皮膚・爪・髪の病気

市販の保湿剤の効果・選び方を皮膚科医が解説

【皮膚科医が解説】肌が乾燥しやすい季節は保湿剤での対策が大切ですが、乾燥肌の程度には個人差があります。保湿剤の種類や塗る回数、量などの基本を押さえ、市販の保湿剤を購入する際の効果的な選び方、何をつけても乾燥する場合の対策と注意点を解説します。

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

市販の保湿剤の違いと選び方

保湿剤を市販で選ぶときのポイント・種類・使い方

冬の乾燥肌を放っておくと赤くガサガサして、湿疹になってしまいます。こうなると皮膚科医の受診が必要ですが、まめに保湿をすることでそれを防ぐことができます。どのような製品を1日何回、どのように塗ればいいのでしょうか?

ドラッグストアに行くと保湿剤にも多くのブランドがあり、それぞれのブランドの中でも10種類ほどの製品があることも珍しくありません。広告で見たものや一番前に置いてあるものを選ぶ方もいるかもしれませんが、それが本当に自分の乾燥肌の症状に合っているのか、考えてみたことはあるでしょうか? たくさんある保湿剤の中から製品を選ぶときに注意すべきポイントはぜひ知っておいていただきたいと思います。
 

基材で見る保湿剤の種類……軟膏・クリーム・ローション

保湿剤

保湿剤にはいろいろな種類があり、容器もさまざま。クリーム、乳液、透明なローションが主流で、それぞれ塗り心地と保湿力が異なる

保湿剤はまずクリーム、ローションなど「どれだけしっとりしているか」で分類されます。正確には「基材」といわれ、これに様々な成分を溶かして製品の特徴が決まっています。
 
  • 軟膏
  • クリーム
  • ローション
下に行くほど、さらさらな使い心地になります。

■軟膏タイプの保湿剤
軟膏は油っぽくワセリンのようにベトつきますが、水で流れないので長持ちし、保湿力は高いです。半透明で、製品によっては色がついている場合もあります。

■クリームタイプの保湿剤
クリームタイプは白い色をしていて、体に塗る保湿剤に通常使われます。伸びがよく、またしっとりして保湿力も強いので、保湿剤には一番よく使われている基材です。
クリーム

クリームはしっとりしていてジャーやチューブに入っている。保湿力が高く、体の保湿剤には最適。特に冬の乾燥が強い時期はローションよりクリームを使うのがおすすめ


■ローションタイプの保湿剤
ローション

ローションはさらさらしていて塗りやすい。顔や、夏に体全体に塗るのに最適。白色で乳液のようなタイプと、透明でよりさらさらしたタイプがある。クリームに比較するとベトつかない分保湿力はおちる

ローションはさらっとしていて乳液のように白色のことが通常です。ベトつきが少ないほうが好まれる顔用の保湿剤によく使われています。透明で水のようにさらさらしたローションもあり、トナー、エッセンス、セラム、のように他の名前で呼ばれることもあります。

ベトつきが少ないほど使い心地はいいのでローションを全身に塗っている方が多くみられますが、ベトつきが少なくなるにつれて保湿力は弱まるので、特に冬はローションよりもクリームを使うことをおすすめします。

クリームは顔にも塗れますが、顔はよりベトつきが気になる場所ですので、ベトつきの少ないローションがおすすめです。肌質には個人差がありますが、ニキビができやすいオイリー肌の方がベトつきの強い保湿剤を使うとニキビができやすくなってしまうことがあります。この場合は特にさらっとした保湿剤を使ってあげるとよいです。

軟膏を使った保湿剤は比較的少ないですが、代表的なものはワセリンです。商品名はいろいろですが、クリームやローションに比べて不純物が少ないので刺激性が少なく、かぶれもほとんど気にする必要がありません。ベトつきが強いので広い範囲に塗るのには向きませんが、唇にリップ代わりに使うこともできますし、目に入ってもしみないのでまぶたの乾燥にも使いやすいです。皮膚のバリア機能を強化する作用が強いですので、赤ちゃんのおむつかぶれを予防するのにも向いています。

保湿剤の成分に関しては非常に多くの種類があるのでこれが入っていれば絶対に安心というものはありませんが、セラミドなど皮膚のバリア機能を補ってあげる成分が効果的といえます。
 

