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ハラスメントの種類…社会人が知っておくべき定義・対策・相談先

ハラスメントの種類は様々。パワハラ、セクハラ、モラハラから、マタハラ、スメハラなど、職場で気をつけるべき10のハラスメントを紹介。被害者にも加害者にもならないよう、社会人として知っておくべきハラスメントの定義・原因・対策・相談先を解説します。

執筆者:All About 編集部

ハラスメントとは? 社会人として知っておくべき10のハラスメント

ハラスメント職場10選

パワハラ、セクハラ、モラハラ……いつ自分が被害者、加害者になってしまうかわからない

個別労働紛争解決制度施行状況』(厚生労働省)によると、平成30年度に都道府県労働局等の総合労働相談コーナーに寄せられた、「いじめ・嫌がらせ」の相談は82,797件。解雇や労働条件の引き下げ、退職勧奨などの他の労働相談の多くが減少・横ばい傾向にあるなか、いじめ・嫌がらせ(=ハラスメント)の相談だけが激増し続けているのです。

いつ自分が被害者、もしくは加害者になるかわからない環境の中で、「知らなかった」では済まされないハラスメントについて、押さえておきましょう。

<目次>  

ハラスメントの定義

ハラスメントの定義

自分では気が付かないうちに「ハラスメント」にあたる言動を⁉ハラスメントの定義とは

自分では気が付かないうちに「ハラスメント」にあたる言動を繰り返していた……そんなことにならないように「ハラスメントの定義」を把握しておきましょう。

■パワーハラスメントの定義

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

「職場内での優位性」とは、職務上の地位に限らず、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれます。「パワハラ」という言葉は上司から部下へ、というイメージが強いのですが、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものもあります。

■セクシュアルハラスメントの定義

職場のセクシュアルハラスメントとは、「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます。

「職場」とは、出張先や実質的に職務の延長と考えられるような宴会なども職場に該当します。対象は正社員だけではなく、契約社員、パートタイム労働者など、事業主が雇用するすべての労働者です。男性も女性も、行為者にも被害者にもなり得ます。また、異性に対するものだけでなく、同性に対する性的な言動もセクシュアルハラスメントになります。

■妊娠・出産・育児休業等ハラスメント(マタハラ・パタハラ・ケアハラ)の定義

職場の妊娠・出産・育児休業等ハラスメントとは、「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業・介護休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることをいいます。

■参考サイト
ハラスメントとは/厚生労働省

 

社会人が知っておきたい10のハラスメントの種類・原因と対策

パワハラ、セクハラ、モラハラなど代表的とも言えるものから「こんなことも?」と人によっては意外に感じる可能性があるものまで、職場で知っておくべき10のハラスメントをご紹介します。

 

1.パワハラとは……圧倒的多数が上司から部下・パワハラが起こる原因

パワハラ(パワーハラスメント)

パワハラの圧倒的多数が「上司から部下」に対して行われている

平成24年度『職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書』(厚生労働省委託事業)によれば、パワハラの圧倒的多数が「上司から部下」に対して行われています。
 
■パワハラの原因1. 部下との信頼関係がないとパワハラと受け止められやすい
  • 上司と会って話す機会がほとんどない
  • 指示はメールだけで、要件だけのそっけない内容
  • 部下が行っている仕事に、関心を寄せていない
  • 一時的な成績や一回のクレームだけで、部下の仕事を判断する
  • 部下の頑張っている姿を見ていない、労いの言葉がない
上司のことを信頼できない部下は、上司の心情・事情を察することができず、何気なく言われた言葉だけで、「パワハラ」と感じてしまうことがあります。
 
■パワハラの原因2. 気づかぬうちに態度が大きくなっている

■パワハラの原因3. ハイパフォーマー上司は部下の気持ちが分かりにくい?
  • 自分は1日でできる仕事に3日間かけている部下に、「なぜ、簡単な仕事に時間をかけてるんだろう?」と感じてしまう
  • 少し叱ると凹む部下に、「打たれ弱い。自分はこの何倍もの叱責に耐えてきたのに」と感じてしまう
部下を「努力不足」や「精神力不足」と叱責してしまうことで、「パワハラ」と捉えられる例も少なくありません。

