亀山早苗の恋愛コラム

ポリアモリーという生き方―好きな人が複数いる夫婦

複数を好きになってしまう「ポリアモリー」という生き方を実践している人たちがいる。彼ら彼女らの考え方を聞くと、「人はなぜ1対1の関係がベストだと思っているのか」がわからなくなってくる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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好きな人が1人じゃない「ポリアモリー(複数愛)」って?

夫婦でありながら、相手の恋愛を許し合う夫婦のカタチも。

夫婦でありながら、相手の恋愛を許し合う夫婦のカタチも。

『わたし、恋人が2人います。―ポリアモリー(複数愛)という生き方―』(WAVE出版)という本が出版された。著者は30代前半のきのコさん。大学時代に自分が恋愛において、相手をひとりと決めるのではなく、複数を好きになってしまうポリアモリーだと自覚したという。

ポリアモリーの定義としては、複数の人と同時に、それぞれが合意の上で性愛関係を築くライフスタイルのことである。

きのコさんとは会って話したこともあるが、一緒に住んでいる人がいても他に好きな人ができると「恋人」としてつきあうのだという。そこに優先順位はないらしい。

ただ、ルールとしては、前からの恋人にも新しい恋人にも、自分がポリアモリーであると伝えておくことが重要。つまり、「隠しておくこと」が大前提の浮気や不倫とは違うのである。

この本には、きのコさんの恋愛模様が綴られ、またポリアモリー実践者として、1対1の関係を信じてやまないモノガミーからの疑問にも答えている。

恋愛の指向として、「誰かひとりには決められない」という人たちは決して少なくないのではないだろうか。


配偶者の恋愛を、自分の幸せと感じる人たちもいる

知り合いに、こうした複数愛を実践している夫婦がいる。彼らはポリアモリーという言葉を知らないかもしれないし、自分たちが実践者だとも思っていないかもしれない。

ケイコさん(45歳)とジュンさん(55歳)は再婚同士で、一緒になって4年がたつ。ふたりとも自身の「不倫」で前の結婚が破局となった。そんなふたりだから会ってすぐに意気投合、一緒になった。

再婚して半年ほどで、ケイコさんに好きな人ができた。彼女はジュンさんにすぐ相談。ジュンさんは「好きならアプローチしたほうがいい」とアドバイスしたという。

その後、ケイコさんはその彼と初めてのデートにこぎつける。そして自分が結婚していること、夫もこの恋を知っていることを彼に話した。

「彼は非常に面食らっていました。どういうことかわからない、と。だから私と夫はそれぞれが恋をすることを容認している。容認どころかどんな恋をしているのかまで話すと思うと説明したんです。そうしたら彼は『わざわざ三角関係にはなりたくない』って。そうじゃないと言ってもわかってもらえなかった」

この恋はあっけなく幕を閉じた。だがケイコさんはめげなかった。

しばらくして彼女にまた好きな人ができた。好きな人ができると、夫に話さずにはいられない。なぜなら夫も喜んでくれるからだ。
夫のジュンさんは、「彼女が幸せそうに顔を紅潮させて好きな人のことを話しているのを見るのが好き」なのだという。妻の悦びは自分の悦びでもある、と。
次の恋は無事に進んだ。既婚者である相手は「自分は妻には話せない」と言ったが、ケイコさんはそれを理解した上で恋をはじめた。
「このときのケイコは幸せそうでした。そんな彼女を見るのは楽しかった」
ジュンさんはそう言う。彼はよくケイコさんのデート現場へ車で送っていった。恋人を見つけて走っていく妻を彼は笑顔で見送る。ケイコさんが恋をしたからといって、ジュンさんとケイコさんの関係が変わるわけではない。お互いに信頼関係があるからだ。

それでも……と意地悪な質問をしたことがある。
「ケイコさんがもしジュンさんと別れて、別の人と結婚したいと言い出したら?」
するとジュンさんは真剣な表情で答えた。
「彼女がそれを望むなら、僕は潔く身を引く。ただ、彼女のことだからそっちと結婚して僕とは恋人でいたいと言い出すような気もする」

その話をケイコさんにぶつけてみた。
「夫はやはり私のことをわかっていますよね。だから夫とは別れらない」
ケイコさんの恋は、もちろん肉体関係にもおよぶ。そして恋のさなかでも夫ともセックスはしている。
「彼とのセックスと、夫とのセックスは別だから。夫とは、彼とどんなセックスをしたかも話している。彼は聞きたがらないので話しませんが」
夫が恋したこともある。夫は恋人を妻に会わせた。妻は夫の恋人と仲良くしたかったが、恋人はそれを拒否。結局、夫の恋は長続きしなかったという。

どういう生き方であっても認め合う世の中に

一対一ではない恋愛もある?

一対一ではない恋愛もある?


複数の人を愛し、それを隠さないというのは、「公には1対1の関係が当たり前」とされる現在、生きづらさがあると思う。ポリアモリーの人たちは「正直で誠実だ」というのが個人的な実感である。

私たちの周りでは「不倫関係」が至るところで散見される。世間的にはひとりしか愛してはいけないことになっているから、「誠実さ」と反する分、恋人や配偶者の目を盗んで背徳行為を行うエロティックさがある。だからこそ不倫は燃えるのだろう。

一方、ポリアモリーの人たちは最初から「自分は複数を愛します」と相手に告げる。だから、隠れてこそこそする必要はない。「誠実」な分、背徳感はなくなるので、エロスは減少する……ような気がする。

ポリアモリーであるとカミングアウトする人たちはまだ少数だ。だが、こういう考え方、こういう恋愛指向もあると知っておくと、自身の恋愛を考える上で大きな参考になるのではないかと思う。そしてどんな生き方であっても、認めあいたいものだとつくづく感じる。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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