薫風の候、新キャストを迎えた『モーツァルト!』、笑いと愛に溢れる『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』等、様々な話題作が幕を開けます。今回も少しずつ演目をご紹介し、随時取材記事、観劇レポートを追記していきますので、どうぞお楽しみに!

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【5月の注目!ミュージカル】

『モーツァルト!』←香寿たつきさんインタビューをUP!
『アメリ』←観劇レポートをUP!
『Play a Life』←観劇レポートをUP!
『たいこどんどん』←観劇レポートをUP!
『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』 ←稽古レポートをUP!
『ソレイル ~太陽の王様~』5月29日開幕 ←今村洋一さん・清水彩花さん・宮田加奈さんインタビューをUP!
『DAY ZERO』5月31日開幕 ←上口耕平さんインタビューをUP!

【5月上映の注目舞台】
MET(メトロポリタン・オペラ)ライブビューイング『コジ・ファン・トゥッテ』


モーツァルト!

5月26日~6月28日=帝国劇場

【見どころ】
『モーツァルト!』

『モーツァルト!』

『エリザベート』で知られるミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイのコンビによるもう一つの代表作が、4年ぶりに登場。新たな楽曲を加え、舞台セットをリニューアルした最新バージョンが誕生します。

2010年から3度目の主演となる山崎育三郎さんをはじめ、涼風真世さん、香寿たつきさん、山口祐一郎さん、市村正親さんらミュージカル界の“レジェンド”たちが大挙出演するのに加え、今回は新ヴォルフガング役として古川雄大さん、その妻コンスタンツェ役に(続投の)平野綾さん、(新キャストの)生田絵梨花さん、木下晴香さん、姉ナンネール役に(新キャストとして)和音美桜さんが参加。

強力にしてフレッシュなカンパニーが、“天才”と呼ばれたモーツァルトがその才能に押しつぶされてゆく過程をどう描いてゆくか。リーヴァイの時に重厚、時にメロディアスなオリジナル曲に彩られた人間ドラマの最新版に期待が集まります。

【ヴァルトシュテッテン男爵夫人役(wキャスト)・香寿たつきさんインタビュー】
“新生”『モーツァルト!』の中で、私も原点に立ち返り、新たな男爵夫人像を模索しているところです

香寿たつきundefined北海道出身。宝塚歌劇団星組トップスターとして人気を集め、03年に退団。『天翔ける風に』『シェルブールの雨傘』『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』等のミュージカルから『コリオレイナス』『朱雀家の滅亡』『花嫁』『プライムたちの夜』等のストレイトプレイまで、多数の舞台で活躍。第35回菊田一夫演劇賞受賞。今年1月にはアルバム『Gladiolus』を発売。(C)Marino Matsushima

香寿たつき 北海道出身。宝塚歌劇団星組トップスターとして人気を集め、03年に退団。『天翔ける風に』『シェルブールの雨傘』『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』等のミュージカルから『コリオレイナス』『朱雀家の滅亡』『花嫁』『プライムたちの夜』等のストレイトプレイまで、多数の舞台で活躍。第35回菊田一夫演劇賞受賞。今年1月にはアルバム『Gladiolus』を発売。(C)Marino Matsushima

――『モーツァルト!』は香寿さんにとって、どんな演目でしょうか。

「私にとっての初出演は2005年でした。いただいたヴァルトシュテッテン男爵夫人役には「星から降る金」というナンバーがあるのですが、(宝塚)歌劇団をやめて2年目の私は、女性のキーのナンバーということで、とても緊張したのを覚えています。でもなかなか(自分に)納得できず、千穐楽では号泣してしまったほど。その後、有難いことに回を重ね、作品における役どころの重みもわかってきましたし、キーにも慣れてきました。今回は演出がちょっと変わってきた部分もありますので、もう一度クリアなところから(役に)取り組もうと思っています」

――初出演の時に“号泣”とは、どういった部分に対してでしょうか?

