ストレスマネジメント/職場環境改善(人事総務・経営層のためのストレス基礎知識)

「メンタルが弱らない職場」の3つの条件

仕事のストレスに押し潰されない「困難を乗り越える力(SOC)」は、日々身を置いている環境によって育まれます。1日の大半を過ごす職場がどんな環境であれば、社員はメンタルを強化できるのでしょうか? 「困難を乗り越える力」を育む職場に不可欠な、3つのチェックポイントをご紹介します。

蝦名 玲子

執筆者:蝦名 玲子

ストレスマネジメントガイド

あなたの職場は大丈夫?職場環境を振り返る3つのチェックポイント

以前の記事では、心の折れやすさを握るカギとして「SOC(Sense of Coherence):首尾一貫感覚」についてご紹介しました。

実は、このSOCは日常生活のなかで3つの経験を積んでいくことで育まれます。

1日の大半を過ごす職場がどんな環境だと、メンタルを強化できるのでしょうか? 3つのチェックポイントをご紹介します。

 

1. 「どう動いたらいいのか」「まわりに何を期待していいのか」が明確で一貫性がある

動じにくい心undefined一貫性

動じにくい心を育む一貫性


たとえば、その時々の感情で言うことがコロコロ変わる上司のもとで働いていると「いま、自分に求められていることは何なのか」がわからず、「今後、どう行動したらいいのか」の見通しもつきにくくなります。こうなると不安で気の張り詰めた毎日を送ることになります。

他にも、
  • 方針や要求が相入れないために、業務が困難である
  • 自分の職務や責任が何であるか、わかりにくい
  • 人事評価についての説明がない、または不明確である…

こうしたことは、すべて職場に一貫性がないがために起こること。

こうした一貫性のない環境で一日の大半を過ごしていると、心が動じやすくなります。

反対に、自分の役割や評価の基準が明確であり、会社の方針や要求に一貫性があると、自分の置かれている状況が理解しやすく、「この行動をとるとこうなるだろう」という見通しがつきやすくなります。

このように、「私のいる世界は、安心して頼れるものだ」という確信を持てるような、一貫した環境で働くことで「動じにくい心=わかる感」が育まれるのです。

【実例:過去に企業が行ったこと】
  • 「会社の理念や行動指針は、各部署に当てはめるとどういう行動をとることを意味するのか」明確化して示す
  • 評価は「そうした行動指針に基づいた行動がとれているか」という視点から行う
 

2. ストレスと「助けてくれる存在」のバランスがとれ、適度にチャレンジングな生活を送れている

追いつめられにくい心undefinedストレスバランス

ストレスと資源のバランスが追いつめられにくい心をつくる


「ストレス」というと悪いイメージがありますが、「適度なストレス」は健康にとって必要なものです。

自分の持つ能力を十分に使う必要のない「あまりに小さなストレス」しかない環境下にいると、人は「ああ、このままただ年だけとっていくのか……」等と虚しさを感じます。これは、メンタルヘルスにとって良い状態とはいえません。

一方、過度なストレスも、もちろんよくありません。

たとえば、
  • 自分一人ではこなせないほど仕事量が多い
  • いつも笑顔でいる必要がある、他人の人生や健康を支えなければならない等、感情面での負担が大きい
  • 集中や知識、技術の高さが常に求められる……

こうした大きなストレスを感じ続けると、燃え尽きそうになったり、「もうダメだ、どうにもならない」と追いつめられたりします。

心が追いつめられてしまわないためには「相談したら助けてもらえる」と感じさせる上司や同僚がいたり、チームの連携体制が構築されていたり、感情コントロールをはじめとしたセルフケア教育の機会が与えられたりする等、個人を追いつめないしくみが不可欠です。

ストレスが大きくても、それを対処するのに必要な「助けてくれる存在」がいて、そうした存在に助けてもらいながらうまくストレスに対処できた、という経験が「追いつめられにくい心=できる感」を育むのです。

【実例:過去に企業が行ったこと】
  • 「助ける」という行動を行動指針のなかに入れ、「そうした思いやりのある行動がとれているか」も評価の対象に(管理職も例外ではなく「管理職=部下を育成する役割」とし、「困っている部下を適切にサポートできているか」も評価の対象にしている)
  • 上司と部下の定期面談を、悩みを自然に相談できる雰囲気のレストランで行う、ランチ・トーク制度(制度なので、そのときのランチ代は会社持ち!)
 

3. 重要な意思決定に参加し、認められる経験ができている

諦めてしまいにくい心undefinedやるぞ感undefined結果形成への参加

諦めてしまいにくい心をつくる結果形成への参加


たとえば、担当しているプロジェクトの会議で、発言が許されないような雰囲気だったり、発言してもまわりがあなたの発言を軽く流したり、といった状況が続いたら、どうでしょう?

軽んじられる経験を繰り返すうち、「どうせ言っても相手にしてもらえない」「私なんていなくてもいい」と感じてしまいますよね。

そうしたなかで、つらいことが起きると、すべてがどうでもよくなり、諦めてしまいやすくなります。

しかし、自分が「重要な問題だ」と思う事柄の意思決定に参加し、「自分の意見や行動が認められた」という経験をすることで、「私はこの職場に必要とされている」「価値ある存在だ」と感じられるようになります。

実はこれが、つらいことがあっても「諦めてしまわない心=やるぞ感」を育むことにつながるのです。

【実例:過去に企業が行ったこと】
  • 管理職が一方的に指示を出すのではなく、部下の意見を聞きながら、参加型で事業を進める
 
折れない心undefined首尾一貫感覚undefined職場環境

職場環境が折れない心をつくる


「折れない心」は、日々身を置いている環境により、育まれます。

だからこそ、ストレスを感じる出来事があっても、「わかる」「できる」「やるぞ」と思えるような、職場環境を整える必要があるのです。


【参考文献】
蝦名玲子(2016).生き抜く力の育て方~逆境を成長につなげるために.大修館書店
蝦名玲子(2012).ストレス対処力SOCの専門家が教える~折れない心をつくる3つの方法.大和出版
蝦名玲子(2012).困難を乗り越える力~はじめてのSOC.PHP研究所
蝦名玲子(2010).元気な職場をつくるコミュニケーション.法研
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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