貯蓄/平均貯蓄額などの気になるデータ

平均貯蓄率は35.2%。20代、30代の貯蓄グセがキモ

消費増税、社会保障費も上昇するなか、家計管理にどのような変化が起きているのでしょうか。総務省が発表した『家計調査 家計収支編 令和2年』から年代別に見ていきましょう。収入、支出、貯蓄額など、参考にしてください。

伊藤 加奈子

執筆者:伊藤 加奈子

貯蓄ガイド

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収入も支出も増加するも、貯蓄率も大幅UP

平均貯蓄額、平均収入といったお金に関するデータは、各省庁が発表する統計データのほかに、金融機関や調査会社などによる独自調査データが多くあります。こうしたデータを見ると、「現実離れしている」という声が挙がります。確かに平均値はあくまでも平均で、自分の生活実態にそぐわない面もあります。それでも、統計データを自分事としてとらえることが、マネー管理の面では役に立つことも多いのです。

 
勤労世帯の貯蓄率をチェック

勤労世帯の貯蓄率をチェック




この記事で紹介する、総務省の『家計調査』は毎月の速報のほか、4半期、年間でデータが公表されています。その中に、年収別、年代別、都市別など細分化してまとめられているデータがあります。より自分に近いプロフィールではどうなのか、といった観点で数字を見るといいかもしれません。

2020年の家計調査(2021年2月公表)から、まず、二人以上世帯のうち、勤労者世帯の家計収支がどうなっているのか、見ていきましょう。データはすべて年間の数値を月額平均にしたものです。
二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)



2019年と2020年の同調査と比較すると、平均収入は2019年の58万6149円から60万9535円と約2万3400円の増加となっています。消費支出は2019年の32万3853円から30万5811円と約1万8000円の減少となっています。税金や社会保険などの非消費支出が約1400円増加していますが、支出全体では1万6650円の減少という結果です。
 
家計収支の黒字額は、2019年より約4万円増え、19万2828円。月額平均の貯蓄純増額も、2019年の14万9704円から約2万6000円増え、17万5525円という結果になっています。可処分所得に対する貯蓄割合を示す平均貯蓄率は、31.4%から35.2%に上昇しました。
 
支出の内訳を見ると、消費支出全体に対する各項目の支出割合は、さほど大きな変化はありませんが、食費が上昇、交通・通信、教育、教養娯楽、その他の消費支出が減少しており、昨年からのコロナ禍により、家での食事が増え、外出を控えるようになったことが影響しているといえるでしょう。これは20代世帯を除き全体で同じような傾向にありました。
 

年代別では20代、30代の貯蓄率が高い

では、年代別では、どうなっているか見ていきましょう。まずは、20代、30代。
 
二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)



収入は、20代が前年から約5万3000円の増加で51万5042円。30代では約3万2000円の増加で、58万9870円。一方の支出は、20代で約4万7000円の増加、30代では約1万9000円の減少となっています。
 
貯蓄純増は、前年から20代は約2000円にとどまり、30代は約4万円の増加となりました。20代は収入が増えたものの支出も増加。結果として貯蓄純増は前年から微増となりましたが、貯蓄率自体は40.8%と高く、全年代を通して最も高くなっています。30代は収入増に加え、支出も減少したため4万円もの貯蓄純増となりました。貯蓄率も40.4%と20代に次いで高くなっています。
 
収入が40代以降と比べて低くても、貯蓄をしっかりとしているというのは、心強いものです。この傾向は例年同じで、20代、30代とも貯蓄率が40%を超えているのは、堅実な世代と言うことができるかもしれません。実際、ライフプランのなかで、結婚して子どもが生まれる、または子育てが一段落し、子どもが高校に上がるまでの期間は、お金を貯められる時期でもあります。この期間に貯蓄のベースを作っておくことが、20年後、30年後に生きてきます。
 
収入が上がった分、消費を増やすのではなく、貯蓄にしっかりと回すこと、貯蓄グセをつけることが大事です。
 
 