≪参考記事
「パワハラ上司」が職場から減らない理由・原因・取るべき対策法

 

パワハラの加害者にならないために……「6つの行為類型」を押さえる

2012年の厚生労働省の円卓会議によってパワーハラスメントの行為類型が発表されています。(「職場のパワーハラスメントの6類型」厚生労働省)パワハラの定義はわかっていても、具体的にどのような言動がパワハラとみなされるのかチェックしておきましょう。

<職場のパワーハラスメントの6類型>
 
  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)……部下を指導する際に、「君は何をやらせてもダメだな……」などと、うっかり口をすべらせてしまうと、指導を超えて相手の人格を非難していることになります。
  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)……気に入らない部下をいつも仲間外れにしている。
  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)……仕事に関係のない私用に部下を使い回したり、明らかに達成不可能なノルマを課したりする。
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)……過剰にプライバシーを詮索する。

≪参考記事
部下や会社にパワハラを指摘されたとき、すべきこと
 
 

ある日突然「パワハラ行為者」とみなされたら

パワハラ(パワーハラスメント)

ある日突然「パワハラ行為者」とみなされたら?

実際に「パワハラ行為者」とみなされた場合、謝罪するのではなく、パワハラ被害を訴えた人を非難するケースも多いようです。そもそもの行為についてパワハラという意識がないからです。

部下は上司に本音を伝えにくく、上司は自己の言動を客観的に振り返りにくい立場にあります。そのため、「指導」がいつの間にか暴言に発展していても、上司自身はそれに気づかず、部下は静かに屈辱感を味わっている場合があります。「コミュニケーション」のつもりで言っている卑猥な口ぐせを、部下は愛想笑いで応じながら必死に耐えている場合もあるのです。

まずは真摯に、「相手の言い分を聞きたい」「なぜそのように思われたのかを確認したい」という態度で臨むのがベストです。まずは被害者の言い分を聞き、どんなことをパワハラだと感じたのかを理解しようとすることが必要です。そのうえで、反省するべき点はきちんと謝罪し、明らかに誤解だと感じられる部分があるなら、その部分はきちんと自分の言い分を伝え、理解してもらうことです。

≪参考記事
部下や会社にパワハラを指摘されたとき、すべきこと

 

パワハラ被害者になったときの対処法・相談窓口

パワハラ(パワーハラスメント)対策

パワハラ被害者の対応策とは

まずは、
  • 自分が職場でされて不快に思うことがパワハラの「6つの行為類型」に当たるかどうかを、よく振り返ってみる
その上で
  • 周りの信頼できる人に相談したり、職場の相談窓口、自治体にある電話相談窓口などに相談してみる
  • 都道府県労働局、労働基準監督署の総合労働相談コーナーなどに相談してみる
「このくらい耐えられなきゃ、生き残っていけない」「上司だって、同じようなパワハラを受けてきたんだ」といった考えから、我慢してしまう人もいますが、まずは、「嫌だ」「怖い」「不快だ」といった、素直な感じ方を大切にすること。そして、周囲に相談することで、自分1人では気づかないような、よい解決策が見つかるかもしれません。1人で抱え込まずに、相談をしていきましょう。

≪参考記事
パワハラの定義とは?チェックすべき6つの行為類型

 

2.モラハラとは……モラハラ加害者になりやすい人の特徴とは?

モラハラ(モラルハラスメント)

家庭内だけでなく、友人や恋人関係、職場でも起こり得るモラハラ

日常の何気ないやりとりのなかでも、しばしば見られるモラルハラスメント(モラハラ)は、身近な誰かの行動の中に非難できるポイントを見つけ、そこを陰湿に指摘するなどして、相手の価値を貶めるのが、加害者の常套手段です。加害者は、相手を見下すことで、優越感に浸ることができます。

モラハラは、家庭の中だけでなく、友人、恋人関係内や職場のパワーを利用したいやがらせ(パワハラ)、異性に対する性的いやがらせ(セクハラ)も、モラハラの仲間です。どんな状況であれ、自分より立場の弱い人間に精神的な苦痛を与えて満足する行為は、すべてモラハラに関連します。

