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100年前のウイスキー事情その1・スコッチ

第一次世界大戦が終わってちょうど100年が経つ。1918年頃、スコッチは大きな試練を迎えた。そしてアイリッシュもアメリカン、カナディアン、さらには日本も、大きな変革期を迎えていた。まずは第一次世界大戦とスコッチ。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

ウイスキー&バーガイド

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第一次世界大戦時、スコッチモルト、2年間蒸溜禁止


1920年代後半の現サントリー大阪工場

1920年代後半の現サントリー大阪工場

昨年(2017年)はじめに『ティーチャーズの歩みから探るブレンデッドの歴史6』を掲載し、つづいてウイスキー裁判に関する記事を2つ(関連記事参照)掲載した。
これらは20世紀初頭のスコッチウイスキーやアイリッシュウイスキーの状況を述べたもので、掲載からしばらくして読者の方から「混沌とした時代を迎えた、と書かれているが、その後のことも知りたい。教えて欲しい」との声をいただいた。随分と間が空いてしまったが、あらためて、かつての記事のつづきをしよう。ウイスキーの歴史はなかなかに面白い。
ことしは第一次世界大戦(1914~1918)終戦からちょうど100年。そのあたりの年代から話をすすめよう。ウイスキー史上、最も厳しい変動期であった。そのとき、歴史は動いた、のである。

第一次世界大戦は長引いた。スコッチの酒類業界にとっても予想外であっただろう。食料穀物を原料とする酒類の生産制限が厳しくなるとともに、戦争ヒステリーにより禁酒運動が盛り上がる。増税の気運も高まっていく。
大戦勃発時の1914年、スコッチのモルト蒸溜所は133。翌年には20もの蒸溜所が操業を停止した。この1915年、ウイスキーの市場流通量を減らすために2年以上の貯蔵が義務づけられる。そして翌16年には3年以上に改定された。
つまりスコッチの最低樽貯蔵年数が定められたのは100年ほど前のことになる。20世紀に入ってからのこと。それまでは玉石混淆だったのである。
3年以上の樽熟成とともにモルト蒸溜所は生産量を過去5年間の70%に制限され、グレーンウイスキー蒸溜所は工業用アルコール製造へと転換させられて軍需工場化してしまう。
最低熟成年数の規定、生産量制限が重なり、モルトウイスキーの価格は記録的な高騰となる。
1917年。最悪の事態となる。ついに単式蒸溜器によるすべての蒸溜が禁止されてしまう。製品出荷量は1/2に制限。しかも禁止は2年間におよんだ。

禁酒法のアメリカ、モルトウイスキー製造前夜の日本


赤玉ポートワイン

赤玉ポートワイン

1918年11月、ちょうど100年前。第一次世界大戦が終わる。翌19年、蒸溜禁止が解除されたとき、スコッチのモルト蒸溜所で稼働できたのは86蒸溜所だった。
ビールをはじめ、さまざまな酒類が規制を受けたが、ウイスキーは最も厳しいものだった。
同じ頃、アメリカの1917年。憲法修正18条が提出され、議会を通過。1919年1月16日、修正条項が成立した。
1年後の1920年1月16日。アメリカは禁酒法施行。1933年までつづいた。
さて、日本。本格ウイスキーはまだつくられていない。イミテーションの時代だった。この時代、寿屋創業者(現サントリー)である鳥井信治郎がモルトウイスキー蒸溜所建設に執念を燃やしていた。
好調をつづける甘味葡萄酒「赤玉ポートワイン」(1907年発売/現・赤玉スイートワイン)の利益をすべてウイスキー事業に投資する決意を固めつつあった。
まず1919年(大正8)、近代的な大工場、築港工場を建設。主力の「赤玉」だけでなく、スピリッツやリキュール類などの製造もおこなう一大生産拠点をつくった。そしてここが、やがて山崎蒸溜所(1923年創業)が生みだすモルトウイスキーとブレンドされることになるグレーンウイスキーを製造(現在グレーンウイスキー製造の主力は知多蒸溜所)することになる。
築港工場は、現在のサントリー大阪工場である。来年100周年を迎える大阪工場は、いまクラフトジン「ROKU」をはじめ、さまざまなスピリッツ、リキュールの人気ブランドを生産しつづけている。

では次回からは、この時代のアイリッシュ、今回少し触れたアメリカ、さらにはカナダ、そして日本の状況をもっと語ってみたい。(その2・アイリッシュへ

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