朝ドラ「わろてんか」で好演! 歌手としても侮れない藤井隆

打率はそれほど高くないですが、芸人がミュージシャンや歌手としていい仕事をすることもあります。最近なら、ピコ太郎ですね。2008年のことですが、「侮れないふかわりょう(ロケットマン)」という記事を書きました。ミュージシャンとしてのふかわりょうにリスペクトを込めて綴っています。文中で「藤井隆とふかわりょう、この二人は音楽センスのいい二大芸人です」と宣言していましたが、足掛け9年の時を経て今回は歌手としての藤井隆にスポットを当ててみます。

ザ・ベスト・オブ藤井隆 AUDIO VISUAL(amazon.co.jp)
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ザ・ベスト・オブ藤井隆 AUDIO VISUAL


現在、藤井隆は、NHKの朝ドラ「わろてんか」に登場する“売れない芸人”万丈目吉蔵の役で好演しています。フジテレビ「痛快TVスカッとジャパン」での“ナンダカンダこじつけ迷信パパ”としての怪演ぶりも見事。藤井隆には変だけど妙に爽やかな存在感を感じます。

「ナンダカンダ」でブレイク後、二枚の良質ポップス・アルバムをリリース

藤井隆は、1992年にサラリーマンを辞め吉本興業で本格的に芸人として道を歩み始めます。2000年には浅倉大介のプロデュースによりシングル『ナンダカンダ』で歌手デビューを果たしました。音楽通であるものの、藤井隆は自分を歌手として大して評価していたわけではなく、最初はこの企画に乗らなかったのです。しかし、Stock Aitken Waterman系ユーロビート路線の「ナンダカンダ」は、オリコン・チャートで9位、紅白歌合戦にも出場するといういきなりのブレイクを果たしました。

藤井隆と言えば、最大のヒット曲「ナンダカンダ」というイメージですが、実のところ、僕が歌手・藤井隆への興味が急上昇したのは、彼のデビュー・アルバム『ロミオ道行』(2002年)です。「ナンダカンダ」で成功を収めた藤井隆は自ら松本隆を切望することで、松本隆が作詞・プロデュースをした隆&隆の本作が生まれました。こちらが本来の彼の趣向なのでしょう。それまでのシングル曲「ナンダカンダ」と「アイモカワラズ」(両曲ともGAKU-MC&浅倉大介)もボーナストラックとして収められていますが、明らかに違う世界観の作品です。

ロミオ道行 (amazon.co.jp)
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ロミオ道行


3枚目のシングルとなった松本隆&筒美京平のゴールデンコンビが生み出した昭和ディスコ歌謡「絶望グッドバイ」を完全に自分のものとしています。それだけでありません! キリンジ兄(堀込高樹)が作曲した「未確認飛行体」(4枚目のシングル)と「代官山エレジー」では、正当なシティーポップの継承者としての真価を発揮しました。歌手・藤井隆を知りたければ、まずは『ロミオ道行』を聴いてください!

続く2作目『オール バイ マイセルフ』(2004年)は、前作が偶発の産物ではなかったことを証明してくれます。プロデューサーは松本隆から前作にも関わった本間昭光(ほとんどの編曲)と島武実(元Plastics)にバトンタッチし、よりエレクトロニックなアレンジとなりましたが、シティーポップを継承しています。シングルにもなったキリンジ兄作詞作曲の「わたしの青い空」は、後にキリンジとしても『KIRINJI SONGBOOK』(2011年)でセルフカヴァーしています。

オール バイ マイセルフ (amazon.co.jp)
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オール バイ マイセルフ


また、同じキリンジ兄が作曲した「1/2の孤独」では、藤井隆は四方海(残念ながら僕と同じ「しかた」ではなく「しほう かい」と読みます)という名義で島武実の勧めで作詞に挑戦しています。「ある夜 僕は逃げだしたんだ」では、YOUが作詞家としていい仕事をしています。

「OH MY JULIET!」で男Tommy february6化

6枚目のシングルとなった『OH MY JULIET!』(2005年)では、Tommy february6の協力によって、藤井隆は“男Tommy february6”化を果たします。「ナンダカンダ」でのユーロビート路線の延長線上にあり、「ナンダカンダ」ほど売れませんでしたが、ディスコサイドの藤井隆の魅力に溢れています。Tommy february6が監督したアメリカン・ハイスクールをダンスステージにしたミュージッククリップも秀逸で、ハマりキャラとなっています。

OH MY JULIET! (amazon.co.jp)
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OH MY JULIET!


