1.おめでとう! 台湾がアジア初の「同性婚合法化」へ

MISIAさん

12万人超が参加した台北のプライドパレードに、MISIAさんも応援に駆けつけました!

ここからは世界のLGBT情勢です。

2017年、最も熱かった話題と言えば、やはり台湾で同性婚が認められたことでしょう。アジア初の快挙です。

台湾でLGBTの運動が起こったのは日本よりずっと遅かったのですが、人権施策によって欧米諸国に認められたいという政府の方針から、2003年、ジェンダー平等教育法が制定され、学校でもLGBTの平等について教えるようになり、同性婚法案も起草され(結局、国会では審議されませんでしたが)、第1回台湾同志遊行(Taiwan LGBT Pride)に馬英九台北市長(のちに総統)が来場してスピーチするなど、にわかに支援が進みました。

そうして台北のパレードはあれよあれよという間に東京を抜いて東アジア最大規模に成長し、婚姻の平等を求める運動も活発化しました。2016年、同性婚支持を明確に打ち出した蔡英文が総統に就任し、国会で同性婚も審議されていたなかで、憲法裁判所が「同性婚を認めないのは違憲」だとして同性婚の法制化を2年以内に行うよう言い渡しました。さらに、法改正が2年以内に終わらない場合、証人がいれば婚姻の登記ができるともしました。

10月末に行われた第15回台湾同志遊行も、当初の参加予想人数は10万人だったのですが、ふたを開けてみれば約12万3000人が参加し(海外からも本当に大勢の人が来ていました)、祝福ムードのなか、たいへんな盛り上がりを見せました。東京レインボープライドのフロートにはMISIAさんが登場し、歓声が上がりました。中華路という大通りを行進中、歩道橋の上から大きなレインボーフラッグを振っている方がいて、印象的だったのですが、それが、台湾の同性婚実現の立役者である活動家の祁家威氏(11月に総統文化賞が贈られました)でした。

パレードといえば、韓国のソウルでも7月にソウルクィアパレードが行われ、雨にも負けずアンチ勢力にも負けず、8万5千人もの方々が行進しました。ここ数年で参加者が急増しているのは、台北と同様、海外から応援に駆けつける方たちが増えているからでしょう。ゴトウも2018年はソウルに行ってみたいと思っています。

ちなみに台湾以外でも、2017年に同性婚(結婚の平等)が認められた国として、マルタドイツ、そしてオーストラリアオーストリアがありました(「オーストラリアで同性婚」と「オーストリアで同性婚」が数日違いでニュースに……神様のいたずらかもしれません)。世界で同性カップルが結婚できる国は26ヵ国となりました。


2.世界は「トルドー的な動き」と「トランプ的な動き」に二極化?

トルドー首相

カナダで初めてパレードを歩いた首相のトルドーさん。本当にマイノリティに優しい方です

6月は欧米では(6月末に起きたストーンウォール事件を記念して)プライド月間とされていますが、今年もグーグルが素敵なレインボーカラー仕様になったり、いろんな企業が続々とLGBT支援のメッセージを発したりしました。ナイキやアップルはレインボーカラーをあしらったプライドエディションも発表!

また、グーグルやマイクロソフトなど50社もの企業が、米連邦高裁に対し、職場での性差別を禁止する連邦法により同性愛者の従業員が保護されるとの判断を示すよう求めました。性的指向を理由にした職場での差別を明確に禁じた連邦法がないため、そうした法律を採択していない州における人材採用が妨げられているからです。

アメリカといえば、トランプ大統領が7月にトランスジェンダーの従軍を禁じるとTwitterに書いて各方面から一斉に非難され大炎上、という騒ぎがありました。が、連邦裁判所は予定通り(すでにオバマ政権の時から受入れ準備が進められていました)2018年から入隊を認めるよう判決を下し、国防総省もそれに従うという正常化が行われています。アメリカってなんだかんだ言ってもきちんと民主主義が機能しているし、フェアネスを大事にしているなぁと思います。

トランプ大統領とは対照的に、カナダのジャスティン・トルドー首相は、トロントのプライドパレードの先頭を歩いたことも話題になりましたが、さらに、カナダ政府がかつて性的マイノリティを迫害していたことに対する歴史的な謝罪を行いました(議場の与野党議員が総立ちで数分間、大きな拍手を送ったそうです。感動……!)

首相といえば、欧州で新たに2人の同性愛者の首相が誕生しました。アイルランドで初めて閣僚としてカミングアウトしたレオ・バラッカー氏が同国初のゲイの首相になり、また、セルビアでオープンリー・レズビアンの首相が誕生したのです(東欧初です)。ルクセンブルクのグザヴィエ・ベッテル首相と合わせ、欧州には現在、3人もの同性愛者の首相がいることになります。

一方、ロシアのチェチェン共和国で(国外に逃げのびた方の証言により)ナチス以来となる強制収容所が設置され、数百人とも言われるゲイが暴行されたり殺されたりしているという悲しいニュースもありました。当然、国際社会から強い非難や勧告を受けていますが、プーチン大統領がのらりくらりとかわし、迫害を黙認している現状です。プーチン氏は、ソチ五輪での欧米各国首脳のボイコットの原因となった反同性愛法を制定し、国内の同性愛者を抑圧しています。

数年前まで東欧最大級のプライドパレードが盛り上がり、イスラムの国として唯一LGBTフレンドリーだったトルコでも、独裁的なエルドアン大統領が就任して以来、パレードが強制的に排除されるようになりました。実は今年、縁あってイスタンブールに行く機会があったのですが、ゲイクラブなどは普通に営業していましたし、本当にいい国だなあと思っていました。しかしその後、首都アンカラでLGBTイベント開催が全面禁止になるという悲しいニュースが伝わってきました。今後トルコはどうなるのか……心配です。

