴史9『ジュネヴァからドライジンへ』)で述べた。これはイギリスの輸出ビジネスも大きく影響していた。18世紀まで、産業革命の資金ともなったラムが絡んだ三角貿易にチカラを入れていた点も要因のひとつにはある。
 今回は「マティーニ」の起源とともに、「ビーフィータージン」の誕生とそのボタニカルについて述べたい。
 イングランドのジンの本格的な輸出ビジネスのはじまりは1850年頃からだといわれている。時を同じくして、イタリアのマルティニ・ロッシ社が自社のスイートベルモット(イタリアンベルモット)をPRするために甘口のオールド・トム・ジンとのミックス「ジン&イット」(Italiaのアタマ2文字を取ってイット)という飲み方を仕掛ける。
 歴史的流れではこの「ジン&イット」のジンをライウイスキーに代えたものがカクテルの女王「マンハッタン」、そしてスイートベルモットをドライベルモット(フレンチベルモット)に代えたものがカクテルの王「マティーニ」だと言われている。つまり「マティーニ」のはじまり、原型は赤く甘い味わいであり、それがドライジン(最初はオールド・トム)とドライベルモットのミックスに変化していったことになる。
 19世紀後半からはオールド・トム・ジンの流通とともに、ロンドンドライジンも少しずつ広がりを見せはじめる。
 

シトラス&クールなビーフィーターのボタニカル


 1876年にはジェームズ・バローによって、ジンのボタニカルにはじめてセビルオレンジ(ビターオレンジ)を取り入れた「ビーフィーター」を誕生させた。セビルオレンジはレモンピールとともに「ビーフィーター」のキーボタニカルであり、シトラス&クール、シャープでクリアというそれまでにない洗練された清涼感でドライジンの世界に一石を投じた。
 20世紀に入ると「マティーニ」のドライ化とともに「ビーフィーター」人気は高まり、とくに禁酒法が終焉した1930年代半ば以降のアメリカで現在の確固たる地位を築くことになる。そしてレシピは守られつづけ、「マティーニ」「ジン&トニック」といった人気の高いスタンダードカクテルのベースとしていまなお世界中で愛されつづけている。
 今回はこのサイトで紹介してきたジンのボタニカルを掲載しておくことにする。それぞれの使用ボタニカルを眺めながら、それぞれのジンの味わいを飲み比べてみるのも楽しい。(*ただし、ボタニカルの配合比は企業秘密である)

[ビーフィータージン]
ジュニパーベリー、レモンピール、セビルオレンジピール、オリス、リコリス、コリアンダー、アンジェリカシード(種)、アンジェリカルート(根)の計9種。
 
シップスミス ロンドンドライジン

シップスミス ロンドンドライジン


[シップスミス]
ジュニパーベリー、アンジェリカルート、リコリスルート、アオリスルート、コリアンダーシード、桂皮、アーモンドプードル、シナモン、レモンピール、オレンジピールの計10種。
*詳細は『「シップスミス」ロンドンクラフトジン先駆者の思想』参照




 
ジャパニーズクラフトジンROKU

ジャパニーズクラフトジンROKU


[ジャパニーズクラフトジンROKU ]
ベースとなるドライジン/ジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカルート、アンジェリカシード、カルダモンシード、シナモン、ビターオレンジピール、レモンピールの計8種。
和のボタニカル/桜花、桜葉、煎茶、玉露、山椒の実、柚子の皮の計6種。
*詳細は『六[ROKU]ジャパニーズクラフトジンの魅力』参照



 
サントリージャパニーズジン翠

サントリージャパニーズジン翠



[サントリージャパニーズジン翠]
ベースとなるドライジン/「ROKU 」と同様の8種。
和のボタニカル/柚子、緑茶、生姜の3種。
*柚子に関しては3タイプの原料酒をつくり分けており、詳細は『サントリージャパニーズジン翠(SUI)/味わい評価』参照

 

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