昆夏美undefined東京都出身。洗足学園音楽大学在学中に『ロミオ&ジュリエット』オーディションでジュリエット役を射止め、デビュー。以降『ハムレット』『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『ファースト・デート』『グランドホテル』等様々な舞台で活躍。13年にはアニメの主題歌『わたしは想像する』でCDデビュー。17年には『美女と野獣』吹き替え版で美女役を担当。(C)Marino Matsushima

昆夏美 東京都出身。洗足学園音楽大学在学中に『ロミオ&ジュリエット』オーディションでジュリエット役を射止め、デビュー。以降『ハムレット』『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『ファースト・デート』『グランドホテル』等様々な舞台で活躍。13年にはアニメの主題歌『わたしは想像する』でCDデビュー。17年には『美女と野獣』吹き替え版で美女役を担当。(C)Marino Matsushima

最終頁に『アダムス・ファミリー』観劇レポートを掲載しました*

アメリカの人気漫画を舞台化、2010年にブロードウェイで開幕したミュージカル『アダムス・ファミリー』。ラテン系の情熱的なパパをはじめとするお化け一家のキャラクター設定はそのままに、アンドリュー・リッパ(『ビッグフィッシュ』)のキャッチ―な旋律と、娘ウェンズデーの恋人一家の訪問騒動というオリジナル・ストーリーを通して、アニメ版や実写映画版(91年)とは一味違う“普遍的な家族愛”ストーリーに仕上がっています。

そしてこの度、14年に白井晃さん演出によって初演、大きな話題を呼んだ日本版が待望の再登場。初演に引き続いてウェンズデーを演じるのが、今春公開のディズニー映画『美女と野獣』美女役の吹き替えで、全国的な注目を集めた昆夏美さんです。今夏~秋には『レ・ミゼラブル』で、当たり役の一つエポニーヌを演じ、充実の時を迎えている彼女に、本作への意気込み、そして“ミュージカル大好き少女”だった頃からの歩みを、たっぷりとうかがいました。

“お化けの女の子”の風変りな恋を
さらにパワーアップして演じる
『アダムス・ファミリー』

――昆さんは以前から『アダムス・ファミリー』をご存知だったのですか?
『アダムス・ファミリー』

『アダムス・ファミリー』

「(91年の実写)映画版は以前、観たことがあって、日本初演への出演が決まって改めて観なおしました。(サスペンス仕立ての騒動が軸となっている)映画版とは違って、ミュージカル版はウェンズデーが(子供ではなく)青春期で、人間の男の子に恋をしている、そして彼の家族がアダムス家を訪ねてくるところからストーリーが展開します。彼女の成長物語でもあるし、家族の愛や“普通って何だろう?”というメッセージを含んだ作品でもあると思います」

――日本初演にはどんな思い出がありますか?

「すごく楽しかったです。それまで私は笑える作品に出たことが無く、自分が死んでしまう役ばかりでしたので、客席から笑いが起きる芝居がとても新鮮でした。でもいっぽうでは、自分にコメディの引き出しがないので間の取り方一つとっても、どうやっていいかわからず、難しかったですね。白井晃さんの演出はとても丁寧で緻密で、お客様はどかんとした笑いはもちろん、くすっと笑ったり、ほろりとする部分、ほっこりする場面の一つ一つを楽しんでいただけたと思います。初日の幕が開くとだんだん皆さんアドリブが出てきたりしたのも楽しかったですが、私は常に“家族っていいな”という感覚を抱いていました。演じていると、自分の父との思い出も蘇るような温かさがありましたし、一言でいえば家族の話なのだと感じましたね」

――ウェンズデーはどんな女の子なのでしょうか?
『アダムス・ファミリー』2014年公演より。撮影:引地信彦

『アダムス・ファミリー』2014年公演より。撮影:引地信彦

「基本的に(お化けなので)人間とは異なる感性、価値観を持っているのですが、人間の男の子、ルーカスに恋をすることで、それまで全く魅力を感じなかった“かわいいもの”“キラキラしたもの”に魅力を感じるようになります。視野が広くなったのかな。「Pulled(引っ張られて)」というナンバーの中に、ウサギがかわいく思えるという歌詞があって、それまでウサギと言えば食べ物としか思っていなかったのが、ルーカスによって“そういう見方もあるんだ”と気づかされ、“ウサギってかわいいかも”と、それまで自分に全く無かった感覚を抱くようになるんです」

――そもそもなぜ、彼と恋に落ちたのでしょう?

