ストレス

セクハラ加害者の心理とは…無自覚な行為がセクハラになることも

【公認心理師が解説】セクハラは、大きく「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の2種類に分けられます。多くの場合、加害者にはセクハラの意識がありません。セクハラについて理解を深めて、無自覚の言動がセクハラ行為になっていないかを考えてみましょう。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

<目次>
 

加害者が無自覚なことが多い…… セクハラと疑われそうな行為はしないこと

セクハラ加害者の心理とは…無自覚な行為がセクハラになることも

加害者にセクハラの認識はなくても、受け手の感じ方を否定することはできない


職場のセクハラは、受けた本人がどう感じているのかが重視されます。公的にセクハラかどうかの判断をするには事実関係の確認と調査が必要になりますが、そのような大きな問題になる前に、他人に誤解を与えるような行為をしないことがまずは重要です。

加害者にセクハラの認識はなくても、受け手がそれをセクハラだと感じた場合、受け手の感じ方を否定することはできないものです。人の気持ちは十人十色。どこからがセクハラと言われるのか、線引きは難しいものです。したがって、まずはセクハラと疑われそうな行為はしないことが大切なのです。
 

「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の違い

男女雇用機会均等法にもとづく指針によると、職場のセクハラには「対価型」と「環境型」の2種類があります。

■対価型セクハラ
相手の嫌がるセクハラ行為を行い、拒否・抵抗されたことの対価として、解雇・労働契約の更新拒否などの不利益を与えることです。たとえば、非正規職員として採用された人が人事権を持つ上司に交際を迫られ、それを断った後に上司の態度が冷たくなり、翌年度の労働契約を更新してもらえなかった。このような場合は、対価型セクハラになります。

■環境型セクハラ
セクハラの言動を受けて就業環境が不快なものになり、働く上で看過できないほどの支障が生じるものです。たとえば、体をじろじろ見られるのが不快で、出勤するのが苦痛になる。職場で性的な話題が出るので、仕事に集中できない。こういった場合は、環境型セクハラになります。
 

無意識にセクハラを行う人が持つ3つの認識の甘さ

近年では「Me Too運動」などの影響もあり、セクハラ防止の意識は年々高まっているように感じますが、それでも、セクハラの被害の報告はいくつも出てきます。いったいなぜなのでしょう? これには、次のような加害者のセクハラ認識の甘さが影響しています。

1. セクハラの知識がアップデートされていない
セクハラの範囲は時代と共に変化します。猥談や胸やお尻に触るなどの行為だけがセクハラだと認識していると、その感覚は古いといわざるを得ません。

たとえば、人の容姿について評価すると、今の時代、セクハラと言われてしまいます。それがほめ言葉だとしても(美人だね、かわいいね、など)、「容姿は仕事に関係ないはずだ」と感じている人が多いのです。

また、「女性だから女らしくすべき」「男性だから男らしい仕事を」というように、偏見から他人を批評することも、セクハラにつながります。これを「ジェンダーハラスメント」といい、セクハラを生み出す意識として問題視されています。

2. 無意識に自分の優位性を悪用してしまう
セクハラは、加害者の優位性を悪用できる行為であるため、同時に「パワハラ」になることもあります。

たとえば、上司が話す性的な冗談に不快だと言えない雰囲気があれば、上司は自分のパワーを悪用して「環境型セクハラ」をしていることになります。また、権威ある人からの個人的な誘いを断りきれない場合、パワハラと「対価型セクハラ」がセットになっていると考えられます。

3. 恋愛感情から生じるセクハラに気づいていない
人を好きになると相手に近づきたい、自分の思いをわかってもらいたいという思いが生じます。この思いからしつこく食事の誘いをしたりすると、セクハラになってしまいます。

相手を好きだからこその熱心な行動が、相手にとっての迷惑行為になることもあるので、気をつけたいものです。
 

セクハラの加害者にならないために……職場は公的な場所と再認識を

行為に性的な含みがあるかどうか、常に客観的な視点で自らの言動を振り返ることが必要

行為に性的な含みがあるかどうか、常に客観的な視点で自らの言動を振り返ることが必要



加害者の多くは、意図的にセクハラをしているわけではありません。上のように、無自覚のうちにセクハラを行ってしまうケースが多いのです。

先ほど、加害者にならないためには、セクハラと疑われそうな行為はしないことが重要であるとお伝えしました。しかし、この認識だけでは、具体的に何に気をつけたらいいのか分からないかもしれません。

そこで、私はよく「先生が生徒に対して行ったら『不快だ』『おかしい』と言われそうなことは、職場でも同様にしないように」と勧めてます。たとえば、先生が次のようなことをしたら、生徒たちにどう思われるでしょう?

・一部の異性の生徒にだけ、やたらと親しく話しかける
・あいさつ代わりに、やたらと異性の生徒の体に触る
・「スタイルがいい」「ブサイク」などと、生徒の見た目を批評する
・「付き合ってる人いるの?」「好きなタイプは?」などと生徒の交際について質問する
・「嫁のもらい手もないよ」「女の腐ったような奴だ」といった言い方をする

上のような言動を受けると、その言動に性的な含みを覚え、信頼することができなくなるでしょう。職場も公的な場所ですので、同様に気をつけなければなりません。

職場では、すべての人の人権が尊重される必要があります。安全が脅かされるような環境、職務を妨害するような環境であってはなりません

繰り返しますが、セクハラは無自覚に行われることの多い行為です。それぞれが日ごろの自分を振り返りながら、セクハラと疑われそうなことをしないように気をつけていく必要があります。

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