■家庭内モラハラの事例……モラハラ夫の9つの特徴

自己中心的な彼や旦那が、単なるわがままではなく、相手を過剰に束縛、支配をし、怒り出すと相手の人格すべてを否定するような暴言を吐いたり、極端な態度に出たりするようであれば、それはモラルハラスメントです。
 
<モラハラ夫の9つの特徴>
 
  1. 家庭内で優位に立ちたがる……「こんなことも知らないのか!」「誰の稼いだ金だと思っているんだ?」
  2. 妻の欠点をあげつらう……妻の行動が本当に問題なのかとは、実はあまり関係がなく、妻がどんな行動をしようと、責めて見下すことで優越感に浸る
  3. 自分が被害者であることを強調する……「そんな不出来なお前のせいで迷惑だ」と自分が被害者であることを主張し、妻に罪悪感を抱かせようとする
  4. 心を通わせようという気持ちがない……基本的には自分の要求を通すことのみ。妻側の感情や都合を慮ることはほとんどない
  5. まともな話し合いができない……モラハラは加害者が変わらなければ改善しない問題ですが、加害者自身が聞く耳すら持てないという事実が、この問題の根深さを物語っています
  6. 妻の行動を監視・束縛したがる……妻の身だしなみに関してさえも「こうしろ」「これはするな」と口を出し、監視と束縛によって妻の行動を掌握したがる
  7. 徹底した無視や不機嫌な態度……無視やため息、「お前にはわからないよな……」と呟くといった、静かに相手を不安に陥れていく「サイレント・モラ」
  8. 外にでると理想的な夫としてふるまう……いわゆる「外面が良い」タイプの人物が、職場や人間関係のストレスを家庭内で発散させてしまう
  9. 落ち込んだ様子を見せる時もある……良い夫・良い父としての顔を見せる時もあり、硬軟を取り交ぜて、妻の感情をゆさぶります

≪参考記事 
モラルハラスメント加害者、被害者になる人の特徴
離婚すべき!? モラハラ夫の特徴9つ──妻を苛む「モラ夫」の実態

 

モラハラ行為者に改善の余地はある?モラハラ対処法 

モラハラ(モラルハラスメント)

モラハラ行為者に改善の余地はあるのか?

  • あまりに暴言や支配などがひどい時には、まず、その人の性格をちょっと離れて冷静に見てみる。第三者に事情を相談して、意見を聞く。
  • 暴言を吐かれた際には、「すべて自分が悪いんだ」と、まともに受け止めず、「この人はこういうキツイ言い方をする人なんだ」とクールに受け止め、自分自身が追い込まれ、自己暗示にかけられる危険を避ける。
もし、相手の自己中が、モラハラまでいかず、ちょっとした頑固や自己中の範囲であるならば、相手を上手に立てることで、関係がうまくいくことがあります。

いろいろな面から見た結果、やはりモラハラである場合、自己愛性人格障害の可能性もあります。きちんとカウンセリングを受ける等、心療内科の門をたたく必要があります。しかし、多くの場合、こういった自分の性質に対して自覚がないため、夫であれば夫婦だけで話し合って受診をすすめてもうまくいかないことが多いのが事実。第三者に相談し、助けを求めます。その際に暴言の証拠などがあったほうが相談しやすいので、言われたことをメモしておいたり、可能であれば録音をしておきましょう。

≪参考記事
モラハラ夫の事例とは? 自己中旦那の特徴と見極め方

 

3.セクハラとは……同性間や性別の固定観念に注意!

