洗濯

洗濯のプロ直伝!ニット類の「正しい」洗い方

ニットについては、様々な理由からクリーニングか? 家で洗うべきか? と迷うアイテムが、多々あります。今回はその中でも「ニット生地」に着目して、ホームクリーニングで洗っても良いのかどうかを“洗濯のプロ”が解説します。

神崎 健輔

執筆者:神崎 健輔

洗濯ガイド

クリーニングに出すか、家で洗うか?

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衣替えの時期が訪れるたびに迷う、この服はクリーニングに出すべきか、それともホームクリーニングにチャレンジをするべきか……。

近年の洗濯機の高機能化、洗剤の能力向上、またファストファッションやセールで手に入れた安価な物をクリーニングに出すのは気がひけるなど、さまざまな理由でホームクリーニングにチャレンジする人が増えています。そのなかでも今回は「ニット生地」に着目して、家で洗っても良いのかどうかを洗濯のプロが解説します。

まずはクリーニングと家庭洗いの違いと、ニットの繊維について知ることが大切です。家での洗い方や注意点は、それらを前提にご紹介したいと思います。

 

爆発的に増えている「家洗い」のトラブル

実は、ここ1年で爆発的に増えている問い合わせがあります。それは、「家で洗ってニットを縮ませた」というもの。2~3年前は年間100件あれば多い方だったのが、ここ1年は問い合わせ数が10倍以上に増えてきています。あまりにも多いので、縮ませた原因を聞いてみると……
  • 間違って洗ってしまった
  • 洗剤や洗い方は変えてないのに今年はなぜか縮んでしまった
  • 洗剤やブログを読んで家で洗ってみようと思った

という回答が大半を占めます。特に今年は、安易にニットを洗ってしまった方が多いように感じますが、その原因のひとつとして、「ホームクリーニング」「ドライコース」「ニットを家で洗おう」といった言葉で、“クリーニング店が行う洗いと同じ洗い方が家でもできる?”といった誤った情報が交錯しているようにも感じます。

そもそも、クリーニング店の洗い方は家庭洗いとは全くの別物。ニットの場合は、ドライ溶剤と呼ばれる有機溶剤(油の一種で、消防法が適用される液体)で洗浄を行うため、水は使いません。

この時点でお分かりかと思いますが、家で洗う際に、クリーニング店の仕上がり同様に型崩れや縮みを起こさずにニットを洗うことは「かなり難しい」のです。

 

洗濯のプロが解説! ニットが縮みやすい理由

ニットの多くは、ウール製品を中心とした動物繊維で作られています。さまざまな素材の衣類のなかでニット素材が特に縮みやすい理由は5つあります。
 
  1. ウールなどの動物繊維は、キューティクルと呼ばれる毛羽が絡まりやすい
  2. 動物繊維は水に弱く、洗浄によって繊維中の成分が流失してしまう
  3. 水に濡れた時の膨潤と、乾燥の際の収縮で余計に縮みやすい
  4. 洗濯機だと機械の力が強すぎ、フェルトを作る方法とほぼ同じ状態になる
  5. 洗浄温度が高い(30℃以上は注意)と余計に上記の現象が発生しやすい


例えばフェルト製品は、ウールの“縮む性質”を利用して生地を作っていることになりますが、洗濯機でニットを洗うことは“フェルトを作る手法と同じ”と言っても過言ではありません。洗濯機で洗うだけで、縮む要素は十分に満たしているわけです。

「前は洗えたのに、今回は縮んでしまった」という相談も実は多いのですが、その原因は脱脂です。上記(2)で“繊維中の成分が流出してしまう”ことを縮む理由のひとつとして挙げましたが、その成分のなかに“繊維の潤いを保つ油分”があります。繰り返し洗うことで脱脂が起こり繊維が細くなることで、結果、縮んでしまうのです。

また、「縮んでしまったニット」の多くは、洗濯表示を見ると9割以上の確率で“水洗いNG”のニットでした。つまり、ほとんどの人が洗濯機や洗剤を過信して、肝心のニットには見向きもせずに洗ってるのが実態です。油断せずに、まずはニット製品の洗濯表示を確認の上、細心の注意をはらってホームクリーニングしましょう。

 

洗濯のプロが考えた! 家でニットを洗う「究極の方法」

正直なところ、ニットを家で洗うことはおすすめできませんが、色々な事情でチャレンジしたい人のために、もっとも“縮む可能性が低い”方法を紹介したいと思います。

準備1. 洗濯表示の桶マークを見る
ニットの洗濯表示に桶のマークがついている場合に限って家で洗える素材と判断して、バスタオルに包んで手洗いする手法をおすすめします。上述のとおり、ニットにとって洗濯機は力が強すぎるため、間違いなく縮むと宣言してもいいくらいなので……。

準備2. 繊維の種類を確認する
綿やウール、カシミアといった天然の植物繊維や動物繊維は、縮む可能性が高い繊維です。最近よく見かけるレーヨンは、半合成繊維ではありますが水に弱い繊維の代表格なので縮む可能性があります。同時に染色が弱いことが多いため、移染しやすいことに注意が必要です。

ポリエステル100%、もしくはアクリル100%は縮みにくい性質の繊維なので、洗濯機OKの表示がついている場合もあります。

手順1. ニットをバスタオルで包む
丁寧にバスタオルで包んだニットを、押し洗いしていきましょう。
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手順2. 水をためて洗剤を溶かす
ニットを押し洗いする。ぎゅうぎゅう押し洗いするのはNG! 優しく沈める“だけ”が、ポイントです。
手順

手順3. 沈める→取り出す、を10回程度
ニットを水から取り出して、繊維の間を通り抜けるイメージで洗浄水を落としたら、また洗浄水に沈めて……を10回ほど繰り返します。
手順

手順4. 洗浄水に10分ほど放置して、すすぐ
10分ほど放置した後に洗浄水を捨てたら、水を張りなおす。再度、沈める→取り出すを10回程度繰り返しましょう。
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手順5. 乾いたタオルに取り替えて脱水する
タオルを取り替えながら、少しだけ手で圧力をかけて脱水していきます。タオルを2枚ほど取り替えながらやるとよいです。
手順

手順6. 平干しする
型崩れを防ぐためにも、平干しが適切です。平干し用のネットなどが無い場合は、ピンチハンガー等を使っても平干しできます。
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いかがでしょうか? めちゃくちゃ面倒くさい洗い方ではありますが、プロであっても家で洗う時はここまでしないとニットを縮ませてしまうということです。

「多少の縮みは我慢できる」のであれば、もう少し雑に洗ってもいいとは思いますが、来年も再来年も着たい大切なニットは、面倒でも、ご紹介した“衣類を守る洗い方”を取り入れるべきです。

正直、手洗いに失敗して縮んだニットを見たら僕だって悲しくなりますから、プロのクリーニング師に任せるのも選択肢のひとつです。今回ご紹介した内容を読んで、一緒に、ニットが縮まない世界を作っていただければうれしく思います。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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