<今回のポイント>  

「民泊で高収益の賃貸運営」の期待は外れる?

2017年ごろ、不動産業界や投資家の間では民泊解禁への「期待感」がありました。賃貸住宅の空室対策や収益性アップに役立つスキームになるかもしれないと思ったからです。しかし、2018年(平成30年)6月15日に施行された「住宅宿泊事業法」、通称「民泊新法」の内容は、解禁どころか締め付けに近い印象の強いものでした。

民泊への締め付けと受け取られている理由は大きく二つあります。

1.営業日数制限の厳しさ
民泊新法の「年間営業日数は180日以内」という制限に加えて、各自治体の“上乗せ条例”でさらに厳しい規制がかかり、民泊単独では採算が合わないことが判明。「住居専用地域の営業は平日限定」など実質的に年間60日程度しかできなくないケースも多い。

2.手続きの煩雑さ
「オンラインで届出手続き」という触れ込みだったが、実際は、役所や法務局、消防署、保健所などに何度も足を運び、20種類近くの書類を出さないと受理されないなど、意欲はあるが、手続きの途中で音を上げたケースも。

さらに、騒音やゴミ出しなどのトラブル防止、セキュリティ上の理由から、管理規約で民泊を禁止するマンションが急増しています。一般社団法人マンション管理業協会の調査(2018年2月時点)では、分譲マンション管理組合のうち80.5%が民泊禁止の方針です。

他にも、消防設備など構造設備にかかわるハードルもあります。こうした多くの壁にはばまれて民泊撤退を決めたホストが増え、家具や家電を短期間で撤去するするビジネスや、中古品処分サイトでの「民泊撤退」を謳った利用が急増したといいます。

結果として、民泊新法が施行された2018年6月15日に届出完了した民泊は、全国でわずか2,210件でした。2018年8月31日時点でも、約7,000件にとどまります(観光庁調べ)。民泊仲介最大手のサイト『Airbnb(エアビーアンドビー)』に登録されていた件数は2018年春の時点で約6万件(日本経済新聞2018年2月8日付け Airbnbインタビュー記事より)でしたから、新法施行前の10分の1程度に激減したともいえます。

 

民泊より旅館業が有望!?

現状、法規制の観点で民泊は次の3種類に分類されます。
図1.民泊の種類表組

「民泊制度ポータルサイト」(厚生労働省・国土交通省・観光庁運営)を参考に作成。
※1.旅館・ホテル営業:7㎡以上(ベッドを置く場合は9㎡以上)、簡易宿所:33㎡。ただし、宿泊者数10人未満の場合は1人当り3.3㎡ ※2.家主同居で宿泊室の面積が50㎡以下の場合は不要


期待外れともいえる新法民泊に代わって、旅館業法民泊がクローズアップされています。

もともと、旅館業の許可を取らずに「有料で継続的に住宅に宿泊させる」ことは違法です。なかには、旅館業法の中でも比較的取得しやすい「簡易宿所営業」(※)の許可を取って民泊営業をしているケースはありましたが、ほとんどは無許可の“ヤミ民泊”でした。それに対して、2014年から国家戦略特区では旅館業法の適用除外となり、民泊解禁第1弾である「特区民泊」がスタートしました。今回の民泊新法で、特区以外の全国でも民泊営業が可能になったわけです。
 

※ 旅館業法では、昨年まで「ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の4種類に分けられていた。ホテル営業は1棟10室以上、旅館営業は1棟5室以上という最低客室数規制が、簡易宿所はなかったため、開業しやすかった面がある。


ただ、民泊新法は「180日以内」という営業日数の制限がある上に手続きが煩雑という実情が明らかになりました。かといって、営業日数制限のない特区民泊は東京都大田区や大阪市など、地域が限られています。そのため、民泊ニーズのある場所で収益性を高めたいという志向が強い不動産投資家の間で、多少規制が厳しくても「正面から旅館業に取り組んだほうがいいのでは」という考え方が出てきたわけです。

民泊新法の創設と並行して旅館業法も改正され、以下のような規制緩和が行われました(2017年12月8日改正、2018年6月15日施行)。
・旅館営業とホテル営業の区分がなくなり、「旅館・ホテル営業」に統合
・最低客室数(ホテル=10室以上、旅館=5室以上)」の基準を撤廃
・構造設備の要件を緩和
・玄関帳場(フロント)の設置義務緩和(緊急時の駆け付け、ビデオカメラによる本人確認などが条件)

これにより、以前に比べて旅館業も始めやすくなったわけです。賃貸マンションやアパートとして建てられた建物をホテル・旅館にコンバージョン(用途転換)するのはハードルが高いのですが、その逆は難しくありません。旅館として東京五輪まで営業して、宿泊需要が衰えたら賃貸マンションに戻せるように設計しておくというプランも耳にします。


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