セクハラ(セクシャルハラスメント)

明らかな性的発言だけでなく、同性間や性別の固定観念による言動に注意が必要

セクシャルハラスメントは、明らかな性的発言や性的要求ばかりではありません。性別による役割分担意識や、同性間で交わされる性的な冗談や干渉なども、セクハラにつながるものと考えられるようになりました。職場でのどんな言動がセクハラに当たるのか、理解しておきましょう。

■同性間のセクハラ

<職場の男性同士で気をつけたいセクハラに抵触する行為>
  • 上司との性的な話題に付き合う男性社員が、上司に好かれて厚遇されることがある
  • 新入社員が来ると、飲み会などで性的初体験などを聞いて場を盛り上げようとする
  • 体の一部分を茶化したあだ名を付けられている社員がいる
  • 性的な冗談を受け入れないと、何となく仲間外れにされてしまう
  • 接待などとして、性的サービスを取り入れることを要求される(風俗店での接待や飲み会の余興として服を脱ぐことなど)
■ジェンダーハラスメント……「男女はこうあるべき」は危険!

性別によって役割を分担するべきだと決めつける「性別役割分担意識」に基づいた言動は「ジェンダーハラスメント」とみなされ、国家公務員に対する人事院規則では、これもセクハラに含まれるものと定められています。

<「男女はこうあるべき」という固定観念にとらわれた発言例>
  • 「男のくせにメソメソするな」
  • 「女なのにお茶の入れ方も知らないの?」
  • 「男なら仕事の一つも取ってきなさい」
  • 「女なんだから、多少は色っぽい服装をして仕事をとってこなきゃ」
  • 「あの課長はオバサンだから、新人の男を下につけておけば仕事がうまく運ぶだろう」
性的な意味合いなどまったく考えもせずに行った言動でも、受け手がその言動に性的な含みを感じ、セクハラだと感じてしまう場合もあります。セクハラの感じ方には個人差があり、また男女間でも感じ方や受け止め方は微妙に異なるため、特に「男女はこうあるべき」という発想に基づく発言には注意が必要です。

≪参考記事
セクハラ防止のためにできること
セクハラは人権侵害!加害者にならないための基礎知識
同性間のセクハラ……男性同士でも法律違反!
 

セクハラ加害者にならないために

セクハラ(セクシャルハラスメント)

何気ない言動で「セクハラ加害者」にならないために

  • 日常の業務中に男性の上司が部下の肩をポンとたたく行為など、上司としてはコミュニケーションのつもりの何気ない行為でも、抵抗感を感じる相手もいます。相手の立場や気持ちを思いやって、それぞれに対する距離感を把握することが、セクハラを防ぐ上での重要な心構え。
  • 「取引先の営業担当者だから、いやらしいことを言っても大丈夫」「飲食店は『職場』ではないから大丈夫」という認識は重大な間違いのもと。「社外の人が相手だから」「お酒の席はプライベートの場だから」という甘い認識で、うっかりいやらしいことを言ったりやったりしないようにする注意が必要です。
  • 男性から女性に対してだけでなく、女性から男性に対してや、同性間など、原則誰に対してでも、相手が不快感を覚えるような性的な意味合いを含んだ言動は行わない。
  • 「男女はこうあるべき」という発想に基づく発言に注意。
  • LGBTの人々に対する「ホモ」「レズ」「おかま」「ニューハーフ」といった言葉、「男のくせに女みたいなしぐさをするな」「女性なのに男みたいな格好をするのはおかしい」といった発言は、「男女はこうあるべき」という発想に基づいた言動となり、たとえ言っている側は冗談のつもりでもセクハラになります。
≪参考記事
セクハラ防止のためにできること
セクハラは人権侵害!加害者にならないための基礎知識
LGBTへのセクハラ事例・職場で注意すべきこと

 

セクハラ被害にあったときの対処法・相談窓口

嫌な思いを抱えこまず、「それはセクハラだと思います」と伝えましょう。ちなみに、「わたし」を主語にして「○○と思う」「○○されたくない」というメッセージで伝えると、相手を傷つけず、自分の人権を守る自己主張ができます。

相手を気遣って気持ちを伝えられない場合は、職場のハラスメント相談窓口に、相談しにくい場合には、地域の男女共同参画センターのセクハラ相談窓口を利用しましょう。

≪参考記事
同性間の「妊活してる?」「男のくせに」もセクハラ!?

