65歳までは都心で暮らし、老後は郊外の実家に戻りたいが……

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、老後の生活が不安で仕方ない57歳の独身女性。職場の上司の嫌がらせが原因で自主退職し、今は派遣社員として働いています。65歳までは勤務地の都心で賃貸暮らし、老後は神奈川の実家で過ごすというプランを立てていますが……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料です)

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一軒家に住んだことがないため老後の生活が不安に

一軒家に住んだことがないため老後の生活が不安に




■相談者
大山さん(仮名)
女性/パート・アルバイト/57歳
東京都/借家
 
■家族構成
一人暮らし
※父親(92歳)が特別養護老人ホームにいる
 
■相談内容(原文まま)  
今後の生活をどうすればよいか、不安で困っています。3月末まで正社員で勤めていましたが職場の部長からのいやがらせで自主退職し、4月からは派遣で働いています。時給は1600円で7時間勤務。16万円の収入は年間平均月額としました。父親が一人いるだけで特養にいます。共済年金で月額20万円ほどで、父の預貯金は3300万円、株が1100万円です。私の貯金が3500万円です。私は一人っ子なので父の財産は全て相続することになります。神奈川に築40年の一戸建ての持ち家があり、外壁塗装、瓦のはりかえは今年済ませました。私は勤めの都合上、都心に家賃7万5000円の1Kに住んでいます。神奈川の実家から勤め先まで通うには片道3時間近くになるため働いている間は借家に住み、65歳の退職後に住むつもりです。理由の1つに父一人私一人の家族で、父は特養にいる今、私以外、家族がいないため、災害時等に帰宅困難者にならないため、いざとなったら歩いて帰れるところに住みたいためです。派遣社員としてこのまま65歳まで働いて、それ以後、神奈川の持家で老後は過ごすというプランで大丈夫でしょうか。教えていただけたらと思います。

■マネーデータ
相談者「大山」さんの家計収支データ

相談者「大山」さんの家計収支データ




■家計収支データ補足
(1)収支について
収入より支出が多く、貯金を取り崩している
 
(2)住宅費について
都心の賃貸の家賃は7万5000円。実家の固定資産税は、約5万円。今後、浴室のバスタブは交換を予定している。一戸建てに住んだ経験がないため、この先、何が必要になるかも分からず不安。
 
(3)加入保険について
共済/入院事故5000円、病気4500円、事故1500円=保険料3500円
 
(4)貯蓄について
本人の貯蓄3500万円の内訳: 普通預金3250万円、定期預金250万円
父親の貯蓄3300万円の内訳: 普通預金2800万円、定期預金500万円
 
(5)父親の投資内容について
全て株式投資。配当が年5万円ほど出る。
 
(6)年金について
正社員(月額29万8000円、賞与3.5カ月)で60歳まで納めた場合の受給年金予定額は年間127万2150円。現在、派遣で月額19万円の条件に変わったため、年金額はこれよりも少なくなる。
 
(7)相続について
父親の遺産について相続人は相談者のみ。貯金、株、持ち家の他に財産、借金、ローンはない。
  
 
■FP深野康彦の2つのアドバイス
アドバイス1 現在の貯蓄と父親の財産があれば、老後資金の心配はゼロ
アドバイス2 都心にマンションを買って老後を過ごすなど、楽しみを見つけて
 

アドバイス1 現在の貯蓄と父親の財産があれば、老後資金の心配はゼロ

現在の家計収支は赤字で、貯蓄を取り崩している状態とのことですね。ちょっと計算してみましょう。月に3万円弱、年間で約36万円の赤字ですから、今から65歳で退職するまでの8年間で、赤字額の合計は36万円×8年間=288万円になります。多めに見積もって300万円の赤字が出るとしても、65歳時点で3200万円の貯蓄が手元に残りますね。
 
年金については、派遣社員になって収入が減ったことを考慮しても、正社員だったときに比べて約1割減の、年間115万円程度は受け取れるでしょう。
 
もし実家に暮らすようになれば家賃はかかりませんから、今と同じ生活を続けていれば毎月の支出は12万円になります。年間で12万円×12カ月=144万円の支出です。支出の144万円から年金収入の115万円を引いて、1年あたり約30万円の赤字です。
 
単純計算で65歳時点の貯蓄額3200万円を、1年あたりの赤字額30万円で割ると、106年分になります。つまり、大山さんが163歳になるまで大丈夫なのです。
 
大山さんの場合、これにお父様から相続する予定の財産を足せば、老後の経済的な心配はゼロといえます。
 

アドバイス2 都心にマンションを買って老後を過ごすなど、楽しみを見つけて

さて、老後のお金の心配がなくなったところで、大山さんにとっての豊かな老後とはどんなものかを考えてみましょう。
 
支出を抑えるという意味では、神奈川の実家で暮らすのがベストですが、それが本当に豊かな老後といえそうですか? 年をとってからの住み慣れない土地、しかも経験のない一戸建てでの暮らしはなかなか大変かもしれませんよ。
 
そこで思い切って、都心にマンションを購入することをおすすめしたいと思います。街中の便利な場所に、中古で2000万~2500万円くらいのマンションを購入して、そこに老後も住み続けるのです。ご自身の貯蓄は1000万円に減りますが、家賃がなくなりますから毎月の家計の持ち出しがなくなります。
 
これから先、バスタブも含め、実家にはリフォーム費用がかかってくるでしょう。都心にマンションを購入すれば、早めに実家を売却してこうした支出を回避することができます。
 
便利な終の住処と十分な金融資産で老後の暮らしは万全です。これからは、ぜひご自身のために楽しみを見つけてお金を使ってください。とはいえ、大山さんは元々お金を使わない生活をしていらっしゃいますから、老後を迎えてから急に使うのは難しいでしょう。
 
しかしいずれお金は残ってしまうはずです。せっかく節約して貯めたお金ですから、今から少しずつ、自分のために使いはじめましょう。上司に嫌がらせを受けて自主退職したとのこと、さぞかし大変だったろうと思います。嫌な思いをしたのならばなおさらのこと、旅行でも、自分が気に入った団体への寄付でも、自分がハッピーな気持ちになれるよう有意義にお金を使ってください。
 
最後に、お父様の資産について。今のままですと、相続税が100万円~200万円はかかります。お父様の意思が確認できる状況なら、生前贈与を検討してみることをおすすめします。
 

相談者「大山」さんから寄せられた感想

老後の家を実家で過ごすのか、2000万程度のマンションを購入するのか、なるほどなあ、と思いました。そこが最大の悩みどころになりそうです。でもとりあえず、今の低収入の状態でも老後は安心というところで、ほっとできました。あとは健康でいることが大切になってきそうですね。色々、本当にありがとうございました。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/長島美樹


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