保湿剤の頻度と量の目安……いつ何回くらい塗ればよいか

乾燥の程度にもよりますが、保湿剤は最低でも1日2回、朝夕で塗るとよいでしょう。シャワーを浴びた後やお風呂あがり、タオルで水分を拭き取った後に早めに塗ると体の乾燥を防げます。特に冬は1日1回では乾燥を防ぎきれないことが多いですので、朝に身支度をするときにも塗るのがよいでしょう。

服から露出していて乾燥しやすい顔、首、腕、脚といったエリアは特に全体をカバーするように塗ってください。手に保湿剤を多めにとり、ピンポイントではなく広い範囲に伸ばしましょう。小さいチューブの保湿剤を使うとどうしても量が足りなくなりがちなので、体に塗る場合にはジャーやボトルに入った量が多めの保湿剤を買って塗ることをおすすめします。

保湿剤を塗る回数、量については乾燥の程度や季節によって調整する必要があります。乾燥の程度が強いと皮膚が粉をふいたように白くなり、さらにはガサガサ荒れてきます。見た目に皮膚がこのような状態ではなく、触ってツルツルした状態を保てるように塗るようにしましょう。この状態を保てていないと感じた場合は塗る回数を増やしたり、塗る量を増やしたり、保湿剤をよりしっとりしたものに変えたりする工夫が必要です。
 

何をつけても乾燥する・塗っても塗っても乾燥する場合

どの保湿剤を使っても乾燥が防げない場合、まず考えられるのは、塗る回数の少なさです。1日1回では不十分なことが多いので、最低でもお風呂上がりと朝の2回は保湿剤を塗りましょう。それでも乾燥を防げない場合は小さなチューブの保湿剤を持ち歩き、マメに塗るようにするとさらに乾燥を防ぎやすくなります。特に手が乾燥する場合は手を洗う度に保湿剤が取れてしまうのでより頻繁に塗る必要があります。顔、腕や脚など外気にさらされやすいところは乾燥しやすいので注意して塗り残しのないようにしてください。

何度保湿剤を使っても乾燥を防げない場合は、塗る保湿剤の種類を変えるだけで劇的に皮膚の状態が改善することがあります。私自身、ニューヨークは東京よりも気温が低く乾燥しているので、 以前使用していた保湿剤ではしっとりした皮膚の状態を保つことができず、よりしっとりとしたクリームに替えたところ肌質が改善しました。さらっとしたローションや保湿力の弱いクリームでは何度塗っても肌の表面から蒸発してしまうので、肌が乾燥しやすい体質の方はしっとりとしたクリームを使いましょう。

上に述べたような工夫をしてもなお乾燥肌が改善しない場合、部屋の環境を見直すことも大事です。エアコンの温度が上がりすぎていて常についている状態だと部屋が乾燥して肌のうるおいも早く奪われますので、低めの温度設定にしましょう。加湿器使用も対策として有効です。

乾燥肌を放置していると赤くガサガサしたり、さらには皮膚がゴワゴワしてかゆくなってくることがあります。手や腕、足首やおなかの衣類が当たる部位などに特によくみられます。この場合はただの乾燥肌ではなく皮膚が荒れて炎症を起こした「湿疹」の状態ですので、ステロイドの塗り薬を使う必要があります。皮膚科を受診して診察と処方を受けるようにしてください。
湿疹

冬の乾燥肌を放っておくと赤くガサガサし、かゆみが出てくる。こうなると保湿剤は効かず、皮膚科医を受診してステロイドの塗り薬を使わなければ治らない。皮膚が粉を吹いたように白っぽくなり赤みがない状態であれば保湿剤で予防できるので、まめな保湿が肝心になる

 

保湿剤を市販で選ぶ際は「毎日継続して塗れる」ことも重要なポイント

冬は乾燥するので保湿が重要な季節になりますが、乾燥肌の程度には個人差があります。顔、首、腕、脚など乾燥しやすいところでもしっとりとした状態が保てるように塗る回数、量、保湿剤の種類を調整してください。最低でも1日2回、全体に薄く行き渡る量のクリームを塗るとよいでしょう。毎日継続して塗れることが一番重要なので、毎日使いたくなる、ご自身にとって「使い心地のよいもの」を選んでください。乾燥によって肌が荒れて赤くなったりガサガサが強くなった場合には保湿剤だけで改善するのが難しいので、皮膚科を受診するようにしてください。

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