「劇中、ルーカスが出会いを語るシーンがあるのですが、それによると彼が道を歩いてたらハトが落ちてきて、ボーガンを持ったウェンズデーが現れた。それが衝撃だったというんですね。ウェンズデーとしては、普通に(食べるための)狩りをしているだけなのに、それを“すごい”という目で見てくれるルーカスに興味を持って、それが好意に変わったのかもしれません。自分のことをすごいね、かっこいいねと言ってくれると、こちらも相手のことが気になるじゃないですか。価値観が違う者同士が交わることで、お互いに好奇心が生まれ、それがピュアな恋に変わっていったのだと思います。

でも、それを演じるにあたっては、白井さんから“普通の女の子が感じるわくわく感ではなく、普通じゃない女の子のウェンズデーとしてどう表現するかが大事です”と言われて迷いました。お客様にきちんと共感していただけるよう意識しつつも、人間じゃないということをどう表現したらいいのか。白井さんといろいろキャッチボールしつつ、これじゃない、あれじゃないと試行錯誤しながら作っていきましたね」

――“濃い”方揃いのキャストの中で、自分を表現するのはいかがでしたか?
『アダムス・ファミリー』2014年公演より。撮影:引地信彦

『アダムス・ファミリー』2014年公演より。撮影:引地信彦

「それは本当に難しかったですね。正解が分からなくて……。ウェンズデーのキャラは三つ編みしてメイクをすればビジュアル的にはわかりやすいのですが、稽古場では(扮装をしていないので)何も助けがない中で、ウェンズデーとして成立していないといけない。コスチュームに助けてもらうのは嫌だから、精一杯やるしかなくて。自分の考えと白井さんに出していただいたヒントをもとに、思いっきりやることで異質感が出るのかなと思いながらやっていました。彼女は引きこもり系ではなくて、“じと~”っと居つつも、存在感があるタイプ。そして歌うところではばーっと歌う、という押し引きを意識しました」

――今回の再演では、キャストが少し替わりますね。

「ルーカス役が柳下大さんから村井良大さんに替わるので、彼との関係性をまず一番に作っていきたいですね。もう一つ、今回はお母さんが真琴つばささんと壮一帆さんのwキャストになるので、真琴さんと私、壮さんと私と二つの関係性を別々に作っていけたらと思っています。一から作っていきたいですね」

――本作では、ウェンズデーがルーカスとの婚約を母には伏せたままディナーに招こうとすることから騒動が起きますが、ウェンズデーは「お母さんは厄介な人」、と思っているのでしょうか?

「いえ、お母さんのことも大好きではあるけど、ルーカスとの結婚を成就するにはまだ言わないほうがいい、まずはお父さんを味方につけて……と逆算して考えているんじゃないかな。そういう部分では緻密で、じとっと考えるタイプで、行動派の私とは真逆です」

――“お化け”を演じるにあたって、何か役作りは?
『アダムス・ファミリー』2014年公演より。撮影:引地信彦

『アダムス・ファミリー』2014年公演より。撮影:引地信彦

「姿勢を工夫してみました。(弟の)パグズリーやフェスタ―おじさんはぷっくりした体型で見るからに異質なのですが、私は三つ編みと黒服ぐらいでそれほど目立つものがないので、首を前にしてちょっと姿勢を悪くして、すたすたーっと歩いてみたり。それが体にしみこんだのか、公演が終わって1か月経っても、ふと“首が前に出てるよ”と言われて直したことがありましたね」

――アンドリュー・リッパの音楽はいかがですか?

