喫煙対策に関する法律は「健康増進法」と「労働安全衛生法」

喫煙の問題は大きく分けて2つあります。
  • 喫煙する本人の健康問題
  • 周囲の人に対する問題
です。後者がいわゆる受動喫煙の問題です。「スモークハラスメント」という言葉もあり、受動喫煙により肉体的、精神的な苦痛を被ることを指しています。

隣でタバコを吸われることがなくても、喫煙後の室内や喫煙者の髪の毛、衣服に付着したタバコの煙を吸ってしまう「三次喫煙のリスク」といわれるものもあります。職場の喫煙所(いわゆるタバコ部屋)で喫煙した人が席に戻ってくると、非喫煙者は敏感に気づきます。分煙しても、このリスクはついて回ります。
喫煙対策

受動喫煙対策が急務となっている



国も喫煙問題に動いています。
受動喫煙に関する法律は2つあります。

  • 1.健康増進法
国民の健康維持と現代病予防を目的とし、平成13年に政府が策定した医療制度改革大綱の法的基盤として制定されたものです。

同法に、受動喫煙対策が記されています。健康増進法第25条は「多数の者が利用する施設を管理する者に、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう努めること」と規定しています。

  • 2.労働安全衛生法
労働者の安全を確保するための労働安全衛生法では、「室内またはこれに準ずる環境下での受動喫煙の防止」が記されています。

平成27年に施行された改正労働安全衛生法では、受動喫煙は「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義され、事業者は労働者の受動喫煙を防止するため、適切な措置を講ずるよう努めるよう求められています。

努力義務ではありますが、実際、従業員が「受動喫煙によって被害を受けた」として損害賠償請求をするケースも出ています。判決では「企業が安全配慮義務を怠った」とされ、数百万円の和解金が支払われました。

全面禁煙・非喫煙者の限定採用も法的に可能

喫煙する権利については、最高裁で「喫煙の自由は、あらゆる時、所において保障されなければならない”ものではない”」と判断されています。つまり、喫煙とは権利とは断定されず、制限に服しやすいものです。

◯ 職場での全面禁煙
企業は秩序定立権限の一つである施設管理権により、就業場所での喫煙禁止を定めることができます。また、企業は労働契約法に基づく労務指揮権・業務命令権に基づき、従業員に対して就業時間中の喫煙禁止を命じることができます。

◯ 非喫煙者のみ採用
非喫煙者に限ったの募集・採用も、採用の自由によって可能です。


職場の喫煙対策、企業側がすべき6つのこと


1)自社の喫煙率を知る

喫煙対策

まずは自社の喫煙状態の把握から

喫煙対策を進めるにあたって、まず行うべきは自社の喫煙状況の現状把握です。健康診断のデータから従業員の喫煙率を把握します。日本人の平均喫煙率は成人人口の約20%(男性30%・女性は10%)。これをベンチマークとします。

2)喫煙場所と利用状況を確認する

次に喫煙場所・スペースとその利用状況を確認します。総務であれば資材管理、火元管理上で把握しているでしょう。そして、全社員を対象とした喫煙問題に関するアンケートを取りましょう。ここでは、喫煙者・非喫煙者双方が考える課題、喫煙者の禁煙に対する関心度を把握しましょう。

3)喫煙方針全社告知する

喫煙対策をどう行うかを発表します。企業トップから、全社的にメッセージを発信することが大事です。
また、社内だけでなく、社外へも公表することで、メディアに取り上げられるなどで広報効果や施策の促進になります。
  • 事例…毎月特定日を「禁煙の日」とし、のぼりやポスターを掲示

4)喫煙者への啓蒙活動、情報提供

喫煙者を対象に啓発活動・情報提供を行います。健康増進法など、社会の禁煙化の流れやタバコの害、喫煙室の粉塵濃度や換気状況のデータを公表します。
  • 事例…社内広報で周知
タバコの害がきちんと認識できるポスターを作成/社内広報メディアに「禁煙啓発コンテンツ」を掲載/社内イントラで禁煙支援プログラムを提供/実際に禁煙した社員の事例を掲載
  • 事例…リアルな場で情報発信
毎月1回の禁煙セミナーの開催/新人研修時に保健師がタバコの健康被害を説明/喫煙者の疎外感の軽減のために、禁煙教室に非喫煙者を参加させる

5)禁煙サポート・アプローチ

禁煙の取り組みをサポートする企業もあります。
健康診断を受ける際は、健康への意識が高まるので、その際に禁煙へのアプローチをする企業が多いようです。喫煙の健診結果への影響を説明し、喫煙問題を自分ごとにしてもらう、人間ドックで胸部CT撮影し、画像を見せながら禁煙を推奨するといったアプローチです。

全面禁煙に踏み切った企業は、産業医の禁煙勧奨と喫煙場所の減少を理由に挙げています。安全研修・メタボ研修・メンタル研修・定期健診、雇い入れ健診等、機会あるごとに禁煙勧奨をすることがポイントです。
  • 事例…ニコチンパッチの費用を補助/禁煙治療成功者の費用を全額補助/禁煙治療費用を健保と会社で負担

6)受動喫煙対策と喫煙ルールを決定

受動喫煙対策として採用される方法は主に2つです。
  • 分煙を採用し、喫煙室や喫煙スペースをつくる
  • 完全禁煙と採用し、敷地外での喫煙をする
完全禁煙とすると、喫煙者は社外の喫煙スペースで喫煙することになり、そのマナーや時間のロスが問題となるケースもあります。敷地内からタバコの煙を無くしたから喫煙対策は完了ではなく、企業ブランド毀損のリスクも鑑み、喫煙マナーや禁煙の啓蒙を続けることが必要です。
  • 事例…就業時間内の喫煙時間を午前と午後の2回以内に制限/1人当たりの喫煙を1日6本以内に制限/喫煙室から椅子を撤去
 

喫煙者を巻き込む工夫が大事

喫煙対策では、非喫煙者だけでなく、喫煙者の身になって進めることがポイントです。押し付けられたと感じる対策ではうまくいくわけがありませんから、周知に時間をかける、本人に対策を考えてもらうなど、最初から喫煙者を巻き込む工夫が重要です。

東京オリンピックに向け、飲食店の喫煙を制限する健康増進法改正が検討されています。法案は攻防を重ねていますが、大きな流れが喫煙対策強化に向かっていることは間違いありません。企業側、総務担当としてもこの流れを先取りし、全社員にとって働きやすいオフィスをつくることが求められます。
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