ストレス

テレワーク疲れの原因はコミュニケーション不足?上手なストレス解消法

【産業カウンセラーが解説】新型コロナ感染症の拡大防止のため出社制限をかけテレワークを認める企業が増えています。多くの人が最初は新鮮に感じるようですが、テレワークが長期に及ぶうちに気持ちが落ち込み、ストレスを溜め込んでしまうことも。周りと自然に会話ができる職場との違い・注意点を踏まえ、テレワークでもコミュニケーションを諦めない工夫を取り入れていきましょう。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

出社制限でテレワークに……働き方の変化はメンタルにどう影響するか 

在宅勤務中の男性イメージ

最初は新鮮に感じる在宅勤務。しかし、次第にストレスを溜め込んでしまう人も少なくないようです

新型コロナウイルス感染症対策として、従業員の出社を制限し、テレワーク(在宅勤務・リモートワーク)を推奨する企業が増えています。突然のことに戸惑う声もあるようですが、企業側も先行きがわからない状況で新しい措置に踏み切り、試行錯誤している状況かもしれません。テレワーク中の方は不便を感じることもあるかもしれませんが、会社側が従業員をウイルス感染から守ろうと考えたこと、雇用が保障されて在宅で働けることに感謝して、なるべくポジティブな気持ちを持ちたいものです。

今回の出社制限には準備期間がほとんどなかったかもしれませんが、企業側だけでなく、従業員一人ひとりが企業を支えていることを自覚し、社会の一員として何ができるかを考える良いチャンスでもあります。ぜひそんなことも考えながら、1日1日を有意義に過ごせるように工夫してみましょう。
 

職場とテレワーク、ストレスが高いのはどっち? メリットとデメリット

そもそも職場とテレワークは、どちらがよいと一概に言えるものではありません。個々人の職務や家庭の事情などによっても大きく異なるでしょう。

■出勤して働くことのメリット・デメリット
一般的に考えると、職場への出勤には、通勤による生活リズムの作りやすさや、業務量や業務上の課題を互いに把握できる調整のしやすさ、また、常に周りの人とリアルに対話がしやすいことなどがメリットとして挙げられます。オフィス内に社員が揃っていれば、ミーティングやディスカッションのコーディネートもしやすいですし、同じ場所にいることで帰属意識が高まりやすく、組織の一員であることを実感しやすくなります。

一方で、毎日電車や車などで出勤しなくてはならない分、身体的なストレスはあるでしょう。毎日同じ仲間と顔を合わせる分、対人的なストレスを抱えやすかったり、同調圧力が高まりやすくなったりするというデメリットもあります。人によっては、みんなが出社したり残業している中で、気持ち的に休みが取りにくく、定時で帰りにくいといった負担感もあるかもしれません。

■テレワーク(在宅勤務・リモートワーク)のメリット・デメリット
これらに対して、企業によって細かなルールは異なるものの、テレワークの場合は一般的に業務で必要な時だけ連絡を取り合えばよいため、不要な対人ストレスが激減することが多いようです。その他にも、休憩が取りやすく、周りに干渉されない分、心のゆとりが生まれやすかったり、業務に集中しやすくなったりといったメリットが挙げられます。通勤ストレスもなく、人目を気にしなくてよい分、自由な服装でリラックスして仕事をすることもできます。自由な職場であれば、在宅になることでさらに副業や趣味とも同時進行しやすくなり、多彩な活動により仕事に役立つアイデアも喚起されやすくなるといったメリットもあるようです。

一方で、自分で律しないと生活習慣が乱れやすく、生活のオンオフが切り換えにくくなることや、他者の目がないことで緊張感が薄れすぎてしまい、人によっては気が散りやすくなってしまうこと、同僚とも顔を合わせないために帰属意識が薄れやすく、組織に必要とされているという実感を得にくくなることはデメリットだと言えます。また、すぐに話せる相手がいないため、孤独な気分に陥りやすいという点も、軽視すべきではない問題点です。
 

