介護福祉士

【介護福祉士】医療的ケアで絶対押さえたいポイント

介護福祉士国家試験で出題される科目の「医療的ケア」は、第29回(平成28年度)から新たに追加されました。ここでは過去の出題を振り返りながら、その傾向と対策を紹介します。

小山 朝子

執筆者:小山 朝子

介護福祉士ガイド

医療的ケア…ポイントは「喀痰吸引」と「経管栄養」

介護福祉士国家試験において、第29回(平成28年度)から新たに追加された科目があります。そそれが「医療的ケア」です。

「介護福祉士国家試験の出題範囲等の今後の在り方について」(介護福祉士国家試験の出題範囲等の在り方に関する検討会・平成25年)によると、「介護福祉士の国家資格については、『幅広い利用者に対する基本的介護を提供できる能力を有する資格』と位置付けられており、資格取得段階で利用者の状態像に応じた系統的・計画的な介護や医療職との連携等を行うための幅広い領域の知識・技能を修得し、的確な介護を実践する能力が求められている」と書かれています。

上記の「幅広い利用者」のなかには、医療が必要な利用者も含まれており、介護福祉士には、こうした利用者に対応できる知識や技能が求められているのです。

「医療的ケア」が新たに追加された第29回(平成28年度)以降のこれまでの出題内容をみると、ズバリ「喀痰吸引」と「経管栄養」、この2つの基礎知識は必ず押さえておきたいポイントとなります。
 
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家庭ではこのような吸引器を用いて吸引を行っています


「喀痰吸引」とは、痰や唾液、鼻汁などを自分の力だけでは十分に出せない場合に、介助する人が機器を使って出す手伝いをすることです。

一方、「経管栄養」とは、口から十分な食事をとれない場合に、その方の体内にチューブを挿入して栄養剤を注入し、栄養状態の維持・改善を行います。
 
この記事では過去の出題を振り返りながら、2つのポイントの基礎知識を学びます。
 

喀痰吸引…利用者にとっても介護職にとっても楽な姿勢とは

まずは、「喀痰吸引」について、どのような問題が出題されたのかを紹介します。
     
■Hさん(90歳、男性)は、介護老人福祉施設に入所中である。呼吸困難はない。ある日、Hさんがベッドに臥床しているときに、痰が口腔内にたまってきたので、介護福祉士は医師の指示どおりに痰の吸引を行うことにした。このときのHさんの姿勢として、最も適切なものを1つ選びなさい。
 
  1. 頭部を肺よりも低くした姿勢
  2. 仰臥位で顎を引いた姿勢
  3. 腹臥位で頭部を横にした姿勢
  4. ベッドに腰かけた姿勢
  5. 上半身を10~30度挙上した姿勢
 
上記は第29回(H28年度)の試験問題です。
介護福祉士が痰の吸引を行う場合の利用者の望ましい姿勢を問うています。
設問の2行目にある「臥床」とは、床につくことの意味です。
 
2の「仰臥位(ぎょうがい)」とは、上を向いて寝ている状態(忘れそうになったら「仰(ぐ)」という漢字から、「上方を見る」という意味を思い出す)のことで、3の「腹臥位(ふくがい)」とはうつぶせになった状態(忘れそうになったら「腹」という漢字から、「おなかをつけて寝ている」と連想する)のことです。
 
介護用ベッドを利用している方に対して痰の吸引を行う際には、「やや背を上げた姿勢」が望ましいとされているため、2、3は該当しません。
1は頭部を肺よりも低くした姿勢というのは、この姿勢をとることができない、もしくはこの姿勢をとることが苦痛である方もいますので該当しません。
4のベッドに腰かけた姿勢の場合、頭部や体を支えるものがなく不安定な姿勢になり、吸引の最中に後方に倒れるようなことも起こりかねません。
 
suction

吸引の際は介助用ベッドの背上げ機能を活用しましょう


よって正解は5です。「挙上」は「きょじょう」と読み、高くすること、持ち上げることの意味です。やや姿勢を持ち上げることで利用者は口が開けやすく、痰も出しやすくなります。吸引を行う介護福祉士も口の中に吸引カテーテルが入れやすい体勢です。
 

経管栄養…基礎知識をしっかりおさえよう

次は、「経管栄養」に関する出題です。
 
■経管栄養に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
 
  1. 栄養剤の栄養素は、胃から吸収される。
  2. 栄養剤の注入速度が速いと、下痢を起こすことがある。
  3. 経管栄養によって、口腔内の細菌は減少する。
  4. 経管栄養で、誤嚥を起こすことはない。
  5. 食道への栄養剤の逆流が生じることはない。
 
こちらも第29回(H28年度)の試験問題からです。

まず、経管栄養について簡単なおさらいを。経管栄養には、以下のような種類があります。
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このような「胃ろう」の利用者にも口の中のケアは怠りなく行います

  • 「胃ろう」経管栄養 
胃に小さな穴を開け、そこに取り付けられたカテーテル(管)を通して栄養剤を入れます
 
  • 「腸ろう」経管栄養
腸に小さな穴を開け、そこに取り付けられたカテーテルを通して栄養剤を入れます
 
  • 「経鼻」経管栄養
左右いずれかの鼻の穴からカテーテルを通し、食道を経て、胃に栄養剤を入れます
 
いずれの方法も口からは食べることはしませんが、口の中の清潔を保つ「口腔ケア」は必要です。
 
1について、栄養剤は胃からではなく、小腸から吸収されます。
2について、注入速度が速いと下痢や胃の内容物が食道に逆流することによる嘔吐が生じることもあります。よって、2が正解です。
3について、口から摂らないことで唾液の分泌が少なくなります。唾液には自浄作用がありますがこれが減り、口の中に細菌が増えやすくなります。
4について、「誤嚥」とは、本来口から食道へ入るべきものが気管に入ってしまうことです。経管栄養では、胃の内容物が逆流して誤嚥が起こることがあります。
5について、2で解説したとおり、逆流することがあります。
 

過去の出題数は5問、確実に正解を目指したい

「医療的ケア」に関する上記の問題、あなたは2問ともに正解できましたか?

「喀痰吸引」や「経管栄養」について、「失敗したらどうしよう」「利用者を傷つけてしまうのではないか」と不安をもつ人もいると思いますが、知識や技能を修得することで、自信をもって対応できるはずです。

第29回、第30回ともに「医療的ケア」は5問出題され、確実に正解を目指したい科目です。繰り返しになりますが、過去2年の問題を振り返り、「喀痰吸引」と「経管栄養」の基礎知識をしっかり頭に入れておきましょう!
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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