続いて、箸休め的(悪いという意味ではない)にリリースされたのが、『上海大腕』(2006年)と『上海大腕II』(2007年)です。2005年から2007年にかけてテレビ東京で放映されたバラエティ番組「上海大腕」の中でDJ大碗として藤井隆が歌う楽曲が集められたもの。

上海大腕 (amazon.co.jp)
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上海大腕


今までは芸人・藤井隆を封印していましたが、初めての芸人的側面を押し出した作品とも言えます。『上海大腕』では、「OH MY JULIET!」を含めてほとんどの楽曲を北京語で歌うという難易度の高い歌唱(北京語わかりませんが)をこなしています。島田珠代とのセクシーセクハラユニット、T&Tによるもともと1分程度のトラックを5分以上に引き伸ばした「TT&T Remix version」の無理矢理感も個人的には好きです。


2013年から再び本格的に歌手活動を開始!

その後、松田聖子とデェットをしたシングル『真夏の夜の夢』(2008年)、2013年の『She is my new town/I just want to hold you』(2013年)といった松田聖子による作詞作曲で二つのシングルを発表するものの、この二つのシングルの間はTHE ポッシボー with 音の素(藤井隆&椿鬼奴)のよる『やべ~なべ~な 圧力ベ~ナ~』(2010年)以外は目立った歌手としての活動はありません。

その後の藤井隆の方向性を予見する上で節目と考えられるのは、Small Boysの「Selfish Girl feat. 藤井隆」(2013年)とtofubeatsの「ディスコの神様 feat. 藤井隆」(2014年) のフィーチャリング参加です。また、2014年のDead or Alive的なネーミングのトリオ、Like a Record round! round! round!(藤井隆、レイザーラモンRG、椿鬼奴)による名曲「ナウ・ロマンティック」(TOWA TEIがプロデュースしたKOJI1200)のカヴァーも忘れてはいけません。なお、この作品は、藤井隆自らが立ち上げたSLENDERIE RECORDからの第1弾となりました。



そんな中、満を持してリリースされたのが、5作目のアルバム『Coffee Bar Cowboy』(2015年)です。藤井隆自身が多くの作詞・作曲を手掛けつつ、西寺郷太(NONA REEVES)と冨田謙を共同プロデューサーに迎えました。ポップスとしての良質性を失うことなく、藤井隆を自らのラジオ番組「ウィークエンド・シャッフル」で絶賛した宇多丸(RHYMESTER)、藤井隆の伴侶である乙葉、作詞家としても協力してきたYOUをゲストにダンスナンバーに仕上げた作品となっています。

Coffee Bar Cowboy (amazon.co.jp)
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Coffee Bar Cowboy


ちなみに藤井隆が乙葉と結婚したのは、2005年。藤井隆が『ロミオ道行』を発表した2002年に乙葉はOtoha名義で『OtohaCD Volume1』と『OtohaCD Volume2』の2枚のアルバムを出しており、斉藤由貴のカヴァーを2曲しています。一つは、奇遇だと思いますが、松本隆&筒美京平・作の「卒業」、もう一つは銀色夏生・作の「かなしいことり」です。歌唱力が際立つ人ではありませんが、彼女のピュア度を生かす上で、斉藤由貴を選んだのは正解です。

OtohaCD Volume1 (amazon.co.jp)
otohacdvolume1

OtohaCD Volume1


最新作では“90年代CM音楽”の世界観を披露

藤井隆に戻りましょう。2015年には自らの代表作を集めた『ザ・ベスト・オブ藤井隆 AUDIO VISUAL』、2016年にDJミックス・アルバム『DJ MIX "Delicacy" mixed by DJ DC BRAND’S』、2017年にはリミックス・アルバム『RE:WIND』、そして6作目のオリジナル・アルバムとして『light showers』をリリースしました。

最新作は前作から引き続き冨田謙。藤井隆も冨田塾の塾生と自認をしており、ここで繰り広げられるのは“90年代CM音楽”の世界観です。細かい説明をするよりも、プロモーションのためだけに作ったとは思えない異常に高いクオリティーのビデオを観てください。素晴らしいの一言です。




light showers
(amazon.co.jp)
lightshowers

light showers


最後にお子様(多分、読んでいないと思うけど)そしてお子様がいるママ・パパのために「エチケットマン」(2017年)をご紹介します。これは教育番組「しまじろうのわお!」からの楽曲で、DE DE MOUSEが手掛けた教育的エレクトロ童謡。同番組ではPUFFY=石野卓球という異色の組み合わせによる「トモダチのわお!」(2012年)もあり、藤井隆だけでなく、しまじろうも侮れないのです。


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