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介護転職で収入ダウン! 夫婦で介護破産を防ぐには?

仕事と介護の両立に悩み、転職をする人も多くいらっしゃいます。けれども、介護転職をすると、年収が半分近く減ってしまうという調査結果も出ています。介護転職を決める前に、ぜひ知っていただきたい情報をお伝えします。

平野 直子

執筆者:平野 直子

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介護を理由に会社を退職する人が増えている?

介護離職で破産する介護破産が増えている

介護離職で破産する介護破産が増えている


介護を理由に会社を辞め、介護に専念したり、転職したりする人が増えています。厚生労働省の「雇用動向調査」から、介護・看護を理由に離職した人の推移をグラフにしてみました(下図)。「介護・看護を理由に離職する人」の割合は、女性の方が多いものの、男性の割合も年々増えていることが分かります。「仕事と介護の両立」に向けた取り組みも少しずつ広がっているため、ここ数年は、女性は減少、男性は横ばいの傾向がありますが、「介護離職ゼロ」には、まだ時間がかかりそうです。

厚生労働省「雇用動向調査」をもとにガイド平野がグラフ作成

厚生労働省「雇用動向調査」をもとにガイド平野がグラフ作成


4人に1人が介護を理由に転職!

株式会社明治安田生活福祉研究所と公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団が2014年に行った共同調査「仕事と介護の両立と介護離職」では、「全国の40歳以上の男女のうち、介護開始時に正社員だった人が、親の介護に際し、どのような働き方に変化したか」等について調査しています。

介護前に正社員だった人が対象なので、男性の人数が女性より多いのですが、男女合わせて約34%の人が「同じ勤務先で就労継続」、約16%の人が「同じ勤務先で働き方を変更(総合職から一般職や地域限定職、フルタイムからパート等)」、約25%の人が「転職」、約25%の人が「介護に専念」となっていました。転職や介護に専念した人は、それぞれ4人に1人いらっしゃるのですね。

離職のきっかけは「自分以外に親(介護対象者)を介護する人がいない」が最も多く、転職者は男性:22.6%、女性:20.6%、介護に専念した人では、男性:26.0%、女性:21.3%でした。また、「自分で親の介護をしたかった」という人は、転職者で男性:9.0%、女性:11.0%、介護に専念した人では男性:12.1%、女性:20.6%と、介護に専念した女性の割合が高くなっていました。

転職者に多く見られた「離職のきっかけ」は、「仕事と介護の両立に精神的限界を感じた(男性:6.8%、女性:13.5%)」「これ以上会社にいると迷惑がかかると思った(男性:6.8%、女性:9.7%)」「職場で仕事と介護の両立に理解が得られなかった(男性:5.3%、女性:9.7%)」となっていて、職場への気兼ねが大きく占めているようです。

介護転職で年収が半減!

「仕事と介護を両立させようと努力してきたけれども、様々な理由でやむを得ず転職を考えている」という方もいらっしゃると思いますが、前出の調査によると、「介護で転職をした場合、平均年収が大幅に減る」という結果が出ていました。下のグラフのように、介護開始前と転職直後の平均年収は、男性が556.6万円から341.9万円へ約4割ダウン、女性が350.2万円から175.2万円へ約5割ダウンしたそうです。
株式会社明治安田生活福祉研究所・公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団「仕事と介護の両立と介護離職」調査をもとにガイド平野がグラフ作成

株式会社明治安田生活福祉研究所・公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団「仕事と介護の両立と介護離職」調査をもとにガイド平野がグラフ作成


介護転職するのは、40代、50代が多いですが、正社員だったときは、中間管理職や経験豊富な年代なので、年収も高めだったと思います。けれども、介護をしやすい条件で転職しているので、年収条件も下がるのでしょう……。とはいえ、半分近く年収が下がってしまうのは、ショックです。

一般的に親(介護を受ける人)の介護にかかる費用は、親(介護を受ける人)自身の預貯金で賄うとされていますが、家計の事情で子ども世代(介護をする人)が経済的支援をすることもあります。また、遠距離介護等で交通費がかかるなど、何かとお金もかかります。40代、50代は、教育費や住宅ローンなど支出もかさむ時期です。ある程度貯蓄がある、という方でも、将来自分たちの老後資金を備えていく必要があります。

介護転職で、体の負担はどうなる?