「実はウェンズデーのナンバー「引っ張られて」が、学生の頃から大好きだったんです。先輩が歌うのを聴いて“めっちゃかっこいい!”と思って以来、動画サイトで米国版キャストの歌唱も何度も観ましたし、私もいつか歌いたいと思っていたので、出演が決まるとまず“「引っ張られて」が歌える!”と興奮しました。心がわしづかみにされるメロディなんですよね。実際、歌っていて楽しいし、観てくださってる方にも、私としての楽しさとウェンズデーの好奇心が相まってお伝えできればと思います」

――お客様にどう観ていただきたいですか?

「『アダムス・ファミリー』は全く怖くないブラックコメディというか、大人から子供まで本当に楽しめる作品です。共感ポイントも様々で、家族愛もあれば、20代が観てもきゅんきゅんできる部分のある作品だと思います。私たちもさらにパワーアップしますので、気軽にこのファミリーに会いに来て欲しいです!」

*次頁からは昆さんの“これまで”をうかがいます。歌と踊りが大好きだった少女が“ミュージカル好きのOLさん”ではなく、“ミュージカル界の星”に成長したきっかけとは……?


ミュージカルが学べる高校を発見し、
人生が大きく変化

『美女と野獣』上映イベントでの昆さん。(C)2017 Disney

『美女と野獣』上映イベントでの昆さん。(C)2017 Disney

――ここからは昆さんの“これまで”をうかがいたいと思います。昆さんは幼いころからミュージカルがお好きだったそうですね。

「幼稚園のお遊戯会のビデオを見返してみると、誰よりも頑張って歌って踊っていて(笑)、生まれながらに好きだったんだなあと思います。家族もミュージカル好きで、小さい頃は劇団四季さんのミュージカルを家族で観に行ってごはんを食べてから帰る、というのが一つのコースになっていました。小学校5年から中学3年までは、地元のミュージカル劇団に入っていましたが、そこは入りたい人が誰でも入れて、年に1回発表会をして……というような劇団で、私の中ではまだ趣味感覚でした。

それが中学3年で進路を考え始めた時に、洗足学園音楽大学の附属高校にミュージカルコースがあるのを知って、にわかに挑戦したくなったんです。それまで通っていた塾をやめて、親に“音楽高校に行きたい”と相談したら、驚きながらも“いいよ”といきなりの進路変更を認めてくれて。音高に入るためのレッスンにも行きなさいと言ってくれて、家族に全面的にバックアップしてもらえたので、これだけ応援してくれるし、専門的な学校に行くなら私は絶対ミュージカル俳優になるべきだと、その瞬間、“趣味”が“夢”に変わりました。親の応援に応えたいという気持ちもありましたし、進路を変えるほど私はミュージカルが好きなんだと確信を持てたことが、転機になったと思います。もしこの決断が無ければ、私は“ミュージカル鑑賞が好きなOLさん”になっていたかもしれないし、子供が好きなので“ミュージカル好きな保育士さん”になっていたかもしれませんね」

――入学した音高では、ミュージカルの授業がたくさんあったのですか?

「もちろん(高校の)一般的な科目もありつつ、木曜金曜の3,4限はミュージカルコースはミュージカル、ピアノコースはピアノの授業というふうにコース別になったりもしましたが、基本的には放課後にミュージカルのレッスンがありました。コマで換算すると8限ぐらいまでですね。大変そうに聞こえるかもしれませんが、音楽科には部活がないので、部活と考えればそれぐらいまで皆さんやってらっしゃるのではないかな。確かに大変ではありましたが、みんなが例えば物理の勉強をしているときに自分は歌ったり踊ったりできて、それで単位が取れたりもして、すごく楽しかったです。しんどい、やめたいと思ったことは全然なかったですね。ミュージカル俳優になりたいという確固たる夢があったので、レッスンを積みながらも、高2ぐらいからはどうしたらプロのミュージカル俳優になれるかということばかり考えていました」

――そして洗足学園大学に進学。推薦だったのですか?

