運動と健康

足の裏が痛い足底腱膜炎とは…インソールの前に靴選び

足の裏に痛みが起こる「足底腱膜炎」。インソールを使用した保存療法や体外衝撃波による治療法などがありますが、日常的に足底腱膜への負担を軽減できるよう、適切な靴選びをすることもとても大切です。足底腱膜炎の原因の見極め方・セルフチェック法と靴の選び方のポイントを解説します。

村山 孝太郎

執筆者:村山 孝太郎

足と靴の健康ガイド

足の裏が痛いのは「足底腱膜炎(そくていけんまくえん)」が原因のことも

足の裏が痛い足底腱膜炎

足の裏が痛い原因は様々ですが、足底腱膜炎の場合、靴のインソールを工夫することも有効です


足の裏の痛みで病院を受診し、「足底腱膜炎(そくていきんまくえん)」と診断されて、相談にいらっしゃる方が増えています。

足の裏の痛みは、足を着くたびに痛みが走るため、歩いている間ずっと痛みを感じる方も少なくありません。たとえ小さな痛みであっても、早く治したいと思われるでしょう。足の裏の痛みを軽減・改善するために、日常的に靴でできる予防法・対処法をご紹介します。
 

足底腱膜はどの部分か・その役割

そもそも「足底腱膜」とはどの部分でしょうか。『解剖学講義』では、「足底では、厚い皮膚の下で浅筋膜が前面を覆っている。筋膜は中央部で著しく飛行士、強い縦走繊維からなり、足底腱膜を作る」と説明されています。また、『日本人体解剖学上巻19版』では、「足底腱膜は、足の筋膜の底側面の浅葉」と紹介されています。

つまり、「腱膜」という名前がついているものの、本当は「筋膜」という筋肉を包む結合組織の仲間なのです。それが中央部分で厚くなり、強い繊維を持つようになったもののことを「足底腱膜」と言います。

足は体重を支える必要があるため、強く連結しながら、歩いたり走ったりするための可動性と、地面に着くときに受ける衝撃を緩和して吸収するための弾力性が必要です。それらをかなえる構造として、足全体が弓状に湾曲したアーチ構造をしています。足底腱膜は、このアーチを補強し、支持するのに重要な役割を果たしています。歩く際には緊張して足を安定させる役割もあります。
 

足底腱膜炎の治し方・インソールや体外衝撃波による治療法

足底腱膜炎の治療法は、これまでは基本的に保存療法としてインソールが用いられており、難治性の場合には外科的療法が行われてきました。

最近では体外衝撃波を用いた治療が普及し始め、2012年から保険適用となりましたが、行っている施設がまだ少ないのが残念なことろです。

また、これは私の鍼灸師としての経験からですが、足底腱膜炎と診断された方には、鍼による施術も良い効果を上げることが多いと感じます。
 

足底腱膜炎の原因にもなる足底腱膜と相性の悪い靴

このように、足底腱膜炎にはインソールによる保存的治療法や、体外衝撃波による治療法などの有効な対処法があるものの、足底腱膜炎になったということは、日常的に足底腱膜に負担がかかってしまっていると考えるべきでしょう。負担を少しでも軽減して、足底腱膜炎の痛みを予防・緩和するためにも、日常的に履く靴の選び方は非常に重要です。

まずは、足底腱膜に負担をかけやすい靴の特徴を押さえておきましょう。

足底腱膜の役割で解説しましたが、足底腱膜は足を支える役割を担っていて、特に歩く際には足を安定させるために緊張するという性質上、安定感の悪い靴は足底腱膜の負担を増やすことになってしまいます。
 
また、足底腱膜が支えるアーチは、衝撃吸収するという働きがあることから、衝撃吸収力の低い靴も、負担を増やしてしまうと言えます。革底など固めの素材であっても、厚みがある場合はまだよく、ヒールもぺったんこでソールも薄い靴の方が痛みを訴える人が多いと感じます。
 
もう一つ、靴には足を保護して支えるという働きがありますが、足と靴のサイズが合っていない場合や、木型の設計と足が合っていない場合などは、靴がアーチを全くサポートしてくれないことがあります。すると、せっかく靴を履いているのに、足底腱膜の負担は軽減されず、場合によっては増えてしまうことがあります。根本的に合っていない靴を履いている場合、インソールなどを使用しても足の負担を軽減しきれないことがあるのです。
 

治らない足底腱膜炎による足裏の痛みに……原因のセルフチェックと靴選びのポイント

足裏が痛く、足底腱膜炎と診断された方が来られた時、私はいつも、足底腱膜に負担がかかっているのはいつなのか、どういう状況で、どのような種類の負担なのかという原因をはっきりさせることをとても大切にしています。足への負担が大きくなっている状況を探し、足底腱膜への負担が軽減することは、適切な治療をする上でも有効です。足に負担のかかりやすい状況の確認ポイントをいくつか紹介したいと思いますので、足底腱膜炎でお困りの方はまずはセルフチェックをして、ご自分に当てはまるものがないか考えてみてください。
 
