「病院・施設を出て、在宅で看取り」を決断するのは難しい?

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命には限りがあるが、治療をやめる決断は難しいのが現状 出典:photoAC


加齢による機能低下や慢性疾患、がんの進行など、原因はさまざまですが、誰にでもいつかは「医療処置ができない時期」がやってきます。医療技術を用いても完治させることが難しく、急速に、または緩やかに、最期へと向かっていく時期です。

入院や通院をされている場合、この時期になると医師から家族の方に、看取りについての説明が行われます。看取りとは、本来は「病人のそばにいて世話をする」「死期まで見守る」という意味でしたが、近年は少しずつ意味合いが変化してきました。最近では「人生の最期に対して行う緩和ケアや介護」も含めた言葉として使われることが多くなっていると感じます。看取りについて主治医から話をされるということは、最期に向けて準備や話し合いを進めてほしいという意味合いも含まれます。

少し前までは、最期を過ごす場所に病院や施設を選ばれる方が大半でした。しかし最近では医療や介護を自宅でも受けられる環境が整ったこともあり、最期を自宅で過ごす方も増えてきました。一方で、すでに病院や施設で過ごされてる場合、スムーズに自宅に戻り、在宅での看取りの時期へと移行できないこともあります。

一番大きな要因は、最期のときを迎えることに対する受け入れです。私たちは心のどこかで、最期のときは来ないかのように構えているのかもしれません。例え効果があまり期待できないと言われた治療法であっても、続けていれば少し改善に向かうのではないかと信じたいものです。医師に効果がないと言われても、藁にもすがる思いで治療を受け続ける方も少なくありません。治療を諦めることは、決して強制されることではありません。しかし、医療には限界があります。ある一定の時期で受け入れなければなりません。その時期に納得をするタイミングの難しさが、自宅での看取りを阻む要因の一つになっているとも感じます。
 

家族と在宅サービスとの連携は必須・避けるべきコミュニケーション不足

看取りの時期へ移行して、生活の場を病院から自宅に移す際、体の状況に応じて在宅サービスを利用することになります。医師や看護師が自宅に訪問する往診や訪問看護、身の回りの援助や食事介助をする訪問介護など、様々なサービスがあります。病名に応じて医療保険、介護保険を使い、自宅での療養生活のサポートが受けられます。それぞれの専門家が介入してくれ、困ったときには相談に乗ってもらうことができます。

しかし、本人や家族、サービス事業者との連携が上手くいかず、入院や入所をするケースも実際には少なくありません。

看取りが進む中では、様々な体の症状が現れます。むせることが多くなり食事が食べられなくなったり、呼吸機能が低下し息苦しさを訴えたりと、予測をすることは困難です。その際に、苦痛を取るという目的で鼻から管を入れる経鼻経管栄養や点滴などを提案されることもあります。本人や家族が受け入れれば処置をしますが、とにかく苦痛が取れればと承諾されるご家族もあれば、逆に家族が悪化した状態に驚いて救急車を呼んでしまうこともあります。救急車を呼んだ場合、救急隊や搬送された病院は在宅での看取りの時期であるといった状況を知らないため、救命目的で人工呼吸器などの処置を施すこともあります。その場合は帰宅が困難となり、結局病院で最期を迎えられることになることもあります。延命処置や緊急時の連絡方法、家族の思いなどを各サービス事業者と共有することは、トラブルを防ぐために非常に大切です。

通常は、主治医、ケアマネージャーを中心に、家族やサービス事業者間で統一した情報共有が行われます。しかし本人の苦しい状態や辛い状態を初めて目にされたとき、ご家族が驚かれてしまうことは大いにあります。まずは主治医に、今後どのような状態が起こるか確認をしましょう。またその際にどのような連絡手段、対応策があるかの相談も事前にしておくことが大切です。

訪問看護師は主治医から指示を受けていますので、緊急の場合は訪問看護師への連絡も必要です。さらに事前に指示を受けることで、状態に応じた薬の投与もできます。痛みや吐き気、息苦しさなどがある場合は、本人にとってはとても苦痛が強くなってしまうため、主治医や看護師と相談をし、適切な薬を使用できる準備をしましょう。

訪問介護士は、体を拭いたり服を着替えたり、食事の介助など家族の介護負担を軽減してくれます。長期間介護をすることで、家族の疲労が溜まり体調を崩してしまうこともあります。看取りの段階であっても、体調が許せば外出もできます。デイサービスやショートステイなどを活用し、本人・家族双方が無理のない看取りを進めていきましょう。
 

自宅で息を引き取ったら……決して救急車は呼ばず、主治医に連絡を

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自宅で息を引き取ると異状死扱いになることも。救急車は呼ばず主治医、訪問看護師に連絡! 出典:photoAC


最期の時間を過ごす中で、徐々に時間が少なくなっていることがわかります。主治医からも数日や数週間等の余命が伝えられ、体の変化もみられます。最期を迎える前の本人の状態は、病状や個性などにより様々です。眠るように息を引き取ることもあれば、いきなり感謝の言葉を述べ息を引き取ることもあります。ですが、すべての看取りに共通しているのは、決して救急車を呼んではいけないということです。

救急車は、急病車を病院へ搬送することが仕事です。息を引き取る前に救急車を呼ばれた場合、病院に運ばれて救命措置をされます。万が一病院で救命措置を拒否すれば、自宅へ帰るように伝えられます。また、息を引き取ったあとに救急車を呼ぶと、異状死として扱われ警察が介入することが決められています。自宅で往診、訪問看護が来ていても、原則司法解剖のため安置所へ連れて行かれます。自宅で看取りを迎えるためには、自宅で最期を迎えることに承諾をした主治医が必要になります。息を引き取ったあとの死亡診断も、主治医や主治医の指示を受けた医師が行うことが必要です。

自宅で最期を迎えるための手順としては、「反応が少なくなっている」「息が弱くなっている」「顔色が変わってきた」などの変化があった場合に、主治医、訪問看護師へ連絡をします。看取りの際は、家族はご本人のそばにつき、呼吸をしていないことを確認し、再度主治医、訪問看護師へ報告をします。主治医が最後の往診を行い、死亡診断書を書きます。その時をもって、死亡と判断をされます。家族の到着を待ち、訪問看護師がエンゼルケアを行います。依頼している葬儀社で行うこともあるため、事前に確認が必要です。私は今まで100名以上の方を看取りましたが、ご家族の方と一緒にエンゼルケアを行うように心がけています。人は、最後の最後まで耳は聞こえていると言われています。家族にもいつもと同じように、話しながら接するように伝えています。

看取りを経験することは、生涯の中で多くはありません。核家族化が進む中、さらに看取りを経験する機会は減少しています。その中で今までお世話になった両親、祖父母の看取りを行うことは不安が大きいかもしれません。医療や介護サービスの向上により、多くの専門家が協力し、看取りを支えることができるようになりました。不安な気持ちを抱え込んだまま、平穏な最期を迎えることはできません。不安や悩みを吐き出し、安心をして過ごせる時間を作り、平穏な看取りを迎えましょう。

■参考・引用

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