「推薦で行くことは可能だったのですが、実は私は東宝アカデミーに入ろうと思い、大学への推薦は辞退してしまいました。そして願書を出そうとしていた時、先生方からいろいろなお話をうかがってストップがかかったんですね。当時の私はきっと俳優になりたい一心ですごく視野が狭くなっていて、いろいろな現場を見ていて人生の先輩でもある先生方がそれを見て、養成所には大学に行ってからでも行けるでしょう、もっと世の中を広く見てみなさいと言ってくださったんです。そうかと思って改めて一般試験を受け、大学に進学しました。大学では実技だけでなく、演劇論のような座学もありましたね。ただ、私の中では卒業後に不安定な状況にならないよう、1年生の間は学生生活を楽しむけど、2年生は就職活動というか、事務所に所属しようという心づもりがありました。事務所に入ってもすぐお仕事をいただけるわけではないだろうけど、2年間はまだ学生でいられるから……と考えたんです」

――その計画性、ちょっとウェンズデーと重なりますね(笑)。

「そうですね(笑)。そして2年生になると早速、ミュージカルで活躍されている方々がいる事務所を調べて、現在の事務所を受け、合格しました」

――オーディション情報というのは、大学の掲示板にたくさん貼られていたりはしないのですか?

「海外の大学ではそういうイメージがあるかもしれませんが、実際のところ、そういったことはなかったですね。先生方が、ご自身が次に出る作品でこういう募集をしているよと教えて下さることはありましたが……。『レ・ミゼラブル』などは一般公募がありますが、それ以外の作品では、事務所に入っていないと情報も入ってこないのかもしれません」

――この記事の読者の中には、ミュージカル俳優を夢見ている若い方もいらっしゃると思います。何かアドバイスをいただけますか?

「“好き”という気持ちを大事にしてほしいと思います。レッスンを受けたりオーディションを受ける日々の中で、どこかでつらくなったり、やめたくなることもあるかもしれないけれど、これが好きだと思えた瞬間を思い出してほしいですね。落ち込むことがあったら、ミュージカルを観に行って、やっぱり自分のやりたいことはこれだと再確認する。そうすることでまた気持ちが上がってくるのではないかと思います」

――昆さんのプロ初仕事は『ロミオ&ジュリエット』。大学2年の時ですね。
『ロミオ&ジュリエット』撮影:宮川舞子(C)R&J公演事務局

『ロミオ&ジュリエット』撮影:宮川舞子(C)R&J公演事務局

「まさかの合格でした。事務所のオーディションに合格後、初めてオフィスに行ったら“今度こういうオーディションがあるけど、年齢も合っているし、新人がいいらしいので受けてみなさい”と言われたんです。要綱を見たら演出・小池修一郎さん、主演・城田優さん、山崎育三郎さんとあって、“こんなにすごい作品のオーディションを受けられることになったよ、どうしようお母さん……”と、半ばふわふわした感覚の中で“はい”とお答えしました。デモテープを送ったら審査に来てくださいということだったので頑張ろうと思っていたのですが、当日、風邪を引いてしまって、全然思うように歌えませんでした。

せっかくこんな機会を与えて頂いたのに自分の体調管理不足で満足にできなかったことが悔しくて、家族で反省会を設けて“よし、次頑張ろう”と思った次の日に、学校でレッスンの順番を待っていたら、マネジャーさんから電話がかかってきたんです。“受かったよ!”という興奮気味の声を聴いて、私も“ええええぇ!”と(笑)。先生も家族も大学の同期もみんな喜んでくれて、心から“頑張らなくちゃ”と思いました。ただの学生がお仕事をいただけたということの喜びと責任感も初めて感じましたね。

