ヤケになっていく彼を見ていられない……

コロナ破局

好きな人が苦しんでいるなら支えになりたい。通常ならそう思うのだろうが、現状では誰もが苦悩と不安を抱えている。そんなとき、恋人を支えきれるものだろうか。
 

彼の仕事が激減して……

医療関係で働くマホさん(35歳)は、過去に類を見ないくらい多忙な日々を送っている。もちろん自身の体調にも日々、不安は尽きない。だがつきあって3年になる彼は仕事が激減しているそう。

「彼はある工場の2代目社長なんです。大学を卒業後、他の大きな企業に就職したものの2年後にお父様が急死。迷ったけど、結局、工場を継いだんだそうです。何もわからなかったから苦労したけど、周りのみんなに支えられてきたと聞いたことがあります」

ところが今回のコロナ禍で、彼の工場は仕事が激減、5人いた職人にも休んでもらって彼ひとりで仕事を続けていた。

「最初はさまざまな融資や給付金、助成金などを利用してなんとかがんばると言っていたんですが、4月の半ばに気持ちがぷつんと切れたみたい。私もとにかく忙しかったので、あまり連絡も密にとれなかったんですが」

工場の仕事がないからアルバイトを始めたと彼から連絡があった。慰めたくても会いに行く時間も気力も体力も、マホさんには残っていなかった。

「そうしたら彼が電話をかけてきて。何度かかかってきていたんですが電話に出ることもできなかったんです。ようやく出たら、『オレのことを見捨てるのか』と涙声になってた。何がなんだかわかりません。話を聞いたら、どうやらバイトもうまくいかず辞めてしまったみたいで。私が電話に出なかったこともあって、不安がマックスになってしまったんでしょうね」

だがその言葉はマホさんにとって衝撃だった。彼は常に明るく、マホさんが疲れていると必死になって笑わせてくれるようなタイプだったから。その彼が、オレを見捨てるのか、というなんとも情けない言葉を発したのだ。

「彼がSOSを出しているのはわかりました。でもやはり会うことには抵抗があったので、それからはなるべく毎日メッセージを送って励ましていたんです」

それでも彼の不安とストレスは募っていったようだ。
 

パチンコ三昧の彼

彼は毎日のように会いたいというメッセージを送ってきた。だが、彼女は会う時間を作ることができなかった。

「その後、彼がアルバイトを見つけたと連絡をくれたんです。工場のことはあとでじっくり考えるとして、とりあえず彼がやることを見つけたのはよかったんじゃないかと思っていました」

だがその直後、彼の友人から連絡があった。彼をパチンコ屋で見たというのだ。友人はたまたま通りがかっただけなのだが、開店前から彼が行列に並んでいたとか。友人は彼に帰るようにと言ったが、彼は聞かなかったそうだ。

「友人に彼が話したところによれば、毎日、パチンコ三昧なんだそうです。仲間内でもおしゃれで通っていた彼が、よれよれのTシャツを着て髪もボサボサだったって。こんな短期間でいったいどうなってしまったのか。つらいのはみんな同じです。アルバイトなんてウソだったんですね。彼だって本当は工場を守る責任があるはず。いてもたってもいられなくて、彼に会おうと連絡しました」

彼は電話に出たが、彼女の声を聞くと「もういい」と力なく言った。それでもなんとか時間を作って会いに行くと、彼は玄関の鍵を開けようとしなかった。

「会えなくて私、本当はホッとしたんです。そしてそんな自分がイヤだった。彼のことを切り捨てようとしている自分、そしてそんな状態になってしまった彼への苛立ち。いろんな気持ちがごちゃごちゃになって……。心の中で、彼にさようならと告げるしかありませんでした」

以来、彼とは連絡をとっていない。精神的にタフだと思っていた彼の意外ともいえる弱さを見たマホさん。今からでも彼を救えないだろうかと思う半面、自分だってつらいのに彼を救う余裕などないとも感じている。さまざまな人の生き方が今、大きく変化しつつある。
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