 

4.セカンドハラスメントとは……ハラスメントの二次的被害

セカンドハラスメント

ハラスメントの被害を受けた人が二次的な被害を受ける「セカンドハラスメント」

ハラスメントの被害を受けた人が相談したり援助を求めることで二次的な被害を受けることを「セカンドハラスメント」と呼びます。

■セカンドハラスメントになり得る言葉
  • 「上司と2人で食事に? どうして事前にちゃんと断らなかったの?」
  • 「彼のことはよく知っているけど、そんなことをする人ではないよ」
  • 「仕事(人間関係)ってそういうもの。それくらい我慢できないと」
  • 「そうされたのは、あなた自身に原因があるからじゃない?」
  • 「私も同じ経験をしたけど、自分で何とかしたよ。あなたもやってみては?」
相談された側は、悪気なく言った言葉なのかもしれず、こうした言及が必要で、有効なケースもあります。セカンドハラスメントにあたるかどうかは個々のケースや発話者の態度によって異なるため、上記の言葉のいずれもが、必ずしもセカンドハラスメントにあたるとは限りませんが、こうした言葉により、自責感が高まったり、「相談したらよけいに傷ついた……」という思いが残ってしまう場合もあります。

■セカンドハラスメントになり得る行為
  • 「対応を検討しておきます」と言っておきながら、他の業務に追われて相談されたことを結果的に放置してしまう
  • 「少し面倒だな……」という気持ちが出てしまい、無意識のうちに拒絶的、高圧的な態度を示す
  • 相談された話題をうっかり周囲に広めてしまう
何気ない行動が「セカンドハラスメント」として受け止められると、最悪の場合には訴訟や相談者の自殺などへとつながってしまうこともあります。

■セカンドハラスメントの対処法……「二重の不安」への対処を

ハラスメントの相談に来る人は、「相談したところで解決できるのだろうか」「相談したら逆にひどい不利益を得るかもしれない」、また、相談する相手に対して「この人に話しても大丈夫だろうか」「説教されてしまうのではないだろうか」という「二重の不安」を抱えている場合があります。
  • まずは、しっかりとその人の気持ちを受け止め、まっすぐに話を聴く。「傾聴」する。
  • 問題解決については、その先のプロセスで考えることと割り切り、「本当にそんなことが起こったのだろうか……」「なぜその時点で○○しなかったのだろう?」といった「自分の枠組み」から発した感情や思考はそっと脇に置く。
ハラスメントの相談には、心に抱えた重荷をいったん下してもらうことが最優先と心得て対応するようにしましょう。

≪参考記事
セカンドハラスメントとは…慰め・励ましが逆効果に

 

5.マタハラ・ケアハラとは……上司だけでなく同僚も加害者になりやすい

マタハラ・ケアハラ

上司だけでなく同僚もうっかり加害者になりやすいマタハラ・ケアハラ

妊娠・出産、育児休業・介護休業等に伴うハラスメント=マタニティハラスメント(マタハラ)、ケアハラスメント(ケアハラ)は、上司だけでなく同僚などもうっかり行ってしまう可能性のある行為です。
 
■マタハラの事例1:「制度等の利用への嫌がらせ型」

男女雇用機会均等法や育児・介護休業法が対象としている制度を労働者が利用しにくくする、利用したことによって働きにくくするハラスメントです。
  • 「妊娠中の体調不良によって休暇をとりたい」「子どもが熱を出したので休暇をとりたい」「親の介護で病院に連れて行かなければならないので、休みたい」などと上司に相談した場合に、上司が「これ以上正社員を続けるのは大変だろうから、非正規社員になってはどうか」などと返答し、不利益取り扱いを示唆した場合
  • 育児休業を申請した際に、上司が「産後3カ月で復帰した人もいる」などと言って、制度を利用しにくくする場合
  • 男性が育児休業を申請した場合、上司が「こんなに長く休みを取ったら出世に響くよ」と言って不利益取り扱いを示唆したり、同僚などが「うちの会社で男性が介護休業をとった例はないから、諦めた方がいいよ」と何度も言って制度を利用しにくくする場合
妊娠・出産・育児休業等を契機として、不利益な取扱いがなされる事例が増えており、厚労省も女性向け、企業向けのパンフレットをそれぞれ作成し、マタハラに関する周知活動を行なっています。(「妊娠したから解雇」は違法です/厚生労働省)