同調査では、「介護転職をすると、介護をする時間が大幅に増える」という結果も出ています。下のグラフは、転職した人と働き方を変えた人が、それぞれ「仕事がある日にどれくらい介護に時間を費やしているか」調べた結果です。
株式会社明治安田生活福祉研究所・公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団「仕事と介護の両立と介護離職」調査をもとにガイド平野がグラフ作成

株式会社明治安田生活福祉研究所・公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団「仕事と介護の両立と介護離職」調査をもとにガイド平野がグラフ作成


株式会社明治安田生活福祉研究所・公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団「仕事と介護の両立と介護離職」調査をもとにガイド平野がグラフ作成

株式会社明治安田生活福祉研究所・公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団「仕事と介護の両立と介護離職」調査をもとにガイド平野がグラフ作成


転職をした人は、転職前の介護時間と比べると、男性が1.6時間増加、女性は1.8時間増加していました。転職をして介護に充てる時間は増え、収入は減る、という状況は、体力的にも経済的・精神的にも大変厳しいと思います。同調査で、「自分が選んだ働き方が良かったかどうか」という自己評価について訊ねたところ、転職者は「良かった」と回答した割合が最も低く、「良くなかった」と回答した割合が最も高かったそうです。

一方、働き方を変更した人も、男女ともに、介護前と比べて介護時間が1時間以上増えていますが、同じ勤務先で働き続けるために、1日単位や半日単位などの有給休暇のほか、「介護休暇制度」や「労働時間や日数の短縮制度」など、様々な制度を活用していたそうです。

介護破産を夫婦でどう防ぐ?

介護で帰省する時は、わが家の掃除は家事代行頼もうか。

介護で帰省する時は、わが家の掃除は家事代行頼もうか。


介護離職がきっかけで、介護をする人自身の家計が破たんしてしまう「介護破産」が増えているそうです。仕事も介護も家事(育児)なども、すべて自分たちで頑張りすぎてしまうのではなく、介護や家事など専門家に任せられるところは、外部サービスを利用することも大切です。働き続けることで、経済的に安定でき、結果的に介護を受ける人も十分なケアを受けられるようになります。

介護をしながら仕事を続けている人は、手続き的なことや緊急時の対応等、自分たちでないとできないことを優先している、と聞いたことがあります。コラム「介護で離職しないために使える制度は?」で触れましたが、介護をしながら離職せずに働き続けている人は、実際に外部サービスを賢く活用しています。

高齢の親御さんなど、サービスを利用したがらない方も多いと伺います。自分たちが働く必要があることや、そのためにサービスを受けてもらえると助かることなど、少しずつご理解いただけるようにお願いしつつ、まずは皆さん(介護をする人)自身の負担を軽くする方法として、自分たちの家事代行、便利家電利用などを取り入れてみてはいかがでしょうか。

夫婦のライフプランもこれまで予定していた支出以外に、介護費用や外部サービス利用料などを加えてシミュレーションをしてみましょう。育児休業を夫婦が協力して取得するように、介護休業等もお互いの勤務先で利用できる制度がないかどうか、確認してみましょう。やむなく転職をする場合や働き方を変えた場合の収入予測をし、老後も貯蓄が尽きないかどうか、この機会に家計の見直しをしてみてください。

【関連リンク】
●介護で離職しないために使える制度は?
●親と同居でも家事代行利用!? 家事支援事情2015
●30、40代での介護退職も3割! わが家はどうする?
●介護家系図でわが家の介護離職ゼロを目指そう!
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●「家族会議」で親の介護不安を解消する!
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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