亀山早苗の恋愛コラム

コロナ禍、どうする?「夫の実家」とのつきあい方

新型コロナウイルスの影響で、さまざまな人間関係が変わりつつある。「本来はこうすべき」という自分の中の理想論と、現実との狭間で苦しんでいる人もいるようだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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結婚15年でも、義実家との関係に迷う……

コロナ帰省

新型コロナウイルスの影響で、さまざまな人間関係が変わりつつある。「本来はこうすべき」という自分の中の理想論と、現実との狭間で苦しんでいる人もいるようだ。

 

もともと疎遠だったのだけれど

2歳年上の男性と結婚して15年、中学生と小学生のふたりの子をもつアカリさん(46歳)。夫の両親は、アカリさん一家の自宅から車で30分ほどのところに住んでいるが、結婚当初から関係は薄かった。

「お義父さんは仕事三昧、お義母さんは仕事に趣味にとエネルギッシュな人なんです。習字の先生をしながらヨガや水泳なども習っていて友だちもたくさん。ほとんど家にいない。お義父さんも平日の夜は家で食事をとらない人。週末も仕事だゴルフだと忙しい。だから結婚したときから、あまり濃密な関係を築けなかったんです」

子どもが生まれたときも病院に駆けつけてくるようなタイプではなかった。明日退院という日にやってきて、次に孫に会ったのは半年後だ。そんな感じだからアカリさんは気が楽だった。ごく稀に夫が連絡をとるくらいの関係だったのだ。

義父は定年退職してから2つの会社で顧問や役員をしている。完全に引退して家で過ごすという考えはないらしい。義母もずっと書道を教えながら、趣味を続けていた。

ところが新型コロナウイルスの影響で、義父の勤務先が2つとも在宅勤務となった。仕事を奪われた義父はそうとう落ち込んでいたようだ。義母もまた、書道教室が閉鎖となって教えられなくなり、スポーツジムも友人と会うこともやめざるを得なくなった。

「ふたりとも家でじっとしていると、どうやら思い出すのは子どもや孫のことみたい。夫には妹がいるんですが、彼女は子どもを連れてよく実家に顔を出しているみたいです。ただ、子どもたちは元気で症状はありませんが、ひょっとしたら感染者かもしれない。義父母に感染したら大変ですから、私は連れては行きません」

もともと行ったり来たりしている関係ではなかったことも影響している。だが家にいることが多くなってくると、「このままでいいのだろうか」と思うようになったという。

 

夫も変わっていって

きっかけは義妹の発言だった。

「兄である夫を通して、子どもを連れてもっと実家に行ってあげてと言われたんです。私は連れて行くつもりはないと言ったんですが、それで私が冷たいということになって、すっかり悪者になってしまいました。だけど夫の両親を守るためにも、やはり会いには行けない。スマホのテレビ電話を使って顔を見せたりはしていましたよ。だけど義父母はそれでは満足できなかったみたいです」

夫も言動を変えていった。最初はアカリさんの言うことは正しいと賛同していたのに、妹や両親に頼まれたのか、連休は実家に行こうと言い出したのだ。

「聞けば義妹一家も来ると言う。それって完全に密な状態じゃないですか。私だって感染は怖いですよ。そうしたら、義父母は『私たちは感染してもかまわない。子どもは重症化しないんだから、連れてきて顔を見せてほしい』と。子どもが絶対重症化しないわけじゃないと思うんですよ。子どもは大丈夫なんて誤った知識をふりかざされても困りますよね。夫から断ってもらおうと思ったら、夫は『数時間ならいいんじゃないか』と。オヤジもおふくろも、今だから孫たちにも会いたいんだろうって平然と言うんですよ」

アカリさんは懇々と夫を諭した。万が一のことがあったらどうするのか。感染だけの問題ではない。車で出かけて、もし事故にでもあったら診てもらえる病院がないかもしれない。今の状態ではとにかくあらゆるリスクを避けるしかないのだ、と。

「義父母は、うちの子たちの入学式や卒業式にだって来たいと言ったことがなかったんですよ。私もそういう関係でいいと思っていたし。それが暇になって寂しいからって急に来いと言われてもね。百歩譲って、そういう気持ちになるのはわかるけど、今の状況では無理。それを説得すべきなのに、夫はきちんと理屈で言わず、私が反対しているからというふうに言ったみたいです」

何を言われてもかまわない、あとで私が正しかったとわかってもらえるはずだとアカリさんは言う。ただ、ときどき自分が冷たすぎるのか、頑なすぎるのかと思ってつらくなるともつぶやいた。

義父母が現状を正しく把握していて、「今年は来るな」と言ってくれたという話も聞いたことがある。ただ、「家族なんだから大丈夫」「今年は車もすいてるでしょ」と無理を通そうとする義父母もいたという。

この件をきっかけに、義父母との関係が今後どうなるのか、アカリさんは少し戦々恐々としているようだ。
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