世界は今、政治的に見ると、カナダのようにLGBT(を含む社会的マイノリティ)が生き生きと暮らせるような自由で民主的な国と、大統領が専制的・独裁的になってマイノリティの排除や迫害に向かっている国とに二極化しつつあるようにも見えます。複雑な政治状況や社会的背景がありますので、単純には言えませんが、ロシアのプーチンは民衆の不満をそらし、支持を強化するためにホモフォビアを煽っている(LGBTをスケープゴートにしている)という話があり、それは後者タイプの大統領に共通しているようにも感じられます。北朝鮮などもそうですよね。まさかとは思いますが、日本がそのような道を歩まないことを祈ります……。


3.映画『ムーンライト』がアカデミー作品賞を受賞! 銀幕ほかファッション界でも快挙続々

『ムーンライト』

『ムーンライト』でゴトウが最初に泣いたシーンは、ここです。なよなよしてていじめられているシャロン(まるで子どもの頃の自分のよう)を、見かねたフアンが食事に連れ出します。(自分は何も食べず)シャロンにご馳走しながら、悩みを聞こうとするのです。その優しさに胸を打たれました。

2017年2月26日(現地時間)、第89回アカデミー賞授賞式が開催され、黒人のゲイの主人公の少年時代から青年期にかけての心の旅を描いた映画『ムーンライト』が作品賞、助演男優賞、脚色賞に輝きました。

ゲイ映画(というだけでなくセクシュアルマイノリティを描いた作品)がアカデミー賞最高の栄誉である作品賞を獲るのは史上初めてのことで、とても素晴らしいニュースでした。映画館でご覧になった方、SNSで感動を綴る方もたくさんいらっしゃいました。心に残る名作です。まだの方はレンタルでぜひ!

5月開催の第70回カンヌ国際映画祭では、1990年代のパリでエイズと闘いながら、愛しあい、力強く生きたゲイの若者たちの輝きを描いた映画『BPM』が、グランプリと国際批評家連盟賞をダブル受賞しました。日本では2018年3月のロードショー公開に先立ち、TOKYO AIDS WEEKS 2017でプレミア上映されました。


なお、カンヌで2016年にグランプリを獲った『たかが世界の終わり』も、ゲイの監督グザヴィエ・ドランによるゲイ映画で、今年、日本で公開されました。こちらもスゴい作品です。


また、あの『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンが、世界でも最も早く同性愛者であることをカムアウトしたプロアスリートであるビリー・ジーン・キングを演じた映画『Battle of the Sexes』(男女の戦い、という意味)がアメリカで9月に公開されました。まだ日本での公開は決定していないようですが、配給会社さん、ご検討ください!

アメリカでは映画だけでなく、ネット配信ドラマでも『トランスペアレント』『センス8』『Looking/ルッキング』のような作品が好評を博し、日本でも配信されました。今後もネット配信ドラマの分野でどんどん良質なクィア作品が制作される予感がします。楽しみです。

ドラマといえば、田亀源五郎『弟の夫』のドラマ化が大反響を呼んでいますが、これは日本だけでなく、きっと世界的にも注目を集めることになると思います。原作がアングレーム国際漫画祭(漫画界のカンヌとも言われる欧州最大のコミックアワード)で最優秀漫画賞にノミネートされるなど海外でも評価されているからです。

ファッション界でも素敵なニュースがありました。まず、オープンリー・ゲイのエドワード・エニンフルが英版『ヴォーグ』誌の編集長に就任したことは、本当にスゴいと思います。『ヴォーグ』誌の編集長といえば『プラダを着た悪魔』(『アグリー・ベティ』も?)の鬼編集長のモデルと言われるアナ・ウィンターが有名ですが、エドワード・エニンフルは将来、この手の映画やドラマのモデルになるかもしれません。スウェーデン発の有名ファッションブランド「アクネ(acne)」が史上初めて黒人ゲイカップルを広告に起用したことも話題になりました。


4.世界のLGBT著名人への「おめでとう&おくやみ」

ギルバート・ベイカー

今年のGoogleのレインボープライド仕様は、ギルバート・ベイカーへの追悼として8色のレインボーになっていました(ギルバート・ベイカーがデザインしたレインボーフラッグは最初8色だったのですが、いろいろな事情で6色になったのです)

最後は、おめでとう&おくやみのコーナーです。

まず、2017年、『コパカバーナ』のバリー・マニロウ、かつてトップアイドルだったアーロン・カーター、ジャッキー・チェンの娘であるエッタ・ン(呉卓林)がカミングアウトを果たしました。米プロスポーツ界で初となるトランスジェンダーの選手も誕生しました。

同性結婚したゲイやレズビアンのカップルは、そんなに多くはありませんでした。ドラマ『ARROW/アロー』に出演する俳優のコルトン・ヘインズが、有名フロリストのジェフ・リーサムとめでたく結婚しました。また、『トワイライト』シリーズのクリステン・スチュワートがスーパーモデルのステラ・マックスウェルと結婚秒読みではないかと報じられました。それから、サム・スミスが俳優のブランドン・フリンと交際しはじめたというニュースもありました(幸せそうで何よりです!)

おくやみとしては、世界中の人たちがパレードで掲げている、あのレインボーフラッグをデザインしたギルバート・ベイカー、そしてアメリカでの同性婚実現の立役者であるイーディス・ウィンザーが亡くなり、日本でも追悼記事が出ていました。

以上、2017年の内外のLGBT情勢を振り返ってみました。2018年はどんな年になるでしょうか? 少しでもLGBTQ+(性的マイノリティ/クィア・ピープル)が安心して暮らせるような、生きやすい世界になることを祈りたいと思います。