「思ったようにいかないといいますか、それまで宝塚で19年間、男役をやってきたなかで、これぐらいやればここまで行けると想像して(稽古を積み重ねて)きたのですが、女性を演ずるようになって、その見通しが立たなくなりまして。所作が男っぽくなってしまったりということもあったけれど、やはり一番の問題は歌のキーでしたね。

それが自分のものになった……とは思っていませんが、やっと男爵夫人のいずまい、たたずまい、台詞や歌が浸透してきたのが、2回目の出演の時でした」

――ヴァルトシュテッテン男爵夫人はヴォルフガング・モーツァルトが世に出るきっかけを与える役柄で、リアルな“男爵夫人”でありながら、どこかファンタジックな、象徴的な存在でもありますね。
『モーツァルト!』2014年帝劇公演より。写真提供:東宝演劇部

『モーツァルト!』2014年帝劇公演より。写真提供:東宝演劇部

「おっしゃるように、現実的な生身の男爵夫人の部分と“女神”的な部分があって、後者ではどこか次元の違うところからヴォルフガングを見ていなくてはいけません。それも“かちっ”と切り替わるのではなく、いつの間にかそういう存在になっていると感じていただく、というのが小池(修一郎)先生の演出のすばらしさです。

私も“ここからは天上びと”というような切り替えはせず、ヴォルフガングの才能をこよなく愛して世に知らしめたい人というベースはありつつ、モーツァルトの音楽が(何世紀も経った)今も残っていて、いかに音楽の神様に彼が愛されていたかということを意識しながら演じていますね。まだまだですが、今回はもうちょっと違ったところに行けたらと思っています」

――“女神”的な存在ということで、大きく包み込むようなオーラもあるのですね。

「この役に限らないのですが、この年代に入ってきますと、努力や頑張りはもちろん必要ですが、それを“ここまで頑張っています”と力を入れてやればいい、というものではなくなってきます。宝塚の男役のときもそうでしたが、きらびやかな衣装でもなく、羽根も背負っていない、黒燕尾を着て研一(研究科一年)から専科(特定の組に属さないスターたちのグループ)さんまでが舞台に並んだだけでも、トップさんは何かが違うのですよね。

また、今回のように、野球で言えばDH(指名打者)的なお役をいただくことも多くなってくるのですが、DHというのは、ここぞというときに“打ってください”と打席に送り出されるもので、技術はもちろん、並大抵の精神力ではつとまりません。それだけのことが要求されている中で、常に進化してる自分でありたいし、“この人、今回はこういうアプローチなんだね”と新鮮に思っていただける役者でありたい。新陳代謝の激しい世の中で、5回も同じ役をさせていただける喜びを感じながら、その都度、新たに肉付けされたものを出していきたいと思います。

そんな私にとって、宝塚の先輩である涼風(真世)さんはもちろん、市村(正親)さん、(山口)祐一郎さんをはじめ、自分より先輩で、主演もDH的なこともなさっている“レジェンド”たちとご一緒出来るこの作品は本当に宝物。毎日が勉強です」

――さきほど、今回は演出が変わるとおっしゃっていましたが、どんな部分でしょうか?

「まずはセットが変わりますので、(以前の公演を御覧になった)お客様にはすごく新鮮だと思います。小池先生は“もっとテンポよく進めていきたい”とおっしゃっていて、先生がもともと考えていらっしゃったセットが実現したそうですので、より、先生の描く世界観に近いものに進化しているのではないかと思います。転換がよりスムーズになったことで、例えば落ちているバラを従者が拾うといった、場と場をつなぐ芝居を整理して、意識が途切れることがなくなったりですとか。

今、お稽古は中盤に差し掛かったところです。以前は(再演ということで)その一つ前の公演を思い出しながらの稽古でしたが、今回はセットも変わり、新しいキャストもいらっしゃるので、御覧になる方にとっては一瞬の芝居にも、何時間もかけながら進んでいます。

私もセットが変わったことで“その段ではなくこちらに立ってください”という感じで、少しずつ、丁寧に。まだプロローグや2幕頭の「ここはウィーン」といった大勢の場面しかやっていないので、主人公の二人(山崎育三郎さん、古川雄大さん)に関してはどんな感じか見えていませんが、お二人ともスキルの高い方たちです。ちょうど今日この後、「星から降る金」のシーンの稽古が始まるので、どんな感じになるか楽しみですね」

――本作の出演を機にウィーンに行かれる出演者も多いと聞きますが、香寿さんはいかがでしょうか?
『エリザベート』(2016年)undefined写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』(2016年) 写真提供:東宝演劇部

