家計簿・家計管理

ふるさと納税って本当にふるさとの役に立っているの?【2018年】

ふるさと納税が開始してから10年、寄附金は多く集まるようになりましたが、自治体の行き過ぎた行為が毎年のように総務省から指摘されています。ふるさと納税は本当にふるさとの役に立っているのでしょうか?統計からふるさと納税の現状を考えてみました。

松浦 建二

執筆者:松浦 建二

医療保険ガイド

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ふるさと納税の受入額が多いのは北海道・佐賀県・宮崎県

ふるさと納税は育ててくれたふるさとへ税制を通じて貢献できる制度ですが、生まれ育ったふるさとでない都道府県や市町村等にも寄附することはできます。そのため、寄附金額は出身者の多い少ないではなく、寄附する人の気持ちに大きく影響します。

平成29年度の寄附金額は全国で3653億円でしたが、都道府県別にみてみると寄附金額や寄附件数にかなり差があることがわかります。最初に寄附金額の多い10県を表にしてみました。

都道府県ごとの寄附金額は、各都道府県への寄附とその県内の市町村等への寄附の合計です。寄附金額の対全国比は、全国3653億円の寄附金額に対するその都道府県の割合(シェア)で、寄附金額/件は、都道府県ごとの寄附1件あたりの寄附金額です。
 
ふるさと納税、北海道、佐賀県、宮崎県

ふるさと納税受入額の多い都道府県


全国で最もふるさと納税の受入額が多いのは北海道で、北海道と北海道内の市町村を合計すると365億円になります。寄附件数は220万件にもなり、全国比では寄附金額が10%、寄附件数が12.7%にもなります。北海道がふるさと納税の1割を集め、8件に1件が北海道への寄附ということになります。北海道はこれで平成25年度から5年連続で1位です。

2番目に寄附金額が多いのは佐賀県の315億円です。北海道とは50億円の差で、前年の5位から大きく上げています。3番目に多いのは前年と同じく宮崎県で249億円となっています。上位には九州の県が多く、他に鹿児島県と福岡県も入っています。他には中部地方が静岡県、長野県、岐阜県と3県入っていますが、九州地方や中部地方が寄附者の心を掴んでいると言う訳ではなく、九州地方や中部地方にある一部の市町村等の頑張りによって上位に入っていると言えます。

表に載せた寄附金額の多い10道府県だけで日本全体の58.3%もの寄附金を受け入れています。寄附件数も10道府県で日本全体の63.7%になります。ふるさと納税は一部の都道府県の一部の市町村等で特に盛り上がっていると言えそうです。
 

寄附の受け入れが少ないのは富山県・徳島県・京都府

寄附金を多く受け入れている都道府県があれば、あまり受け入れていない都道府県もあります。ふるさと納税による寄附金額の受け入れが少ない都道府県(県とその県内の市町村等の合計)も表にしてみました。
 
富山県、徳島県、京都府、ふるさと納税

ふるさと納税受入額の少ない都道府県


ふるさと納税による寄附金を最も受け入れていないのは前年と変わらず富山県です。富山県と富山県内の市町村を合わせて4億円しか受け入れておらず、前年よりも減っています。富山県のシェアは僅か0.12%で、北海道の1/100強しかありません。寄附件数も16,750件で全国一少ないです。おそらく寄附金に頼る必要性があまりないのでしょう。

2番目に少ないのも前年と変わらず徳島県で8億円(シェア0.23%)、3番目は京都府の13億円(0.37%)となっています。表の10府県を合計しても寄附金額は日本全体の僅か4.1%にしかならず、寄附件数は僅か3.2%という状況です。これらの府県はあまり寄附金を必要としていないのでしょうが、寄附金を多く受け入れている10道府県とはあまりにも大きな差があるのが実情です。
 

