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UPDATE! エイズのイメージを変えよう

HIVやエイズの予防法が話題に。情報をアップデートする動きが高まっています。

HIVやエイズの予防法が話題に。情報をアップデートする動きが高まっています。


ボランティアガイド 筑波君枝さんの「レッドリボン運動とは?エイズ(HIV)への理解と支援」という記事にもまとめられていますが、毎年12月1日は世界エイズデー(World AIDS Day)です。世界レベルでのエイズの感染拡大防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、WHO(世界保健機関)が1988年に制定したもので、世界各国でHIV/エイズに関する啓発活動が行われる日です。

厚労省が発表した2017年の世界エイズデーのキャンペーンテーマは、「UPDATE! エイズのイメージを変えよう」でした。「もはやエイズは死に至る病ではない」「HIVに感染していたとしても検査を受けて早めにわかって治療を受ければずっと元気に生きていける」ということが以前から繰り返し言われてきて、エイズへの偏見をなくそうと呼びかけられています。

「UPDATE! エイズのイメージを変えよう」は、実は今年の「TOKYO AIDS WEEKS」(後述します)のテーマでもありました。そこには、最新のHIV予防法のことや、新たにわかった大切な事実についても知ってほしいという意図が込められているようです。

今回は、その最新のHIV予防法のことを中心に、「TOKYO AIDS WEEKS」のレポートをお届けします。


「TOKYO AIDS WEEKS 2017」を振り返って

毎年11月頃、医師や研究者、団体の方たちが集まってHIV/エイズについての最新の知見を共有・議論する「日本エイズ学会」が、全国のいろんな都市で持ち回りで開催されています。2017年は11月24~26日に東京・中野区で「日本エイズ学会」が開催されました。そして、同時開催で、様々なNGOやグループと連携しながら情報発信を行う市民向けプログラム「TOKYO AIDS WEEKS 2017」も2017年11月23日~26日に中野区との「共催」で開催され、充実した有意義なイベントとなりました(自治体は「後援」はすることはあっても、なかなかこういうイベントを「共催」することはありません。素晴らしいです)
中野区役所

中野区役所に掲げられた大きなレッドリボン


シンボリックだったのは中野区役所に大きなレッドリボンが掲げられたことです。たまたま通りかかって見た方や、中野駅の電車のホームから見た方もいらしたと思います。ゲイがたくさん住む街で、HIV陽性者支援の象徴であるレッドリボンが大きく掲げられたことには感慨を禁じえませんでした。中野駅前やサンモール商店街にも「TOKYO AIDS WEEKS 2017」という垂れ幕が目立つように掲げられていました。

「TOKYO AIDS WEEKS2017」では、「OUT IN JAPAN」写真展・映画上映・ゲイのコーラス団による演奏・市民向けのシンポジウムなどが連日無料で行われ、アットホームな雰囲気の中で楽しみながら情報を「アップデート」できました。超満員で立ち見が出たプログラムもありました。

特筆すべきは、今回、コミュニティの中心で活躍するゲイの方たちが運営に関わっていたことです。中野区への働きかけには中野区議会議員の石坂わたるさん、「日本エイズ学会」の代表はHIV陽性者支援団体「ぷれいす東京」代表の生島嗣さん、「TOKYO AIDS WEEKS 2017」の代表は東京レインボープライド共同代表の山縣真矢さん、事務局長は日本HIV陽性者ネットワークJaNP+代表理事の高久陽介さんが務めていました。当日のボランティアスタッフにもたくさんのゲイの方がいらっしゃいました(おつかれさまでした)。

続いて、「TOKYO AIDS WEEKS 2017」でも繰り返し語られ、強調された「アップデート」してほしい情報、HIV/エイズに関する最新情報をお伝えいたします。


たとえ針刺し事故が起きても感染の心配はほぼありません

まず、治療してHIVウイルスが検出限界値以下になった方、つまり、ちゃんと薬を飲んでいる方のほとんどは他の人に感染させることはないということが明らかにされました。

このことは日本の医療機関ではまだ周知されていないようです。2017年12月13日の西日本新聞に次のような記事が掲載されました。
医療機関には、患者の血液が付いた器具で誤って外傷を受ける「針刺し事故」への不安が根強い。実際には、標準的な感染症対策を取り、治療中の人ならほぼ感染しない。正しい情報が医療従事者にも行き届いていない