■マタハラの事例2:「状態への嫌がらせ型」

女性労働者が妊娠・出産した状態に対して行うハラスメントです。
  • 妊娠したことを報告した人に対し、上司が「うちの会社ではハードすぎて続けられない。やめるのが現実的だよ」などと1回でも言って、不利益取り扱いを示唆した場合
  • 上司が「女性はいつ妊娠するかわからないから、使えない」「子持ちの女性は、残業できないから困る」と言って妊娠・出産した女性を働きにくくする
  • 妊娠・出産した女性に対して同僚などが「彼女のせいで、私たちの仕事が増えて困る」などと陰口を言って働きにくくする場合
■マタハラ、ケアハラの行為者になりやすい!意識度チェック
  • 妊娠や出産をした場合、職場に迷惑をかけないように、自ら進退を考えるべきである
  • 男性は仕事を優先するべき。家庭の事情に振り回されることのないようにするべきである
  • 育児や介護中の労働者が正社員にこだわるのは、欲張りだと思う
  • 育児休業や介護休業などの制度は余裕のある組織だからこそ、取れるものである
労働者には、法律によって利用することのできる制度を活用しながら働ける権利があります。事業主や職場の人々がそれを理解せず、上のような意識を持っていると、無自覚のうちにハラスメントを行ってしまうことがあるので、注意する必要があります。

≪参考記事
マタハラ・ケアハラの事例…職場で注意すべきこと
これってマタハラ!?育休取得で降格はできません!

 

マタハラ被害にあったら

マタハラ、ケアハラにあたるかどうか判断に迷うときには、職場のハラスメント相談窓口や、都道府県労働局雇用均等室に質問してみるとよいでしょう。日本労働組合総連合会に相談窓口があり、職場に労働組合があるかどうかや、正社員かパートかといった雇用形態にも関係なく相談できます。

当事者は、制度を利用しながら働き続ける権利があるのに、マタハラ、ケアハラを受けて退職を考えたり、働きにくさを感じながら我慢する必要はありません。なかなか同僚などには相談しにくい内容のため、悩んだらこうした外部機関を利用しましょう。

日本労働組合総連合会「なんでも労働相談ダイヤル」
(フリーダイヤル:0120-154-052)

≪参考記事
”マタハラ退職”は2億円の損!
職場のマタハラからの効果絶大な自衛策7つ

 

6.アルコールハラスメント(アルハラ)とは……飲酒の強要

アルハラ(アルコールハラスメント)

「お酒が入ってるから」は言い訳にならないアルハラ(アルコールハラスメント)

特定非営利活動法人アスク(アルコール薬物問題全国市民協会)では、アルハラを5つの項目に分類し、1つでも当てはまればアルハラという人権侵害にあたると警告しています。

<アルハラ5つの定義>
  1. 飲酒の強要……上下関係・部の伝統・集団によるはやしたて・罰ゲームなどといった形で心理的な圧力をかけ、飲まざるをえない状況に追い込むこと
  2. イッキ飲ませ……場を盛り上げるために、イッキ飲みや早飲み競争などをさせること
  3. 意図的な酔いつぶし……酔いつぶすことを意図して、飲み会を行なうことで、傷害行為にもあたる
  4. 飲めない人への配慮を欠くこと……本人の体質や意向を無視して飲酒をすすめる、宴会に酒類以外の飲み物を用意しない、飲めないことをからかったり侮辱する、など
  5. 酔ったうえでの迷惑行為……酔ってからむこと、悪ふざけ、暴言・暴力、セクハラ、その他のひんしゅく行為
これらの多くは、かつては「酒の上での無礼講」と呼ばれていた行為ですが、無礼講と思っているのは本人だけで、周りにとっては非常に迷惑で危険な行為と受け止められる可能性があります。上下関係を利用して酒を強要すれば、パワハラと受け止められたり、性的な話題を出したり抱きついたりすれば、セクハラになったりもします。

アルハラ加害者にならないためには、適量で飲み、相手の体質や意向を考えて、無理に勧めないこと。酒の席での自分の行為が、他人からどう受け止められるのかを考えることです。

≪参考記事
そのお酒の勧め方、アルコールハラスメントかも!?

