運動と健康

肉離れの応急手当…湿布等の処置・予防ストレッチ

【アスレティックトレーナーが解説】ランニング中に急に太ももの裏側に激しい痛みが起こったり、スポーツで体をひねった瞬間にわき腹に違和感を覚えたり……。運動中に多いケガの一つである筋損傷・いわゆる「肉離れ」かもしれません。筋肉のある部位であればどこにでも起こる可能性があり、日常生活のちょっとした動作で起こることもあります。応急処置(正確には応急手当)や予防法について解説します。

西村 典子

執筆者:西村 典子

アスレティックトレーナー / 運動と健康ガイド

肉離れとは……筋肉の伸ばしすぎによる筋繊維の損傷

ランニングをする男性

筋肉を過度に引き伸ばすことで肉離れは起こる

筋肉は筋線維が束になって構成されており、私たちの体は、この一本一本の筋線維が伸び縮みを繰り返すことで力を発揮することかできます。筋線維の伸び縮みには限界があるのですが、より多くの力を発揮しようとしてその限界を超えて伸ばしてしまうと、筋線維にキズがつき、ひどい場合は一部の連続性が断たれて切れてしまいます。これがいわゆる「肉離れ」です。運動後に起こる筋肉痛も同じメカニズムですが、肉離れのほうがより筋線維の損傷レベルが大きいと言えるでしょう。

肉離れは、太ももの裏側のハムストリングスを始め、太ももの前側、ふくらはぎ、腕、わき腹などさまざまな部位でみられます。特に太ももの肉離れの場合、「走っているときにブチっと音がした」「急に力が入らなくなった」等、比較的わかりやすい状態でアクシデントが起こります。
 

肉離れの予兆・前兆……筋肉のつっぱり・違和感に注意

ストレッチをする女性

運動前には身体の状態を確かめ、違和感がないかどうかを確認すること

一度筋肉を傷めてしまうと、程度によっては正常な歩行や動作ができなくなったり、強い痛みを伴ったりすることがあるため、日頃から肉離れの予兆を見逃さないことが大切です。肉離れを起こす前によく見られるものをいくつか挙げておきましょう。
  • 普段よりも筋肉のつっぱり感、違和感を覚える
  • 筋肉の柔軟性がいつもよりも低く、硬さが感じられる
  • 力がうまく発揮できない(いつもとは感覚が違う)
  • 左右で柔軟性の差がある
運動前にこうした体の変化が見られる場合、肉離れを起こさないようにまずは入念にウォームアップを行い、しっかりと体を温めることが大切です。筋線維の伸び縮みがスムーズにいくように準備しましょう。ウォームアップ後も「何となく動きが悪い……」と感じるようであれば、運動強度を下げたり、ムリに運動を続けたりすることは控えておきましょう。
 

肉離れの症状……ストレッチ痛・痛み・熱感・腫れ・内出血など

ふくらはぎの痛み

痛みのある部位はムリに伸ばしたりせずに、氷などを使って冷やすようにしよう

運動中に「筋肉を傷めたかも」と思ったときは、まずは筋線維を傷めてしまったのかどうかを確認します。ストレッチをして起こる「ストレッチ痛」が見られる場合は、筋線維を傷めてしまっている可能性が高いため、すみやかにアイシング等の応急手当を行いましょう。

肉離れの症状がひどい場合、患部に内出血が見られたり、熱感を伴って腫れたりすることが予想されます。内出血などによるダメージをできるだけ減らすためにも、患部を安静に保ち、氷などで冷やす応急手当を行いましょう。部位によって冷却時間は異なりますが、太ももであれば20分前後を目安とし、冷たさや痛みの感覚がなくなってからプラス5分程度行います。また時間の経過とともに痛みを強く感じるようであれば、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

一番やってはいけないのは、痛みがあるにも関わらず無理にストレッチを行ってしまうことです。ケガの予防などに行うことの多いストレッチですが、肉離れが疑われるときに無理にストレッチをしてはいけません。

肉離れを起こした後は、しばらく傷めた部位を伸ばさないことが基本原則でしたが、最近は患部の炎症症状が収まってから(およそ2~3日)積極的に患部を動かし、最大伸張ができるようにストレッチを行うことが推奨される傾向にあります(参考書籍「基礎から学ぶスポーツセルフコンディショニング」)。筋肉が短縮した状態のままにしておくと、修復過程でできた瘢痕(はんこん)組織=かさぶたみたいなもの、が硬くなって筋線維内にとどまり、運動再開後に肉離れを再発しやすくなるためです。ただし早期のストレッチは痛みを伴うことが多いため、必ず医師の指導のもとに実施するようにしましょう。
 

肉離れの予防法・再発防止法……ウォームアップ・ストレッチ・筋トレなど

ヒップリフトをする女性

太もも裏の筋肉を鍛えるためにはヒップリフトが効果的

肉離れの直接的な原因は過度な筋肉の伸ばしすぎですが、その他にもいくつかの原因が挙げられます。
  • 筋肉の柔軟性の低下
  • 筋肉の温度が低く、筋線維が伸び縮みしにくい状態(ウォームアップ不足)
  • 左右や前後の筋力差が大きいこと
疲労によって筋肉の柔軟性が低下している場合、また寒いところで十分なウォームアップを行わずにメインの運動を始めたりすると、急激な動きなどに対応できず、筋線維を傷めてしまうことがあります。

また左右の筋力差が大きかったり、特に太ももの場合は前後の筋力差が大きい場合も、肉離れを引き起こす一因とされています。通常、太ももの前側の筋肉である「大腿四頭筋」は、後側の「ハムストリングス」に比べて筋力が大きいのですが、あまりにも前側の筋力が強いと、ハムストリングスはいつも伸ばされた状態を強いられ、さらに太ももの裏側を伸ばすような動作を行うと、その外力に耐えられなくなった筋肉は筋線維がブチッと切れやすくなります。肉離れはよく再発しやすいと言われていますが、筋力が低下した状態のまま運動を再開すると起こりやすいので、痛みがなくなった段階でストレッチと並行しながらトレーニングも行うようにしましょう。

肉離れは日頃のケアやトレーニング、ウォームアップやクールダウンなどで十分予防することが出来ると考えられています。運動やスポーツで肉離れを起こさないためにも、正しい知識を理解し、ぜひ実践してくださいね。

■関連書籍
基礎から学ぶスポーツセルフコンディショニング(西村典子著・日本文芸社)
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