資産運用/資産運用の注意点とリスク

先物取引の仕組みとは?メリットやリスクを理解しよう!

先物取引という言葉は知っていても、具体的な仕組みがわかるという人は、投資経験者でもそれほど多くないのではないでしょうか。ここでは、先物取引の基本的な仕組みから、メリットやリスク、レバレッジや空売りとの関係、税金に関することまで疑問が出やすいところをわかりやすく説明していきます。

執筆者:All About 編集部

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・先物取引の特徴とは?
・先物取引のメリットとは?
・先物取引とレバレッジ
・先物取引と空売り
・先物取引のリスクとは?
・先物取引にかかる税金にも注意


 

先物取引とは?特徴をまずは理解しよう

先物取引(futures contract)の仕組みとは?

先物取引(futures contract)の仕組みとは?

先物取引とは、売り手と買い手が「ある特定の物」を「その時点で取り決めた価格」で「将来の決められた日(期日)」に、売買することを約束する取引のことを指します。先物取引の対象は、株式、商品、指数などさまざまです。

簡単にいうと先物取引は、

・株や商品などを
・今の価格で
・将来買う約束をする


ことになります。

■先物取引の例
先物取引の仕組みを具体的な例で見ていきましょう。若手サラリーマンAさんは、有望なロボット技術の開発が目前に迫っている企業の株価が必ず来年上がるだろうと思っています。しかし、今、その銘柄を買う資金がありません。次の冬のボーナスが入ったときに買おうと決意したとします。現在の値段は20万円ですが、株価は相場変動の影響を受けるので、実際の購入時には値上がりしてしまう可能性があります。そこで先物取引を活用し、現在の値段で冬のボーナス日に受け取る契約を結べば、購入日(期日)が来たときに株価が上がっていたとしても、その価格よりも安く買うことができます。仮に20万円の株価が、購入時には25万円になっていたとしても、あらかじめ約束していた20万円の支払いで済むということです。

では逆に、購入時に株価が20万円よりも値下がっていたとしたらどうでしょう。この場合も、あらかじめ約束していた金額で購入しなければならないので、損をしたことになります。しかしAさんとしては、元々20万円で購入することを決めていたので、想定していた金額で欲しいものを入手できたことに変わりはありません。実際に入手するときに大きく値上がりしてしまうリスクを避けられたので、先物取引の利用によってリスクヘッジができたことになります。
 
先物取引の基本的な仕組みの例

先物取引の基本的な仕組みの例


このように、先物取引はあらかじめ決めた金額で売買することによって、先々の価格上昇に対するリスクヘッジができるのが最大の特徴なのです。

 

先物取引のメリットは大きく2つある

先物取引には大きく分けて二つのメリットがあります。
まず一つ目は投資効率の良さです。株式の現物取引とは異なり、少額の資金で大きな利益を得られる仕組みとなっているからです。通常の株式取引の場合、20万円の株式を買おうとすると原則20万円が必要になります。一方で、先物取引では「証拠金」と呼ばれる担保を少額差し入れて取引を行えるため、元手となる資金が少なくて済みます。そして、レバレッジ効果により少額の資金をより大きな額で運用できることから、資金効率の良い運用が可能になります。

二つ目は、商品の売買を「買い」だけでなく「売り」からもスタートできるところです。先物取引は価格変動に対するリスクヘッジだけでなく、価格変動を利用して利益を得ることもできます。価格が上がると予想して安い価格で買い、購入額より高い価格で売却すると利益がでますし、逆に、価格が下がると予想したときは売りから入り、期日に価格が下がっていれば、利益を出すことができます。取引時点で現物を持っていなくても売りから入れる、つまり「空売り」ができるのがメリットです。

■先物取引のメリット
メリット 仕組み
少額の元手で運用 証拠金があれば、証拠金の○倍の運用が可能になる
現物がなくても先に売れる 先に売る約束をして、期日までに売りより安い価格で買えれば利益を出せる

これら二つのメリットのポイントとなる「レバレッジ」と「空売り」について、引き続き解説をしていきます。

 

