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ウイスキー&バー/初心者のためのウイスキー入門記事

クラフトとは何か/ウイスキーのクラフト感を見つめる(2ページ目)

クラフトビールがアメリカでブームになって以来、ウイスキー業界にもクラフトディスティラリーがたくさん登場し、またいまではクラフトジンが世界的な人気となっている。ところで、クラフトっていったいなんだろう。わかっているような気にはなっているが、さてさて。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

ウイスキー&バーガイド

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メジャーブランドのクラフトマンシップ

 
ノブクリーク

ノブクリーク

“クラフト”というワードをウザいって感じる人がいるのもわかる。わたしもときに、客寄せワードとしか想えない製品がある。
ウイスキーにしても、とりあえず蒸溜所を立ち上げるとクラフトディスティラリーとして話題になる。ただし、いかに注目を浴びようともその段階ではまだゼロでしかない。樽熟成させ、製品として世に出してやっと1となる。樽熟成があるから、他の酒類のようにすぐには製品化できない悩ましさがある。
そこからは消費者にどう伝え、それがどう愛されるかで、やっと2となり3となっていく。早い話、いくら格好をつけても売れなくては駄目なのである。クラフトの言葉の響は心地いい。ただ限られたマニアにいくら愛されても、ビジネスとして成立しなければ消えて行くしかない。
そのなかで10を達成したといえる「角瓶」というウイスキーは天晴なのである。
 
メーカーズマーク

メーカーズマーク

世界的ビッグブランドである「ジムビーム」。そのビーム家6代目は1980年代末からクラフトバーボン(記事『クラフトバーボンには名匠の思想や信念が宿っている』参照)なるものを生みだした。これは禁酒法以前(1920年以前)の力強いバーボンの復活を目指しての探求によるもので、バーボンにプレミアムのカテゴリーを創出させた。そのなかのひとつに「ノブクリーク」があるが、これなどほんとうに傑作だと思う。
さらにバーボンでいえば「メーカーズマーク」。一般にとうもろこし、ライ麦、大麦麦芽を穀類原料とするなかで、配合比を見直しながら、パンを焼くという非科学的な方法で、スパイシーでドライなライ麦よりも小麦のほうがまろやかで口当たりがよいことから小麦を採用した(記事『メーカーズマーク/プレミアムバーボンの証』参照)。そして立ち上げ時から少量生産で世界品質を目指したのである。まさにザ・クラフト。そして世界的なブランドに成長した。
 

飲み手のために生まれたブレンデッド

 
ティーチャーズ ハイランドクリーム

ティーチャーズ ハイランドクリーム

スコッチでいえば「ティーチャーズ ハイランドクリーム」。これは1863年、ブレンデッドウイスキー黎明期(れいめい)に誕生したものだ(記事『ティーチャーズ/アードモアが中核の名ブレンデッド』参照)。150年以上経たいま、日本では“ティーチャーズ・スモーキーハイボール”が愛されている。
ウィリアム・ティーチャーの開発時の想いは、グラスゴーの造船所で働く男たちや港湾労働者たちのために、しっかりとした品質を抱きながらも仕事帰りに酒場で気軽にポケットマネーで飲めるウイスキーを提供したい、というものだった。
それがグラスゴーの市民の酒へと成長し、やがて海外でも愛されるようになったのである。ティーチャーの開発時の姿勢は、クラフトマンシップそのものである。それが継承されて21世紀のいまがあるのだ。
いろいろと語ったが、たとえあなたが愛するウイスキーがクラフトとか匠の技などと謳っていなかったとしても、つくり手の想いは込められている。たしかに“旨けりゃ、いいじゃんか”ではある。でも、長く世の中に愛されているウイスキーであるならば、ときに慈しんで飲んでいただきたい。
そして差し出がましいけれど、つくり手側もブランドが長く愛されるよう努力をつづけていただきたいと願う。すべてが「角瓶」をはじめ、上記ブランドのようになれる訳ではないし、時代のなかで窮地に陥ることもあるだろう。でも体力があるならば名品はできる限り守っていただきたい。
わたしはかつて、ブレンデッドスコッチのブランド淘汰に出会った。いくつもの名品が消えた。あれほどの淋しさはもう経験したくない。
次回の記事はクラフトつながりで、クラフトジンを紹介する。(ボトル撮影/児玉晴希)

 

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