でもお稽古が始まると、そうそうたるメンバーの中に(wキャストの)フランク莉奈と私が新人としてぽんと入って、どこに座っていいかもわからず、稽古場の一番端に二人で座っていました。一応ジュリエットの机はあったのですが、先輩方の前にある席にはとうてい座れなくて、パイプ椅子に座って楽譜と台本は膝に乗せて、荷物は下に置いてこじんまりしてましたね。それくらい無知というか、右も左もわからなかったけれど、ロミオ役のお二人や先輩方に一つずつ手取り足取り教えて頂いて、それで今の自分があります。ロミジュリは自分の青春ですね。ずっと忘れられない作品です」

――幸せな船出で、その後も『レ・ミゼラブル』のエポニーヌはじめ大役にも恵まれていらっしゃいますが、個人的には透明な存在感がキャラクターそのものだった『星の王子様』(2015)が印象的でした。
『星の王子様』

『星の王子様』

「有難うございます。『星の王子様』は子供の頃、母が読み聞かせをしてくれた大好きな本で、自分との関わりがもともとある作品でした。演じるなかで、王子様として心が洗われてゆくと同時に、昆夏美の心も毎公演洗われて、当時は本当にピュアになれたと思います。汚れが落とされていくというか、大人として年齢を重ねてゆくなかでこびりついていくものが、飛行士と王子様の関係性を描いてゆくなかで、一枚ずつはがされ、もともとの真っ白な心に戻れたというか。今もとても懐かしいです。もっと多くの方に観ていただきたいので、また再演があるといいねと(飛行士役の)伊礼(彼方)さんとも言い合っています」

初めての挫折で、それまで知らなかった
自分の一面に気づき、改めて心に誓ったこと

『ミス・サイゴン』写真提供:東宝演劇部

『ミス・サイゴン』写真提供:東宝演劇部

――昨年の『ミス・サイゴン』では、喉のトラブルで数か月出演がかないませんでした。大きな試練だったのではないでしょうか。

「はい、初めての挫折でした。改めて、サッカー選手が足を怪我したらプレーできないのと同じで、ミュージカル俳優は声が使えないと仕事が出来ない、何よりも大事なのが声帯だと痛感しました」

――疲労が原因だったのでしょうか?

「もちろん疲れもあったかもしれませんが、『ミス・サイゴン』の前に出演した2作品で、悲鳴を上げる場面があって、リアリティを追及して喉でうわっと声を出していたんです。自分は喉が強いと過信していたのが良くなかったんですね。手術をして、しばらくお休みすることになりました。体の他の部分は元気だし、稽古をずっとやってきてお芝居も全部体に入っているのに、喉のせいで舞台に出られないのは歯がゆかったし、生まれて初めて、ミュージカルの人たちと関わりたくなくなってしまいました。

病気になったのは自分で、自分が悪いのに、出演されている皆さんが輝いて見えて、眩しすぎて。うらやましいと思ってしまう自分もまた嫌で、すっかりマイナスな気持ちにとらわれました。初めて自分の汚いというか、人間らしい部分を知りましたね。今、思い出してもつらい半年間だったけれど、改めて自分を見直す機会になりました。舞台が出来る有難みもそれまで以上に感じましたし、この時期を無駄にするか、それを経て成長するかは今後の自分次第。将来、あのことがあって良かったなと思えるようになりたいです」

――その試練の次にチャレンジされたのが、『美女と野獣』美女役の吹き替え。画面に映っているのはエマ・ワトソン演じるベルで、その声を担当するというお仕事はいかがでしたか?
『美女と野獣』  10/4 MovieNEX発売、デジタル配信中  発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン(C)2017 Disney

『美女と野獣』 10/4 MovieNEX発売、デジタル配信中 発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン(C)2017 Disney