長期のテレワークで失われる会話量……不安な気持ちやストレスの増加

テレワークが長期に及ぶと、ストレスを感じる人も増えてくるかもしれません。最初は新鮮に感じても、1週間、2週間と長期に及ぶうちに、気持ちが不安定になったり、何となくうつうつと気分が沈んでしまったりする人も出てくるでしょう。こういったストレスの大きな原因として「人との接点が薄らぐこと」「日常的な会話量が減ること」などが挙げられます。

毎日当たり前のようにオフィスで働いていた人が、突然自宅で誰とも会話せずに仕事をする生活になると、「元の職場に戻れるのだろうか」「会社はこの先大丈夫だろうか」といった、普段は考えないような不安も生じやすくなります。職場で同僚や上司の顔が見えていれば、その都度ちょっとした不安を共有したり、共感したりすることで、ストレスコントロールができるのですが、全員がテレワークの時はそうもいきません。自分と同じように在宅勤務をしている同僚が何を考え、どうしているかが気になったり、上司から自分がどう評価されているのか不安が高まったりする人もいるかもしれません。
 

テレワーク中のメンタル管理にも重要な「普段のコミュニケーション」

外出自粛やテレワークを通じて、多くの人が実際に相手と会って会話をすることや、職場で人とかかわりながら仕事をすることの便利さやありがたさを実感していることと思います。会いたくても気軽に会えない状況は、会えた時の時間を有意義なものにしたいという気持ちにつながっていくでしょう。これは人と人との絆を深めるうえでも、重要な気づきになるはずです。

外出制限や食事会の自粛などはまだしばらく続くと思いますが、ストレスを抱え込んだりせず、適切なメンタル管理をしていくことが大切。そのためにも、形を変えてでも、人とのコミュニケーションを諦めないでいただきたいです。
 

試す価値ありの「Zoom飲み会」を無理なく開くコツ

電話やメールを始め、会わずにできるコミュニケーションの方法は様々ですが、この機会にぜひ試していただきたいのがZoomです。すでに多くの方がオンライン会議などで使用しているかもしれませんが、ここでおすすめしたいのはZoomを通じての飲み会です。

春は、本来なら年度末の締め会や春のお花見、歓迎会などで親交を深めるシーズン。同じ環境に置かれている同僚や上司と、日頃のテレワーク中のストレスや不安をざっくばらんに語り合える場を作ってみてください。それぞれに好きなお酒やおつまみを用意し、画面を通じて乾杯をする。場所は違っても、改まった場では相談しにくいことや本音も共有しやすくなります。育児や介護で普段は飲み会に参加できない従業員も参加しやすいので、さまざまな立場の人と新しい形で親交を深められるのではないでしょうか。お互いの子どもが親と一緒に会に参加して、親の職場の人と会話を交わすのも、子どもにとっては新鮮な体験になり、ストレス解消になります。また、たくさんの学びにもなるでしょう。
 
大切なのは、強制的な会にはせず、細かいことを決めすぎないこと。幹事は参加を強要せず、時間だけ設定して誰でも自由に集まり、自由に退室できるようにしておくだけで十分です。人数が多くなったら3~4人の分室を作って、少人数のグループで語りやすくするのもよいでしょう。適当な時間に分室のメンバーをシャッフルして、色々な人と話せるようにするなど、柔軟で楽しい飲み会になるよう設定すると、軽い気持ちで負担なく楽しめるのではないでしょうか。
 
Zoomは会議だけの目的で利用すると、どうしてもお互いに事務的で固くなりがちですが、自由に飲食しながら語り合うと、意外に楽しむこともできるツールです。新しいアイデアや問題の解決法が、ざっくばらんな雰囲気の中で見つかることもあります。大変なことも多い自粛ムードの中ですが、悲観的に内向きになるのではなく、これを何かのチャンスと捉え、前向きに新しいことを試してみてください。
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