夫の定年まであと4年余りですが、業績悪化で退職金ゼロの可能性もあり……

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、夫が重篤な病にかかり、ご自分も病気で働くことができないという59歳の主婦の方。夫の会社の経営状態が悪く、減給になり、退職金ゼロの可能性もあるといいます。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料です)

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夫が重篤な病にかかり、自分も病気で働くことができない

夫が重篤な病にかかり、自分も病気で働くことができない



 
■相談者
芍薬さん(仮名)
女性/専業主婦/59歳
関西/持ち家(一戸建て)
 
■家族構成
夫 55歳 
※子どもたちは独立して一人暮らししている
 
■相談内容(原文まま)  
夫が早期希望退職の募集に応じるか悩んでおります。夫は重篤な病を患っており、月4万4400円の治療費が年に4回かかります。また私も難病にかかっているので、働くことは考えていません。会社の経営状況が悪く、この春から10%の減給、ボーナスも3分の2になりました。夫の定年まであと4年余り、それまでに会社が倒産すると退職金はゼロだそうです。一応、定年まで働くつもりですが、最悪の状況に陥った場合、貯金を取り崩しながら生活することは可能でしょうか?
 
また、夫が目の病気にもかかり、先のことを考えると好きな旅行に思う存分行かせてあげたいし、欲しいものは買ってあげたい、食べたいものを食べさせてあげたいです。是非、FPの深野康彦先生に診断していただきたいです。深野先生に個人的に相談しようと思いましたが東京に出向かないと無理とのことでしたので諦めていました。相談が可能になり大変うれしいです。
 
 
■家計収支データ
相談者「芍薬」さんの家計収支データ

相談者「芍薬」さんの家計収支データ



 
■家計収支データ補足
(1)ご家族について
今後もし、介護が必要となった場合は、金銭的にも肉体的にも子どもに協力を仰ぐつもりはありません。夫婦どちらかが残されたら、老人介護施設に入居を考えています(月20万円くらいの施設)。その時点で資金が足りなければ、家を売却するつもりです(1000万~1500万円くらい?)。夫の会社は、65歳まで働けますが、健康上の理由により60歳で退職したいと考えています。退職金は約2000万円(倒産しなければ)。
 
(2)収入について
私の月収分は、障害年金(身体障害2級)を受給していますので、その金額(月14万2000円)になります。2006年まで仕事をしていましたが、それ以降は専業主婦です。我が家の最大の節約は車を持たないことだと思っていますので、その分、食費が高いかなと思いますが、ここを節約する気はありません。
 
(3)住宅費について
住宅費3500円については、固定資産税(今年は4万1100円)の月割りです。住宅ローンは完済しています。持ち家(築約25年)は過去に3回リフォームをしておりますので、今後修繕が必要になる可能性があるのは、外壁工事くらいです。するとしたら150万円前後くらいになると思います。
 
(4)加入保険について
♢本人/生命保険(終身タイプ、60歳払い済み、死亡保障500万円)=毎月の保険料 4050円 ※ 2020年3月に払込完了
♢本人/共済(掛け捨て 病気死亡600万円、入院6000円)=毎月の保険料2640円 
※夫退職後(70歳まで/死亡保障200万円、入院2000円  80歳まで/死亡保障100万円、入院なし)
♢夫/生命保険(終身タイプ、55歳払い済み、死亡保障650万円)※2019年2月に払込完了
♢夫/共済(掛け捨て、病気死亡 2400万円、医療特約入院1万円)=毎月の保険料6820円
※夫退職後(70歳まで/死亡保障400万円 医療特約入院3000円  80歳まで/死亡保障100万円、入院3000円)
♢夫婦/共済=毎月の保険料2200円 
 
(5)貯金について
♢定期預金 
・妻名義 2950万円(利率は0.40~0.45%)
・夫名義 2000万円(利率は0.40~0.45%)
♢普通預金 34万円      
♢その他
 
(6)ボーナスについて
ボーナスの主な使い道は、特に決めておらず、主に旅行代。ボーナス額より足が出ることもある。足りない分は貯金から補填。2019年の旅行代は約150万円(海外1回、国内3回。うち1回は帰省)
 
(7)年金について
・夫 60歳から受給した場合 120万~132万円/年額
・本人 既に障害年金を受給 170万円/年額
※夫が20代から財形年金(共済)を掛けており、60歳から月に約1万~1万5000円を5年間受給予定。毎月の掛金は5000円
 
