ストレスマネジメント/セルフケア(個人のためのストレス基礎知識)

言うことがコロコロ変わる上司……疲弊しない対応とは?

指示や意見など、ともかく言うことがコロコロ変わる上司……。部下として、そんな一貫性のない上司への対応で疲弊しないために、どんなコミュニケーションをとればいいのでしょうか?意思疎通が難しい上司とつきあう上での接し方・対応を紹介します。

蝦名 玲子

執筆者:蝦名 玲子

ストレスマネジメントガイド

言うことがコロコロ変わる困った上司とどううまく付き合う?

意思疎通できない上司を味方につける

意思疎通できない上司を味方につける


先日、「上司の指示・意見がコロコロ変わるんです。対応に疲れてしまって……」という方の悩み相談にのりました。

「わかりあえた」と思った次の瞬間には言うことが変わる。そんな一貫性のない上司がいたら、どう付き合っていけばいいのでしょうか?

<目次>

やっちゃダメ!デメリットしかない「対立」と「我慢」

こうしたときにやりがちな、でも、決してやらないほうがいいことを2つ、ご紹介します。

1つめは「上司と対立する」こと。

「このあいだは、こうしろと仰ったじゃないですか! 指示をコロコロ変えるのはやめてください!」

そう言いたくなる気持ちはわかりますが、感情をぶつけ、対立するのは、あなたにとってデメリットしかありません。

怒りの感情が間に入ると、話し合いがうまく進まないだけでなく、人間関係が悪化し、その後の仕事が余計にやりづらくなります。
 
上司との対立

上司との対立


2つめは「我慢する」こと。

「私が耐えさえすれば、丸く収まる」と考え、言いたいことを言わずに我慢する、という人も多くいます。

この方法では、最初のうちはうまくいっているように見えますが、結局、我慢しきれなくなるまで不満が溜まり、「不満や怒りの爆発」や「ストレスが原因の病気の発症」という形で突然の悲劇に見舞われることになりかねません。

では、どうしたらいいのでしょうか?

ポイントは、人間関係を悪化させずに、自分の意見を伝えることです。さらに、困った上司を味方にすらしてしまう、コミュニケーションの秘訣があるので、4つのコツにまとめて、お伝えしましょう。
 

コツ1)「わかりました」+内容復唱・要約、最後に確認

言うことがコロコロ変わる困った上司とどううまく付き合う?

復唱、要約、確認を習慣に

まずは、「わかりました」と上司の指示や意見を理解したことを伝えたうえで、会話の内容を復唱・要約し、最後に確認することを習慣にしましょう。

「わかりました。新製品の機能面を強調した資料を28日10時までにつくる、ということですね」

このように、「わかりました」と最初に言うことが、上司を味方につけるコツです。

私はアメリカで暮らしていたことがありますが、異なる文化・言語的背景を持つ人たちが一緒に暮らしていると、理解し合えないことが多々あります。

そうしたなか、かの国では、「わかりました(I understand what you are saying.=「あなたの言うことを理解しました」というニュアンス)」と意思疎通できたことをまず伝え、その上でその意見に同意するか否かを伝えるという工夫をしています。

最初に「わかりました」と言うことで、「ああ、こちらの言ったことがきちんと伝わった」と相手にまずホッとしてもらうことができるのです。

では、上司の指示や意見に同意できない場合は、この後にどう続けたらいいのでしょうか?
 

コツ2)「あなた」を主語にしない質問をする

次のコツは、「あなた」を主語にしない質問をすることです。

「ただ、最初は機能面を強調した資料をつくるとのことで、次は価格面を前面に出すように変えました。さらに今回また機能面に戻すことになったわけですが、今回の変更の一番の理由は何なのか、教えていただけないでしょうか?」

このように、「今回の変更の一番の理由」を主語にすることで、客観的な質問ができるのです。

一方、「なぜ、あなたは変更したのですか?」という「あなた」を主語にした質問をすると、相手は「質問されている」というよりも「詰問されている(=攻撃されている)」と感じます。

すると「攻撃されているのだからディフェンスしなければ!」という思考が生まれ、対立関係を生み出しやすくなるのです。

対立してしまうと、当然ながら「変更に至った理由」を冷静に教えてもらうことは難しくなります。
 

コツ3)「自分の意見+役立つ情報」を伝えた上で、相手の意見を聞く

さて、「今回の変更の一番の理由」を主語にした先ほどの質問で理由がわかったら、ここで一旦、上司の意見を受け止め、自分の席に戻りましょう。

一度受け止めることによって上司の面子を立て、自分も新たな視点から熟考することでさらに良いものを生み出せる可能性が高まります。

ただ、再考してもなお上司の指示に納得できないようであれば、この段階でもう一度話し合いの機会を設け、あなたの意見を伝えた上で、上司の意見を聞きましょう。

「課長のご指示通り、機能面を前面に出しましたが、市場について再度調べてみると、新しいデータが見つかりました。このデータを見る限り、やはり価格についても強調したほうがいいと思い、少し目立つようにしてみました。ご意見をお聞かせください」

このように、意見を伝えるとき、上司にとっても新たな役立つ情報を加味すれば、あなたの意見がより受け入れられやすくなります。
 

コツ4)指示の出し方が改善されたら、感謝を伝える

こうしたコミュニケーションを日頃からとるようにし、少しでも指示の出し方が改善されたら、「先にそれを伝えて頂き、助かりました」等、感謝の気持ちを伝えましょう。
 
上司との信頼関係

上司に感謝の気持ちを伝える


実は「指示や意見がコロコロ変わるタイプの上司」は、周りの目を気にしていることが少なくありません。

こうした人は、追いつめられていないときは、目配りができたり、慎重で大きな失敗をしにくかったりする長所をもつことが多いものです。

そうした上司の良い面に気づき、人として上司のことが好きになれれば、あなたの内面から優しさが溢れるようになるはず。

あなたが優しい態度で接するようになると、上司も「この部下は、自分のことをわかってくれている」と感じ、あなたを信頼するようになります。

互いが優しさを出し合い、信頼し合える関係になれたら……。上司はあなたにとっての「ストレス原因」ではなく「助けてくれる味方」になることでしょう。


【参考文献】
蝦名玲子(2012).困難を乗り越える力~はじめてのSOC.PHP研究所.

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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