 

7.ブラッドタイプハラスメントとは……軽い会話で済まされないことも

ブラッドタイプハラスメント

〇型だから……と血液型で判断されることに人知れず傷ついている人も

A型は几帳面でB型はマイペース……日本では血液型性格診断が一般的に根付いていますが、血液型性格分類の英語名は「Japan Blood Ttype Theory of Personality」と呼ばれるくらい、諸外国からは「日本独特な考え方」と受け取られています。

血液型診断には科学的根拠や理論が立証されていません。ごく親しい友人同士で一種の遊びとして考えるのなら問題はないのでしょうが、過去に特定の血液型を「いい加減な性格の持ち主」「二重人格」などと決めつける内容のTV番組が放映され、視聴者から「子供が血液型でいじめを受けた」「一方的な決め付けで不快」などの抗議が寄せられる事例もあります。

軽く口にした「○型って××だから」という一言が、密かに誰かを傷つけてしまうかもしれないのです。これはセクハラと同じように相手の嫌がる行為を行うことと同じで、「ブラッドタイプ・ハラスメント」と呼ばれています。現実に、会社で人事や採用の場、果ては保育園の園児の組み分けでも血液型によって人格や能力を決め付けられ、診断されている場合があり、実際に血液型診断で嫌な思いをしている方も多いようです。

「血液型性格占いなんて、気軽なコミュニケーションにすぎない」と軽い気持ちで受け止めず、注意してみましょう。

≪参考記事
ブラッドタイプハラスメントって何?

 

8.インフルエンザハラスメント……会社を休むことがマナーである場合も

インフルエンザハラスメント

体調が悪いときは、会社を休むこともマナー

会社を休ませてもらおうと上司に電話して、インフルエンザにかかったことを報告したとします。「気合いが足りないからインフルエンザなんかになるんだ」「健康管理を怠るなんて、社会人としての自覚が足りない」など、少数であることを願いますが、言われた側が耳を疑うような大人げないセリフを口にする人もいます。

少しぐらい体調が悪い場合でも、それをおして出勤する人は多いかもしれませんが、高熱を出し、咳がゴホゴホ出ているのに、「絶対に休まない!」と頑張るのは他の人に風邪などをうつしてしまい、頑張る人が一転、迷惑な人になりかねません。職場には、受験生の子どもを持つ人や大切な仕事やイベントを控えている人がいるかもしれず、周りへの配慮も必要です。

体調が悪いときは、会社を休むこともマナー。社会人として配慮すべきは「休み方」です。会社への連絡の仕方、仕事の引継ぎ、お願いの仕方など、責任ある行動を示しさえすれば、心ない言葉をぶつける上司に対して「いい歳して、そんなふうにしか言えないなんて、むしろ気の毒な人かも」と同情してもかまいません。インフルエンザの症状だけでも苦しいのに、不要なストレスを溜めないよう大人の対応で処理しましょう。

≪参考記事
上司に「気合いが足りないからインフルエンザになるんだ」と言われたら
東京でインフルエンザ流行…「何℃から会社を休む論争」にみるマナー
『具合が悪くなったら…休み・早退時のビジネスマナー』

 

9.グロハラとは……本当の意味でのグローバル人材とは?

グロハラ(グローバルハラスメント)

グロハラ(グローバルハラスメント)が大手企業を中心に散見されている

グローバル化、グローバル人材、グローバルリーダーを育成……そんな言葉が飛び交う中で、グローバルの捉え方がどこかおかしくなっていると考えられる事態、グロハラ(選抜されたグローバル人材でないと人材に非ずという陰湿なグローバルハラスメントのこと)が大手企業を中心に散見されます。