子どもの教育費負担が重くなる40代、50代

40代では、収入が前年から約3万7500円増の66万1886円。50代では約1万3700円増の69万5882円。支出は40代で約1万円の減少、50代で約2万5000円の減少となりました。
 
40代、50代は子どもの教育費などにお金がかかり始める年代。収入も増えるが支出も増えるという状況のなか、貯蓄純増も前年より40代で約3万円、50代で約1万5000円増えており、貯蓄率は40代が36.1%、50代が34.2%と、前年から改善されています。
 
二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)


この年代では、子どもにかかるお金は教育費だけではなく、食費、被服費、通信費など、生活全般で大人と同じかそれ以上のお金がかかってきます。また、住宅購入で住宅ローンの返済を抱えている世帯も多くなります。可処分所得は20代、30代に比べると多いように見えても、実際に自由に使えるお金は少なく、貯蓄に回す余裕もなくなってきます。
 
50代は貯蓄をしながら、子どもの大学進学費用などでまとまったお金が出ていく時期であり、並行して老後に向けた資金作りもしなければなりません。このことを念頭に置けば、20代、30代のうちから、将来に向けての貯蓄を始めておくことが大事であるとわかるでしょう。
 

定年後も働くことで、家計に余裕ができる60代、70代

60歳で定年。住宅ローンを完済し、子どもは独立。定年後は悠々自適に暮らす。そんな時代は、遠い昔に過ぎ去りました。60歳以降も、再雇用や再就職などで働けるうちは働き、年金で不足する分を貯蓄から取り崩すのではなく、働いて収入を得ることで、その後の本当の老後生活を安心して迎えることができるのです。

60代以降も48万円も収入がある、というこの結果は、少々現場感からすると、驚きの数字ですが、60代の平均年齢は63.7歳なので、65歳までは働く、ということが定着しつつあるのでしょう。働いて収入を得る、少なくとも公的年金の受給開始年齢まで働くという考え方自体、これから重要なテーマになるでしょう。

 
二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)



注目すべきなのは、支出のなかで、教育費がガクッと減るのは当然として、これだけ収入があるからなのか、食費などは子どもが独立する前と後で、それほど変化がないことです。働いて収入を得ることで、現役時代の生活レベルを維持するのもいいことですが、生活のダウンサイジングを心がけ、この先のリタイア生活に向けた準備をしておきたいものです。
 

平均は平均だからではなく、自分の消費傾向をチェックする

今回のデータでは、全年代で食費が増加、20代以外の年代では交通費、趣味娯楽、交際費などが減少し、少なからずコロナ禍が家計にも影響を与える結果となっています。今回、収入は全世代で増加しましたが、昨年冬のボーナスの減少や今後の収入減少が心配される業種も多く、家計にとって厳しい状況が続く可能性もあります。
 
家に滞在する時間が増え、食事や光熱費などが増える分は、どこかで調整しなければなりません。無理な節約は長続きしません。すこしずつ他の支出を見直して家計全体での支出バランスを調整していくほかありません。
 
家計は世帯それぞれに事情があり、ほかの世帯と比べることに、あまり意味はありません。しかし、こうしたデータから消費支出の割合をチェックし、我が家の家計と比較し、使いすぎている費目はないか、それは削ることができるのか、今は無理でもコロナ禍が落ち着けば減らせるのか、子どもが成長したら生活コスト全体を削減できるのか。または、これからどのくらい増えるのか。そうした家計チェックに使うことができます。コロナ禍での家計の変化も、再度チェックしてみるといいでしょう。。
 
とかく、家計は近視眼的に、毎月のやりくりに目が行きがちです。また月によっても変動があります。年間でかかったお金を月平均にならし、昨年と変わったところはないか、来年はどうなるか、そうした結果の確認と予測を立てることも大事なことです。
 
数字の見方はいろいろありますが、「こんなに収入ないから」、「平均の数字は高すぎる」というばかりではなく、うまく活用して、健全な家計管理に役立たせてほしいと思います。

※データ出典/総務省統計局「家計調査 家計収支編 令和2年」より、二人以上世帯のうち勤労者世帯のデータより抜粋して、筆者作成

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