「本当にプレッシャーでした。エマさんのベルはアニメのベルとはちょっと印象が異なる、スタイリッシュでかっこいい現代的な女性なのですが、あくまでエマさんが演じるベルの声なので、私が想像するベルの喋り方や声のトーンではなく、エマさんの表情に寄せないとと意識しましたし、まして声の仕事は初めてだったので、二重三重のプレッシャーを感じましたね」

――映画版と舞台版では、ベルとビーストが恋に落ちる背景が微妙に異なりますね。舞台版ではビーストは文字が読めない。それをベルはお姉さん的な優しさでフォローし、二人の心が通い合いますが、映画版のビーストは高等教育を受け、教養のある男性でしたね。

「映画版では二人の間に本好きであるとか、共通の趣味があることで距離が縮まってゆきました。“シェイクスピアは僕も好きだ”“そうなの”というやりとりのなかで好きになってゆく、それもまた自然な流れだなと思いました。収録は楽しかったですね。(吉原)光夫さんがガストン役を演じていて、“難しかった”とおっしゃっていましたが、私ももちろん難しくもあったけれど、それより楽しいという気持ちのほうが強かったです。こう言っているとお仕事が“楽しい”とばかり言っていますが、お仕事の一つ一つが楽しく感じられるのは、やっぱり好きだからなんだなぁ、と今、お話しながら改めて思います」

――いつか、とんでもなく難しい役に出会って壁を感じたりすることもあるでしょうか?

「今、私は26歳で、以前は自分が最年少だったけれど、最近は現場で年下の子が多くなって来ているんです。『レ・ミゼラブル』でもエポニーヌ役を一緒にやっていた唯月ふうかちゃんは20歳だし、コゼットの二人も20歳。徐々に自分はお姉さんの枠に入って来て、それまで20代前半の役が多かったけど、大人の女性を演じなくちゃいけなくなってきたと思っています。自分は小柄なので、そういった部分はまず自分がぶちあたる壁なのかなと思います。普通の女性が当たり前に表現できる“お姉さん”らしさが、自分は内面から出していかないといけない。しっかりと表現をつけていかないと、と思っています」

――憧れの存在は?

「子供の頃に憧れていた方はたくさんいらっしゃいますが、一緒に舞台に立たせていただくと、みなさん人間的に素晴らしい方ばかりです。第一線で活躍されている方は周りを見回して、後輩の面倒も見てくださりながら、同時に自分のこともしっかり出来る。それが共通点だなと思いますし、和気あいあいと楽しいカンパニーで個々に頑張れる、そういう環境づくりをしてくださっているのを見て、後輩ができた今、私もそうしていく世代になってきたのかなと感じています」

――どんな表現者をめざしていらっしゃいますか?

「以前はミュージカルしか知らなかったから、数年前の自分だったら“ミュージカルだけやっていきたいです”と言うかもしれません。でもデビューしてからの6年間で、アニメの主題歌でCDを出させていただいたり、『美女と野獣』で声優をさせていただいたり、その関連でTVにも出させていただいたりと活動の場が広がっていく中で、さまざまなお仕事に挑戦してみたいと思うようになりました。声優としても、今回できなかった表現を次回はできるようになりたいと思いますし、好奇心を持って、活動の場を増やしていけたらと思っています」

――目の前にたくさんの扉が現れてきた、という状況でしょうか。

「そうですね。これまではミュージカルの扉しか見えなかったけれど、他にもこんな扉も、あんな扉もあったんだ、開けてみよう……と、新たな扉がどんどん見えて来たところです」

*****
そう目を輝かせながら語る昆さん。聞いている側までわくわくしてくるその語りからは、順風満帆なばかりではなく、挫折も経験してきたからこその、揺るぎないミュージカル愛がうかがえます。様々なジャンルで経験を積み、それが舞台での豊かな表現へとどのように還元されてゆくのか……。まずは『アダムス・ファミリー』での、風変りなかわいらしさに磨きのかかった(?!)ヒロインっぷりに、大いに期待できそうです。

