500万ケースに達する勢いのスーパー80歳「角瓶」

角瓶

角瓶

サントリー「角瓶」が誕生80周年となる。もうすぐ、2017年10月8日がその誕生日だ。
このウイスキー&バーのサイトで書きはじめて15年。いろいろなブランドについて語ってきた。そのなかで、やはり最も思い入れのあるウイスキーが「角瓶」である。何度も「角瓶」について触れてきたが、10年以上も前、これほどまでのナショナル・ドリンク、脚光を浴びる大スターになるとは予想もしていなかった。
もちろん、かつても「角瓶」は日本のウイスキー市場を支えていた。ただしブランドイメージとしては、存在感のある渋い名脇役だった。しかしながら販売数量は、いまや500万ケース(瓶700ml換算約360万ケース、角ハイボール缶シリーズ700ml換算約130万ケース/2017年度予測)に達しようという数字である。80歳になっても衰えを知らない千両役者なのだ。凄い。

角ハイボール缶

角ハイボール缶

2004年4月の記事『日本のウイスキーづくり80周年、情熱の時代 ひとりの男の魂が宿った、傑作』では、「角瓶」が戦前の1937年に誕生していなかったら、日本人のウイスキー市場の発展は遅々としたものだったろう。「角瓶」が誕生したから、いまのジャパニーズウイスキーの興隆がある、と述べた。
誕生70周年の2007年10月には2本の記事をアップしている。1本は「角瓶」を小津安二郎の映画を語りながら“いぶし銀”とたとえ、決してマグロや鯛といった高級魚ではないが、日本人にはなくてはならない味覚と書いた『秋の味覚、秋刀魚のようなウイスキー』。もう1本の記事は、かつてのバランタインのマスターブレンダー、ロバート・ヒックス氏とサントリーマスターブレンダーの鳥井信吾副社長(現サントリーホールディングス株式会社代表取締役副会長)の対談時の感想を伝えたもの。ウイスキーには10年や12年(前菜)、17年(メインディッシュ)、30年(デザート)といった長期熟成ウイスキーがあるが、それらのベースとなる最もスタンダードな味わいといったものがなければならない。パンとバターの「角瓶」の延長戦上に「響」があると、『パンとバターのようなウイスキー』というタイトルで語った。

ジャパニーズウイスキーの誇り、亀甲ボトル「角瓶」

福與チーフブレンダー

福與チーフブレンダー

ところがこの10年でウイスキーシーンは大きく変わった。わたしが書いたかつての論調は、もはや“こんな時代もあったらしい”という古い文献になってしまったのである。
角ハイボールがすべてを変貌させた。昔からあったウイスキーのソーダ水割を、国民的ドリンクスタイルとして定着させてしまう。それだけではない。角ハイボールが新たなウイスキーファンを生み出し、それとともに若い世代を「響」といったプレミアムウイスキーをはじめシングルモルトウイスキーへと導いた。これもまた凄いことである。
ウイスキーシーンは時代とともに変貌する。時代が生むファッション、ブームといった言葉では語り切れないものがある。
亀甲ボトル「角瓶」の80年間。誕生してしばらくして戦争があった。そして戦後の混乱期、高度経済成長、バブル期、低成長の時代とつづいた。こうした中で、何度も酒税法が変わり、価格も上下した。つくりの現場では原料大麦の品種改良がすすむ。大麦価格もさまざまな事情で変化する。
ウイスキー事業はとても難しい。製品化されるまでに樽の中で何年も熟成させるわけだが、蒸溜したときにボトルに詰められる時代の世相なんぞ読めるはずがない。それでも未来に希望を抱いてつくりつづける。あなたの目の前にあるボトルはウイスキー職人のスピリットの証だ。
揺れ動いた80年の年月、「角瓶」のスピリットは生きつづけてきた。香味品質は何世代ものブレンダーが守りつづけている。いま現場で指揮を取るのは福與(ふくよ)伸二チーフブレンダーだ。
福與チーフは、10年後も20年後も「角瓶」が「角瓶」でありつづけるために日々研鑽を積まれている。そしてこの毎日が次の世代のブレンダーに受け継がれていく。わたしは「角瓶」100周年までは生きつづけなければ、と思う。その時のウイスキーシーンを眺めながら「角瓶」を飲みたい。
さあ、10月8日の日曜日。ジャパニーズウイスキーの誇り「角瓶」を飲もう。わたしは感謝しながら、角ハイボールを飲む。

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