ふるさと納税の寄附金は諸費用で半分以上消えている

自治体がふるさと納税で寄附金を多く集めても、全てを必要な事業に使えるわけではありません。寄附金を集めるために返礼品や広告で多くの支出を伴います。寄附金を有効に活用するには、これらの費用はできる限り少ない方が良いですが、現実はかなり多くの費用がかかってしまっているようです。

そこで、総務省ふるさと納税ポータルサイトから、ふるさと納税の募集等に伴う費用(平成29年度決算見込額)が多かった自治体を集めて表にしてみました。表の合計は、返礼品の調達に係る費用・返礼品の送付に係る費用・広報に係る費用・決済等に係る費用・事務に係る費用・その他(未記載)を足した額です。寄附金額に対する費用割合は、費用合計を寄附金額で割って計算しています。受け入れた寄附金のうちどのくらいの割合が諸費用に使われてしまっているかを確認できます。
 
ふるさと納税、費用内訳,森町

ふるさと納税の募集等に伴う費用内訳


ふるさと納税の募集等に伴う費用が多い市町村等には、寄附金を多く集めた市町村等が当然多く含まれています。寄附金を最も多い135億円も集めた泉佐野市は、費用も84億円で最も多くかかっています。内訳としては返礼品の調達に61億円、返礼品送付に7億円等です。寄附金の62%は費用として使われてしまい、事業に有効活用できるのは寄附金の38%程度しかありません。

高知県奈半利町や北海道森町は寄附金の75%がふるさと納税の募集等に伴う費用として使われるため、事業に有効活用できるのは寄附金の1/4程度しかありません。表に載せた市町では佐賀県みやき町だけ費用割合が50%を下回っています。寄附金を受け入れた年度と費用として計上した年度が異なる場合も考えられるので、ここで計算した費用割合が実情と異なる可能性もないとは言えません。

ふるさと納税で事業資金を集めるのは効率的とは言えないかもしれませんが、返礼品調達に寄附金が多く使われているので、返礼品を提供している業者はふるさと納税によって売り上げがかなり増加しているはずです。送付にかかわる輸送業者や広告をしている各ふるさと納税のサイト、決済を代行している業者等もかなり恩恵を受けているでしょう。
 

勝浦市は返礼品の調達・送付費用が寄附金額の3倍もかかっている

最後に、返礼品の調達と送付に係る費用が寄附金額に対してどのくらいの割合になっているかを確認してみました。下記の表はその割合が高い市町村です。
 
調達費用、送付費用、勝浦市、大多喜町

ふるさと納税返礼品費用の高いランキング


千葉県勝浦市は平成29年度(2017年度)に5億4千万円のふるさと納税による寄附金を受け入れていますが、ふるさと納税の募集や受入等に伴う費用のうち、返礼品の調達と送付に係る費用が16億1千万円(平成29年度決算見込額)となっています。寄附金額の実に3倍にもなります。前年度寄附者への返礼費用等が含まれているのかもしれませんが、負担が大きいのは間違いないです。

千葉県大多喜町は勝浦市の隣町です。寄附金額は勝浦市の1/3もありませんが、返礼品の送付に係る費用が勝浦市以上にかかっています。表に載せた市町村は返礼品の調達と送付に係る費用だけで寄附金額の70%以上になっています。これに広報や決済等に係る費用を足したら、折角寄附金を集めても必要な事業に使う前にほとんど無くなってしまうのではないでしょうか。
北海道、寄附金額

北海道への寄附が一番多い

ここ数年、総務省から各市町村等へ寄附に対する返礼品は適切な良識あるものを求める通知が出ています。ふるさと納税は寄附者にとって返礼品を得るための通販ではなく、市町村等にとって労せずに得たボーナスではありません。寄附する人は返礼品の良し悪しだけで寄附先を考えるのではなく、使途を指定し、事業が実現するところまで見届けてほしいものです。受け入れた市町村等は寄附者の想いに応えるためにも、寄附金がより有効的に活用されることを願っております。

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