「『エリザベート』にも関わっていますので、私も2,3度行っています。現地ではやはりオーストリアという国の歴史をひしひしと感じますね。日本という島国にいるとなかなか感じにくいのですが、(いろいろな国がひしめくヨーロッパで)オーストリアという小国が生き延びてゆく過程には、マリア・テレジアが戦争をしないようにしながら国を守ろうとしたことがあったのだなぁとか、大司教は“私のところにはこういう芸術家がいる”とモーツァルトたちを抱えることで文化的に権威を見せつけたかったのだなぁ、ですとか。

オーストリア人の気質としては、日本人と近いのか、ある意味自分を律しているといった感じでしょうか。イタリア人のような“陽気な”感じではないですね。日本は地震がある国なので仕方がないけれど、ウィーンにはモーツァルトが生きていた時代そのままの街並みが残っていてすごく感動しますね。まさにここで演奏したんだなとか、石畳も建物も、当時の絵画に描かれたものと全く同じだなと思いながら歩いていました」

――この作品の特徴として、モーツァルトが作曲した楽曲で歌うわけではなく、シルヴェスター・リーヴァイさんのオリジナル曲であるということが挙げられると思いますが、この音楽をどうとらえていらっしゃいますか?

「リーヴァイさんは(隣国の)ハンガリーのご出身で、小さい時からモーツァルトの音楽に触れ、自然に愛情も抱いていると思います。けれども本作ではそれを使うのではなく、モーツァルトの人生、音楽について、敢えてご自身が感じたことをオリジナル曲で表現されているということに、音楽家としてのリスペクトを感じます。いろんな思いがつまっているのではないでしょうか。
『モーツァルト!』2014年帝劇公演より。写真提供:東宝演劇部

『モーツァルト!』2014年帝劇公演より。写真提供:東宝演劇部

実際に歌ってみると、難しいですね。特に「星から降る金」では、(原語の)ドイツ語ではなく、日本語で歌うことの難しさを感じます。よく言われることですが、英語やドイツ語を日本語に訳すと、倍の音節が必要ですし、日本語は角角(カクカク)しているので、譜面通りのイメージにはならないんですよね。例えば“hello”とふわっと行きたいところが“こ・ん・に・ち・は”と刻まなくてはいけない、とか。「星から降る金」では逆に、サビの部分で日本語だと“よぞらの~”と歌いますが、原語ではグルングルンと音を当てるような歌詞で、言葉自体にパンチがあるんです。

『エリザベート』もそうですが、この作品は本来、ロック・ミュージカルなんだなと改めて感じますね。リーヴァイさんから“そこはもう少しこういうふうに歌ってください”とリクエストをいただいた時に、“すごくわかるけれど、日本語でそれを表現するのは高度だな”と感じることも多々あります。もっとパンっと歌いたいけど、日本語は言語的に息が漏れる言葉が多いから、力強く打ちつけたくてもできない。原語で歌ってる方たちのような力強さを出せたらと、いつも試行錯誤しています」

――例えば、日本語の特性を生かしてまた新たな男爵夫人像を作り上げるというのもアリかも……?

「ええ、これまでは自分の中でそういう役作りを考えていました。けれど、私が初めてこの作品に出会った時に得たインスピレーション通りにやろうとすると、人格的にも音楽的にも、もっとパンチが必要です。まだまだ固まっていませんが、今回はそういうアプローチもできたらいいなと思っています」

――今回の男爵夫人像、楽しみです。最後にもう一つうかがわせてください。このお役や『ラ・カージュ・オ・フォール』のジャクリーヌのような“酸いも甘いもかみ分けた”女性像を中心に、香寿さんはいろいろなタイプのお役を演じていらっしゃいます。今後こういうものもやってみたい、というものはおありでしょうか?

「何でもやらせていただきたいですが、そうですね、私はどうしても宝塚卒ということで、きれいな役どころが多いので、もうちょっと違うようなことも出来なきゃいけないなと思っています」

――昨年、『CLUB SEVEN -ZERO-』で大阪のおばちゃんをコテコテに(?!)演じていらっしゃいましたが…。(舞台写真はこちらに掲載)

「そう、そういうお役です。舞台に限らず映像を含め、そういうお役にも挑戦していって、役者としての幅を広げて行きたいなと思っています」

*次ページで『アメリ』『Play a Life』『たいこどんどん』をご紹介します!