先物取引とレバレッジ

レバレッジとはそもそも「テコ」のことを指し、少しの力で大きな作用が生み出せるテコのように、少額の証拠金に対してより大きな額の運用を可能にする様子を示したものです。レバレッジは「証拠金の何倍で取引をしているか」という取引倍率の目安で、たとえばレバレッジ10倍なら、証拠金の10倍の額の取引ができるということになります。前項で解説したとおり、少額の資金で大きな投資ができるというのは、このレバレッジのなせる業なのです。

 

先物取引と空売り

空売りとは、現物を所持していないのに対象物を売ることを意味します。通常の現物取引では、現物無しには取引を行うことはできません。しかし、先物取引であればそれが可能になります。そもそも先物取引では、「あらかじめ契約して決めておいた価格で期日に取引する」ことが行われています。そのため、現時点で現物を持っていなくても売ることが可能であり、契約で決めた期日までに用意することができれば問題ありません。このような、現物を持っていない時点で売ることができるという点は、通常の投資にはない特徴といえます。

では、空売りを実際の例で見ていきましょう。例えば、株価が5000円のときに100株を空売りし、その後株価が4000円になったときに100株買い戻すと、40万円(4000円×100株)で買って、50万円(5000円×100株)で売ったことになるので、その差額の10万円の利益を得ることができます。ただし、売りをした後に株価が上がってしまった場合には、売った値段よりも高い値段で買い戻すことになるので、その差額分の損失が発生することになります。
 
空売りの基本的な仕組みの例

空売りの基本的な仕組みの例

 

先物取引におけるレバレッジリスクと期日リスク

先物取引をする際にはリスクも知っておかなければなりません。まず、株式の現物取引等と比べるとハイリスクである点には注意が必要です。さまざまなリスク要因がありますが、最大のリスクはレバレッジです。先々の読みが当たるかどうか次第で、レバレッジは少額の資金で大きな利益を上げるチャンスにもなれば、大きな損失を生む要因にもなるのです。これを「レバレッジリスク」と言います。相場の見通しが外れて損失が拡大することも考えた上で、あらかじめ多めの資金を準備しておいたり、レバレッジ設定を見直すなど適切な運用を行うことが大切です。

もう一つのリスクは、期日の存在です。先物取引は期日が設定されており、期日までに利益を出せないと期日に大きな損失を被ることになります。たとえば、レバレッジ10倍で100万円の資金を投入して1年後に金の購入をする約束をした場合、値下がりが続き、売りができず1年経過したら、期日には約束通りに金を購入しなければなりません。さらに、レバレッジ10倍ということは、100万円の資金に対し実際の約束額は10倍、つまり1000万円が必要になるということ。よって、的確な見通しをすること、そして期日までに利益を得ることができる価格と期日の設定を目指す必要があります。先物取引はハイリスク・ハイリターンという性質であることを理解しましょう。

■先物取引のリスク
リスク リスクの内容
レバレッジリスク 読みが外れて大きな損失を被る可能性がある
取引期日の存在 期日までに利益を出せないと大きな損失を被る可能性がある
 

先物取引にかかる税金にも注意が必要

先物取引で意外と気を付けなければならないのが、取引にかかる税金の存在。株式取引とは課税方法が異なるので、確認しておきましょう。まず、先物取引で得た利益は「先物取引に係る雑所得等の金額」として申告分離課税となり、税率は一律20.315%(所得税15.315%、地方税5%)になります。所得税には復興特別所得税(0.315%)が含まれています。また、先物取引では金融機関が納税手続きを行ってくれる「特定口座」は利用できないので、利益が出た場合は自分で確定申告をしなければいけないことにも注意が必要です。詳細は所轄の税務署へ確認し、間違いのない確定申告をしましょう。

 

先物取引はメリットとデメリットの両方を知ることが重要

一見わかりづらい先物取引ですが、実際にはそれほど複雑なものではありません。先物取引はレバレッジ効果が高く空売りもできるなど、株式の現物取引とは違うメリットがあります。しかし一方で、レバレッジや期日によるリスクも存在し、大きな利益を得ることもあれば損失を出す可能性もあります。先物取引の長所も短所も熟知して、先物取引を上手に活用するようにしましょう。

(監修:酒井富士子/経済ジャーナリスト・オールアバウトマネーガイド)

※投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、御自身の責任でお願いします。

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