*公演情報*アダムス・ファミリー』10月28日~11月12日=KAAT神奈川芸術劇場<ホール>、11月18~19日=豊中市立文化芸術センター・大ホール、11月24~15日=オーバード・ホール
*製作発表&楽曲発表イベント*10月1日13時~13時45分=MARK ISみなとみらい1階グランドガレリアにて。詳細は公式HPにて。
*関連記事* 父ゴメス役・橋本さとしさんインタビュー作曲家・アンドリュー・リッパインタビュー

*次頁で『アダムス・ファミリー』観劇レポートを掲載しました*

『アダムス・ファミリー』観劇レポート
風変りな賑々しさの中で、人生についての
ちょっとした気づきを与えるミュージカル

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

一部に新キャストを迎えて帰ってきた、日本版『アダムス・ファミリー』。首都圏会場は(今はなき)青山劇場からKAAT神奈川芸術劇場へと移ったことで、まずは間口、奥行きともに広々とした空間が“お化けの一族”アダムス家の邸宅という“異空間”にぴったり。客席前方数列をつぶして設けたピットからの音もクリアで、10人ほどのオーケストラは特に弦楽器と打楽器の音色が程よいバランスです(音楽監督・指揮=浅川寛行さん)。
 

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

本作の台本は構造的に、(異なる)二人の人物の会話が続き、見せ方によっては平坦な芝居になってしまうのですが、白井晃さん演出では“ご先祖様ゴースト”を演じるアンサンブルがさりげなく場をアシスト、場面転換にも参加することで常に舞台が立体的に、流麗に進行しており、観客を飽きさせることがありません。
 

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

実力派の揃ったキャストもそれぞれに魅力的で、橋本さとしさんは娘に秘密の共有を強いられ、彼女と妻との間の板挟みで右往左往するゴメス役をパワフルに演じつつ、娘への思いを歌うナンバーではほろりとさせ、“愛すべきパパ”として観客を魅了。

この日の妻・モーティシア役の壮一帆さんはセクシーな物腰とちょっぴり気が強く、さっぱりとした口跡がそこはかとないユーモアを醸し出しており、クールなエレガンスを漂わせるもう一人のモーティシア役・真琴つばささんとは全くカラーが異なりますが、どちらも魅力的なのがこの演目の面白さです。

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

人間のボーイフレンド・ルーカスとの結婚を決め、騒動の起点となる娘ウェンズデー役の昆夏美さんは歌声、演技がいっそうくっきり。ルーカスに“究極の決断”をさせる存在に説得力を持たせ、そのルーカス役を演じる村井良大さんも一見クレイジーな決断をしてしまう姿を“意外”ではなく“彼ならありうる”と思わせる役の造型で、二人が起点となるビッグ・ナンバー「くるってる(Crazier Than You)」は本作で最も躍動感に溢れます。

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

またルーカスの両親役・戸井勝海さんと樹里咲穂さんは期待を裏切らない弾けっぷりを見せ、対立しかけた人々の間をさりげなく取り持つフェスタ―おじさん役・今井清隆さんは“和みキャラ”にさらなる磨きが。彼の、“行くところまで行ってしまっている”恋愛ソングは、ある意味この上ない純愛を歌い、観客を不思議な幸福感で包みます。

そして今回、作品のスパイス的な存在となっているのが、“グランマ(おばあちゃん)”役の梅沢昌代さん。その絶妙の台詞術でウェンズデーの弟・パグズリーに含蓄ある人生訓をぽんぽんと放ちながらも、しっかりピンでとめるように聞き手の胸に届け、単なる“大騒動”というわけではない、この作品の奥深さを伝えています。

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦

“人は見かけによらない”かもしれないし、“絶対に相いれない”と思われた相手とも案外、うまくいくかもしれない。2017年版『アダムス・ファミリー』は風変りな賑々しさのなかで、そんな気付きを与えてくれるミュージカルに仕上がっています。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。