出典:「HIV感染者は診ない」病院に断られ… 風邪や腹痛、市販薬でやり過ごす 偏見、今も根強く/西日本新聞(2017年12月13日配信)

この記事では、福岡市在住のHIV陽性の男性が、「HIV感染者は診ない」と何度も病院に診療拒否され、風邪や腹痛は市販薬でやり過ごし、虫歯になると必死で歯科医を探す……という悲しい現状がつづられています。福岡では転院や介護施設への入所が必要な人が拒絶され、適切なサービスを受けられない現実があるのです。

ウイルスが検出限界値以下になっていれば相手に感染させる心配はないということ、万が一事故が起こったとしても、PEP(ペップ)=post exposure prophylaxis(曝露後予防)によってほぼ感染率をゼロにできるということを知っていれば、HIV陽性者に対する差別的な扱いや診療拒否もなくなっていくはずで、速やかな改善が望まれます。

以下に、この2つの事柄について、詳しくお伝えします。

■1.ウイルスが検出限界値以下になっていれば相手に感染させる心配はない

「U=U」

映画『BPM』上映会のトークセッションより。真ん中の大塚隆史さんが持っていらっしゃるボードに「U=U」と書かれています。

近年、エイズ国際会議などで「U=U」というプラカードが掲げられたりしています(「TOKYO AIDS WEEKS 2017」でも掲げられていました)。これはUndetectable(検出限界以下)=Untransmittable(感染させる可能性がない)という意味で、HIV陽性であっても治療してウイルスが検出されないくらい少なくなっていれば、相手に感染させる心配はないという、最近実証された事実を訴えるものです。

この事実は、2016年に南アフリカ・ダーバンで開催された国際エイズ会議で発表された、欧州での最新の研究結果に基づいています。片方が陽性、片方が陰性である888のカップル(男×男および男×女)を対象にした調査で、治療を続けている陽性者のウイルス量が検出限界値以下である場合、コンドームを使わない約58000回ものセックスでHIV感染はゼロだったということが実証データとして示されたのです。

この事実は、とても大きな意味を持っていると感じます。以前は、ゲイの間でも、HIV陽性の告知を受けて恋愛やセックスをあきらめてしまったり、HIV陽性者とはつきあえないと拒絶されたりという悲しい話をたくさん聞きました。これからは、大丈夫だよ、ちゃんと治療してればうつす心配はないからね、と自信を持って言えますし、みんながそう言えるようになってほしいな、と思います。


■2.万が一事故が発生したとしてもPEPによってほぼ感染率をゼロにできる

それから、PEP(曝露後予防)の詳細をお伝えします。聞き慣れない用語かと思いますが、ひとことで言うと、HIVに感染したかもしれない行為の後(曝露後)72時間以内に、抗HIV薬の内服を開始し、HIVに感染するリスクを低下させる予防策のことです。服薬を28日間続ける必要があります。欧米では、性交渉で(例えばコンドームが破ける事故があったりして)感染リスクを感じた際、PEPを受けられる体制が整えられつつありますが、日本ではそうしたケースでの抗HIV薬内服はまだ承認されていないため、自費診療となります(1ヵ月で約30万円もかかるため、気軽に利用できるものではありません)。針刺し事故など医療従事者のPEPは承認されています。

エイズ予防財団が運営するAPI-Netに掲載されている「HIV感染症の基礎知識」によると、もともとHIVウイルスは肝炎ウイルスなどに比べて感染力がとても弱く(針刺し事故でも感染率は0.3%です)、PEP(曝露後予防)を行うことで感染リスクはほぼゼロになります。例えば曝露後にAZTという薬を飲み続けるだけで感染リスクを80%以上低下させることがわかっています(0.06%未満ということになります)。多剤併用であれば、さらにリスクを下げることができます。

これまでHIV予防といえば、ちゃんとコンドームを使いましょう(できれば感染のメカニズムを学びましょう)というセーファーセックスの推奨がほぼ唯一の予防法とみなされていました。どこか、HIVを持っている人との性交渉は危険だ(うつるかもしれない)から気をつけて、というニュアンスもあったように感じます。

しかし今は、「相手がちゃんと治療している場合は感染リスクはゼロですよ、たとえ事故が起こってもPEP(曝露後予防)によって感染を防げますよ」と言うことができます。安心感がグンと上がりました。そして、陽性者を遠ざけるような気持ちが払拭されていくことにもつながるでしょう。

続いて、最新の予防法「PrEP(プレップ)」について紹介します≫≫