■日常的に履く靴の種類に変化はなかったか
初めに確認したいのは、痛みが出る前の半年以内に、履く靴のタイプに変化がなかったかということです。例えば、「仕事で安全靴を履くことになった」とか「部署が変わってヒールを履かなくてはならない時間が急に増えた」といったことです。そういった変化が、足裏に痛みが出始めた半年以内にあった場合、その靴との相性の悪さが原因だと疑われます。
 
■一日の歩行距離・時間が長くないか、長距離歩行時に履いている靴は何か
次に、一日どのくらいの距離または時間を歩くかということと、一番長く歩くときに履いている靴の種類を思い出してみてください。歩行距離や歩行時間が多い人は、歩行時の靴を見直してみる必要があります。サイズ、足への負担、安定性など、長く歩くのに適しているかを考え、もしも足への負担が大きい靴を履いていると感じた場合は、足のためにも履く靴のタイプを変更することをおすすめします。
 
あまり歩かないからといって靴の影響が関係が無いわけではありません。デスクワークが中心で一日に歩く時間も距離も短い方も、休日などに長時間歩くことはありませんか? 日常的な歩行距離が短いと、筋力が弱ってきます。筋力が弱っているのにたまにたくさん歩くという場合、長時間歩くことに筋肉が耐えられず活動が弱くなります。足底腱膜の役割に、歩行時の足の安定がありましたが、これは筋肉の役割でもあります。つまり、筋肉が活動しない分、足を安定させるための足底腱膜の負担が増してしまうのです。ですから、まれにでも長時間歩く場合は、そのときに履く靴が重要になります。

たまに長時間歩く場合には、足に合っていて足を適度にサポートしている靴、ヒールが大きめで安定感のある靴などを履くことで、足底腱膜の負担を軽減してあげましょう。もしも安定性の低い靴、足に合っていない靴を履いてしまうことが多い場合、足底腱膜炎のきっかけになってしまうことがあります。
 
■登山やスキーなどのレジャーをしなかったか
登山やスキーをしませんでしたか? O脚気味で、いつも足の外側で立つクセがある人にとって、きちんと足を固定するブーツは足裏への負担が増すきっかけになります。O脚や、捻挫ぐせがあるなど、普段足の外側で立っている人は、日常的にアーチを使っていないことが多いです。一方で、足首の上まで隠れる登山靴できっちりと紐を結ぶと、強制的に足裏全体で接地させられます。スキーブーツも同様で、普段使っていない足の裏の内側にも体重が掛かるようになります。その結果、普段使われることがなく弱っているアーチを使うことになり、足底腱膜への負担が急に増加して痛みを起こすきっかけになっていることがあります。
 
■普段履かないサンダルやブーツを履かなかったか
サンダルやブーツがきっかけになる人もいます。サンダルは普通の靴と異なり、アッパーのパーツが少ないため、足を支える力が弱いです。ですから、普段余りあるか無い人が、休日にサンダルでたくさん歩くことも、先に紹介した場合と同様に足底腱膜への負担が増えてしまいます。また、アッパーのパーツが少ないため、靴に比べて伸びてしまいやすく、ますます足の支えとしての働きが期待できない状態で履いている場合があります。
 
ブーツは、普通の靴よりもゆったりとした木型で作られている場合がありますが、ブーツは足首やもっと上の方まであるため、踵や足部が緩くても履けてしまうことがあります。とはいえ、緩い靴では足自体は支えられているわけではなく、足底腱膜を助けてはくれません。このように、緩い状態や支えの少ない状態で靴を履いていた記憶があるようでしたら、そのことがきっかけになっているかもしれません。
 

おわりに

今現在足裏に痛みがあるのに、足底腱膜への負担が増える靴を履いていると考えられる場合、安定感があり、足裏をサポートしてくれるような靴に変えることをおすすめします。靴選びの際にはぜひ、足がきちんと支えられているかどうかを確認してみてください。インソールの使用も足底腱膜への負担を軽減してくれるので、立ったり歩いたりする時間が長い人にはインソールの使用はおすすめです。

また、前は痛かったことがあるけれど、今は足裏が痛くないという人もいると思います。足底腱膜炎は痛くなったり痛く無くなったりを繰り返す人も多くいますから、今は痛みが無いとしても、日常的に足底腱膜への負担を軽減させるような靴選びをするようにするとよいと思います。

■参考文献
・『解剖学講義』伊藤隆 南山堂 1983年
・『日本人体解剖学上巻19版』 金子丑之助原著 南山堂 2000年
 
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