企業のIT活用

事務職が半分になる!? RPAの波がすぐそこに

「AIによって仕事がなくなる」と言われていますが、ホワイトカラーにとってはAIよりもRPA(Robotic Process Automation)の略)の影響の方が大きく、これから単純作業が目の前から消えていく、とされています。ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)とAIは何が違うのか、RPAとはどんなものなのか、みていきましょう。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の波がオフィス現場へ

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の波がオフィス現場へ

RPAの波が皆さんの職場に近づいています。

最近、RPAという言葉をよく聞くようになりました。RPAとはロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略です。

「工場の自動生産の話か」と思う方も多いでしょうが、これは全く違い、「オフィス、つまりホワイトカラーの職場へのロボット導入」のことを指します。

「オフィスのロボット導入」と聞いて、ハウステンボスの恐竜が受付している「変なホテル」やペッパー君が受付しているようなオフィスを思い浮かべたあなた。

それも、違います。

ロボットと言ってもハードのロボットではなくソフトウェアのロボットのことを指し、事務用ロボとも呼ばれています。


例えば、皆さんがエクセルを使って報告書を作る時、毎月、各シートの特定項目を抽出し、簡単な演算をしていませんか?

月に1回行うルーチンワーク、エクセルにはマクロという機能があり、一連の動作を記録し登録しておけば翌月からはマクロを実行するだけで、このルーチンワークを自動で行ってくれます。

RPAとは、これを高度化したものになります。目的はホワイトカラー業務を効率化・自動化し、生産性を向上することにあります。

RPAとAIはどう違うのか

RPAを使うとホワイトカラー業務の自動化ができますが、これってAI(人工知能)とどう違うのでしょうか。

AIといってもいろいろなレベルがありますが、現在のAIは自己学習機能をもつ自律的存在のようなイメージで、特にディープラーニング(深層学習)が搭載されてから、そのイメージが強くなっています。

例えば「碁」であれば、たくさんの棋譜を読み込ませることでAI自身が学習し、人間の棋士を破り、プロの棋士が思いつかない手を打つようになりました。また「AI碁」同士を戦わせて、さらに強い「AI碁」を生み出しています。最初は人が介在しますが、あとはプログラミングするわけではなく、人と違った次元で進化します。

一方、RPAは昔のAI、例えばエキスパートシステム(専門家システム)に近い存在で、人間があらかじめルールを設定し、この一定のルールに従って自動化します。

外から見ると自動で業務が行われるのでAIのように見えますが、あくまでもルールは人間が設定したもので、ディープラーニングのようにAI自らが作り出すというイメージではありません。この点が、ロボットに近いために「ロボティック」という名称がついています。

RPAツールの導入も相次ぐ

RPAを導入するツールも販売されています。まだ高価ではありますが、働き方改革や人不足の影響もあり、次第に導入コストが割に合う環境ができつつあります。RPAツールの価格は無料版から1,500万円程度まで幅があり、それなりの機能をもつものは200~300万円程度と、一人分の人件費にあたります。RPAを導入して一人分以上の仕事を効率化できれば見合う、というわけです。

RPAにプログラムは必要ありませんが、各業務に最適な「シナリオ」を作成する必要があります。シナリオは作業の流れを示した命令文のようなもので、このシナリオを実行して業務を自動化します。ツールメーカーはシナリオづくりの教育プログラムも提供しています。

RPA導入で効果が上がる現場とは?

日本企業の事務作業の約半分をRPAで代替でき

日本企業の事務作業の約半分をRPAで代替できる

RPAを導入して効果があるのは「同じような作業が多い業務」です。

一例を挙げれば、「経理」が該当するでしょう。

現在のクラウド会計では、請求書を発行して銀行システムと連携し、請求先から振込があれば、請求書と照合して自動で入金消込します。RPAでは回収予定表の作成や与信管理まで一連の流れで行うことができます。また、交通費精算時にウェブの路線案内などを調べ、一番安い交通費を検索してチェックする、といった作業もRPAで自動化できます。

また、「各店舗から販売報告書がエクセルで送られてくる」という現場では共通フォーマットがあっても、入力項目がズレるなどで、どうしても手作業での転記が発生しています。こういったケースもRPAで解決できます。

他にも伝票作成、ネット上の情報収集、競合商品の売価調査など、現在の事務作業の約半分をRPAで代替えできる、とされてます。実際、NECが「全社でRPAを導入して、事務を自動化をする」と発表し、サントリーホールディングスもデータ入力など200業務で活用しています。

事務職に限れば、AIよりもRPAが脅威

我々の仕事はRPAでどう変わるのでしょうか?

RPAが目的としているのはオフィス現場での効率化・自動化です。対象となるのは経理、総務、人事、営業となります。外へ出ていく営業の仕事は自動化できませんが、営業事務は自動化が進みます。

ハローワークでの求人を見ると、有効求人倍率は1.5~1.6倍であいかわらずの人出不足ですが、事務職に限ると0.2~0.3倍で、4人に1人しか就職できない激戦になっています。「AIで仕事がなくなる」と言われていますが、事務職に限ればオフィスの効率化を進めるRPAの方がAIよりも怖い存在です。

ただし、RPAのシナリオを組める能力があれば安泰です。

現在の業務プロセスが頭に入っていて現場の説得ができ、RPAがうまくいかなくなった時のバックアップ手段まで考えられる能力あれば、今後も事務のエキスパートとして引く手あまたでしょう。

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