(8)治療費について
今のところ夫の病状は安定していますが、悪化や再発になる可能性もある。そのときは入院治療が必須。
 
■FP深野の3つのアドバイス
アドバイス1 行きたいところ、食べたいもの、思う存分楽しんで
アドバイス2 65歳年金受給開始時点で、金融資産は5000万円以上残る
アドバイス3 万一のときの介護施設は、今のうちに下見をしておく
 

アドバイス1 行きたいところ、食べたいもの、思う存分楽しんで

60歳まで働くつもりとのことですが、今すぐに早期退職しても大丈夫です。金銭的なことは、のちほど説明しますが、とにかくご主人の体調を第一に考えてください。勤務先の業績不振で退職金もどうなるかわからないのであれば、希望退職に応募して、もらえるうちに2000万円を受け取るほうがいいでしょう。
 
病気にストレスは大敵です。芍薬さんが書かれているように、ご主人と思う存分、旅行してください。食べたいものを食べ、欲しいものを買ってください。ただ、ひとつアドバイスするとしたら、ご主人が退職後も社会的なつながりを持ち続けてほしいと思います。生活のリズムが変わると体に変調をきたす可能性もあります。ボランティアなどの社会貢献活動でもいいですし、体に無理のない範囲でのアルバイトでもいいです。退職後の新しい生活のリズムを作るように心がけてください。
 

アドバイス2 年金受給開始時点で、金融資産は5000万円以上残る

早期退職しても、金銭的には問題ありません。
 
現在、約5000万円の金融資産をお持ちです。これに退職金の2000万円を加えて、合計7000万円あります。今、早期退職して、65歳の年金受給開始までの10年間の収支と貯蓄の推移をみていきましょう。
 
収入は芍薬さん本人の月14万2000円。ご主人の共済月1万~1万5000円が5年受給できますが、ここでは含めないでおきます。支出は月21万円なので、毎月約7万円のマイナスになります。もし、ご主人が毎月の収支がトントンになるぐらい、アルバイトなどで収入が得られるようにしたら、どうでしょうか。
 
その間、旅行で年間150万円。10年間で1500万円かかりますが、65歳時点で金融資産は5500万円残ります。ここから、住宅の修繕費、リフォーム代に150万~300万円使っても、5000万円以上残るので、金銭的な心配はないでしょう。
 
公的年金の受給開始については、60歳から繰り上げて受け取る予定ということですが、5年繰り上げで本来の受給額からは30%減になります。ご病気のこともあり、繰り上げを検討されていると思います。ただ、早期退職で満額受給の加入月数(480カ月)に満たないことも考えられますので、繰り上げることで、さらに受給額が減ってしまいます。その点、年金事務所で細かく確認されておくといいでしょう。
 
仮に、ご主人が60歳から年金受給(月10万円)するとすれば、毎月の収入は約24万円になり、支出は21万円ですから、家計収支の心配はなくなります。いずれにしても、ご主人のストレスが溜まらない生活を優先に考えてみてください。
 

アドバイス3  万一のときの介護施設は、今のうちに下見をしておく

最後に、ご夫婦がお一人遺されたときのことです。芍薬さんは、お子さまに頼らず、老人介護施設への入居をお考えとのこと。そのときのお身体の状態や介護認定によって入居する施設は変わってきます。そのときにならなければわからないものの、今、旅行に出かけられる体力があるうちに、いろいろなタイプの施設を下見、見学されておくといいでしょう。施設のタイプによって、かかる費用も大きく異なりますし、サービス、介護の内容も変わってきます。こうした心配事をなくしておくことも、ご主人のストレス軽減になるのではないでしょうか。
 
また、保険に関しては、払い済みのもの、もうすぐ払い済みになるものもあり、残るのは共済のみですから、このままで大丈夫でしょう。
 
ご主人を思う芍薬さんの気持ちは、とても素敵なものですね。どうぞ、ご夫婦でこれからも健やかにお過ごしください。
 

相談者「芍薬」さんから寄せられた感想

いつもマネープランクリニックを拝見していて、深野先生の相談者に寄り添うような心温まる回答に、私も相談させていただきたいと思っていました。このような機会を与えてくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。

「行きたいところ、食べたいもの、思う存分楽しんで」と言っていただき、ホッとしました。金銭的に心配がないようなので、この先も夫と残りの人生を楽しんでいきたいと思います。また、早期退職するのは夫に未練があるようなので、辞めたとしても何らかの形で社会とつながっていられるようにしたいと思います。介護施設についてはまだ下見など考えていませんでしたが、少しでも元気のあるうちに実行しようと思います。本当にどうもありがとうございました。


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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子


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