文部科学省と経済産業省が共同で事務局を務める、産学人材育成パートナーシップグローバル人材育成委員会は以下のようにグローバル人材を定義しています。

主体的に物事を考え、多様なバックグラウンドを持つ同僚、取引先、顧客等に自分の考え方を分かりやすく伝え、文化的・歴史的なバックグラウンドに由来する価値観や特性の差異を乗り越えて、相手の立場に立ってお互いを理解し、更にはそうした差異からそれぞれの強みを引き出して活用し、相乗効果を生み出して、新しい価値観を生み出すことができる人材

グローバル人材の基本要件は「べらぼう」に仕事ができること。まずは腰を据えて自分の専門分野において卓越した成果や実績を出すことが第一歩です。しかしながら、巷ではグローバルというと英語等の語学力をイメージしてしまい、手っ取り早い目標として、“TOEICの得点を800点以上にする!”という目標設定をする訳です。

グローバルの本質として問われるべきは明確なビジョンと専門性の深さです。夢を明確化し、それに向けての専門的な能力を磨き続けることです。語学コンプレックスだけでグローバル人材を諦めてはいけません。「べらぼう」に仕事ができることこそがグローバルへの第一歩なのです。

≪参考記事
“グロハラ”を気にするな!本当のグローバル人材とは

 

10.スメハラとは……男性だけでなく女性も気をつけたい日頃の対策

スメハラ

本人の意図に関係なく起こってしまう「スメハラ」はしっかりと対策が必要

スメハラは本人の意図に関係なく、自身の体臭や口臭で、相手を不快にさせたり、不利益を与えたりすることです。セクハラやパワハラは意識を変えることで防げますが、スメハラは、意識の問題ではありません。日頃からニオイ対策はしっかり行いたいものです。

<日常的に行えるスメハラ対策>
  • こまめに汗をふきとる……汗が分泌されてから雑菌が繁殖して、ニオイに変化するまでは1~2時間かかるといわれます。この時間を目安に汗をふきとると、ニオイを抑えることができるでしょう。
  • 体の清潔保持……皮脂や体の汚れはニオイの原因となるため、下着や衣類はいつも清潔なものを着用することが基本。汗をかいたらシャワーを浴びるのがよいのですが、外出先などでは、脇の下や外耳道などを汗拭きシートなどでこまめにふきとるようにしましょう。また、家ではシャワーではなく、お風呂に浸かるようにすると、毛穴に詰まった皮脂が落ちやすくなり、雑菌の繁殖を抑えることができます。
  • 全身状態をチェック……体調不良、寝不足、不規則な生活など全身状態の不調による体臭も考えられます。定期的な人間ドッグや生活習慣を見直すことも視野に入れましょう。
  • 食生活を見直す・アルコール、タバコを控える……ニオイの元となるアポクリン腺から出る皮脂を減らすには、脂身の多い肉や乳製品、揚げ物などの脂っこい食事を控えることです。ただし、脂質は体臭を抑える皮膚膜の成分でもあり、あまり控えすぎるとかえってニオイが強くなることがあるので、適度にとる必要があります。お酒やタバコはアポクリン腺を刺激するといわれるので、できるだけ控えることをおすすめします。
≪参考記事
スメハラかも?気になる汗臭さを抑える3つのコツ
スメハラは体臭のメカニズムを知って予防・対策する
 

ハラスメントの被害を受けたら……ハラスメントの相談先

ハラスメントの被害を受けたら

ハラスメントの被害を受けたら、一人で抱え込まず、第三者に相談しましょう

  • 各都道府県の「総合労働相談コーナー」……専門の相談員がセクハラやパワハラなどの労働問題について相談に乗ってくれます。電話での相談も可能です。
  • 弁護士や社会保険労務士といった法律の専門家……注意点は、これらの専門家の多くは会社側に立って仕事をしています。相談する場合は、労働者側に立って仕事をしている人を選びましょう。
ただ、最終的に頼れるのは、家族や恋人、友人(リアル・ネット問わず)、両親などかもしれません。自分と同じ視点に立って悩んだり、自分に合った解決方法を模索してくれたりというのは、結局のところ自分がどれだけ心を開いて話せるかということが重要です。

ハラスメント系の悩みは、一人で抱え込まず、まずは、「会社とは独立した・安心できる誰か」に相談することが大切です。

■参考サイト
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