仮面夫婦じゃない。前向きな選択としての「卒婚」

main

恋愛感情はないけれど、喧嘩したり嫌悪したりする関係ということではない。夫婦の間にあるのは、特有の距離

「卒婚」という言葉があるのをご存じでしょうか。婚姻関係を継続しながらも、同居したまま、または別居をして、それぞれ別の道を生きるというものだそうです。卒婚に触れた関連記事の数々を読んでいると、下記のような定義があると考えられます。

  • お互いが納得したうえでの前向きな選択
  • ゆえに仮面夫婦とは異なる概念
  • 仲が悪い家庭内別居とは異なる
  • 同居する方法と別居する方法がある
  • 互いに別の趣味を持ち精神的に独立している

熟年の「卒婚」の場合、定年退職後に互いが求める距離感の落差がきっかけとなるようで、夫婦いっしょに過ごしたい男性に対して、別々に過ごしたい女性からの「卒婚宣言」のようなものが多いようです。この流れ、離婚とほぼ同じですよね。

さて、本題に入る前に、筆者について少し説明します。私には結婚・離婚・再婚の経験があります。4年間交際していた彼氏に浮気されたときに、会社の先輩からの熱烈アプローチに乗っかる形でしたのが、最初の結婚。24歳でした。33歳で離婚。シングルマザー時代、自分の在り方や生き方も見直してから出会った、仕事、趣味、在り方について本当に気が合う現在の夫と、「今度こそ夫婦という関係を育むことに真剣に挑戦してみたい」と思ったのが再婚の理由です。

私は決して、結婚が「男女の最上級の関係」だとは思いません。両親も家庭内離婚状態で婚姻関係を険悪ムードで過ごしていたので、結婚や夫婦関係に夢もなく、それでも「離婚」は子どものためにも避けるべきだと思っていました。それだけに、この「卒婚」は興味深いテーマです。

それでも離婚を選んだのは、私の場合、前夫が子どもに暴力を振るったからです。借金や浮気は妻である私が我慢すればよかった。でも、子どもへの暴力は、完全に切り離す必要があったのです。そういう明確な理由がなければ、私も子どものためには「離婚」よりも、ゆるやかな「卒婚」へとシフトしていたかもしれません。

 

40代前半で「卒婚」……梨沙さんの場合

最近知り合った魅力的な40代の女性・梨沙さん(仮名)が、卒婚状態だといいます。現在、梨沙さんは専業主婦として、家事全般を担っています。夫は会社員で、お子さんはいません。そんな梨沙さんに具体的に話を伺ってみました。

――結婚までのなれそめについて伺えますか?

「同じ会社に勤務していました。事務職と研究職で建物も違うため、普通なら顔を合わせないのですが、会社の社員教育の機会に、彼が先生、私が生徒として初めて出会いました。教材のやり取りをするうちに、彼から食事に誘われ、その後、なんとなくつき合うことに。お互い恋愛感情があったわけではなく、タイプだったわけでもなく、なんとなく誘いに乗ったという感じです」

――いつごろから同居人ぽい関係になりましたか?

「最初からだと思います。二人とも、結婚自体、いつかはしないといけないものと思っていて、この人となら結婚してもいいか……という、冷静な双方の思惑とタイミングが一致しただけです。最初からお互いに「愛する人」という感覚ではありませんでした」

――卒婚のきっかけや原因に心当たりは?

「結婚生活自体が最初から落ち着いたものだったので、 大きなきっかけはありません。私は持病があるため、いまから新たに仕事をするのは難しいですし、彼は彼で、家事をしてもらって助かるという気持ちは持ってくれています」

 

こんな夫婦もある。でも恋愛はしてみたかった 

同じ方向ではないのかもしれないけれど、淡々と共に歩むイメージ。梨沙さんがいう「同居人」という言葉には「だから寂しくない」という響きも感じられます。

――立ち入ったことで申し訳ありませんが、夜の営みはどうされていますか?


「結婚前からありません。彼のほうはわかりませんが、私は性的な対象と見ることができなくて。彼は淡白で、無理やり要求もされなかったのもあります。お互い経験も少ないまま結婚したから婚姻関係を維持できているのかもしれません。

ただ、非常に大事なんだろうと思います。でも、それは結婚後に気づいたことです。よい夜の営みを重ねておられる夫婦は、どんな心境で毎日を送っておられるのか、とても興味があります。うまくいっていると相手に優しくなれたりするのでしょうね。今後も私たちにはないと思います。でも、これまでの積み重ねがたくさんあって、お互いなくてはならない存在なので、いまのところ“離婚”はありません。こんな夫婦もいます(笑)」


苦渋の選択でもなくあきらめでもなく、凛とした表情で語ってくださいました。後からわかったことですが、梨沙さんと私には、絶対服従させるコントロールタイプの「毒親」に育てられたという共通点があります。コントロールされ続けると、自分がどう在りたいのか、なにを望んでいるのか、自分の感情がわからなくなってしまいます。このことが「流されての結婚」と関連している可能性はあるのかもしれません。

最近やりたいことが見つかったという梨沙さんは、とてもキラキラしておられます。「でも恋愛はしてみたかったです。燃え上がるような恋をしたことがないんです」とおっしゃったのが印象的でした。夫婦の形は、夫婦の数だけありそうです。あなたはどう在りたいですか?

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。