一度入院したものの治療内容によって転院するなど、実際の治療現場では何があるかわかりません。治療期間が長引いたり、転院が複数回になったりすると、医療費の自己負担額が大きな不安として押し寄せてきます。そこで頼りになるのが「高額療養費制度」。しかし、この制度、69歳以下の方に留意してほしい点があります。

今回は、妻の転院を目の当たりにした男性がぶつかった高額療養費制度の壁と、その壁を気にすることなく安心して「いざ」という事態に備える方法を紹介していきます。

<ご相談者 男性 Iさん>
  • 現在45歳で、妻(42歳)とともに地方中核都市の郊外で美容院を営んでいる。子どもは1人(14歳)
  • 美容師という仕事柄、体が資本であり健康には気を遣っていたが、昨年、妻が病気で入院。転院も経験して心身ともに疲弊。大変な思いをしたことをきっかけに、医療保障について考えるようになった
  • 子どもにかかる教育費はこれから本番を迎え、万が一のことがあったとすると、とても不安。しかし、具体的な対処法が思い浮かばず、苦慮している

高額療養費制度があるから安心!と思っていたら……

大切なパートナーがまさかの入院―――

大切なパートナーがまさかの入院…

Iさん:昨年、妻が入院して精神的にも経済的にも大変でした。健康保険の高額療養費制度で負担が軽くなるかと思いきや、実際それほどでなくてガックリ。やはり事前にきちんと備えておかないと……と考えて相談にきました。

ガイド:それは大変でしたね……。奥様はもう落ち着きましたか? 美容師さんとして、夫婦ともにご活躍なのですよね?

Iさん:おかげさまで妻は少しずつよくなり、いまは現場復帰して徐々にですが仕事も再開しています。以前のように終日ワークとはいきませんが。この件をきっかけに、いろいろ考えるようになりました。子どもはまだ中学生で学費はこれからピークに入り、踏ん張り時。生命保険に加入していますが、今回の経験を通して「医療保障は重要だ」と考えるようになりました。

ガイド:さきほどおっしゃっていましたが、高額療養費制度を利用しても負担があまり軽くならなかったと。

Iさん
:どこかで聞きかじった情報だと思うのですが、「入院して治療費が高額になっても高額療養費制度というものを利用すれば、自己負担額は1か月8万円台で済む」と信じ込んでいたんですね。でも、実際はそうはいかず。

ガイド:「1か月の自己負担上限が8万円台」というのは、高額療養費制度の資料でよく見かける数字ですね。たとえば、健康保険3割負担、年収約370~約770万円の場合は以下のようになりますね。
高額療養費で支給される金額例(厚生労働省『高額療養費制度を利用される皆さまへ』より)

高額療養費で支給される金額例(厚生労働省『高額療養費制度を利用される皆さまへ』より)

Iさん:あー、そうです。まさしくこの資料です。

ガイド:上限額は年齢や所得によって異なり、求め方は以下のようになります。
所得別上限額の求め方(厚生労働省『高額療養費制度を利用される皆さまへ』より)

所得別上限額の求め方(厚生労働省『高額療養費制度を利用される皆さまへ』より)

Iさん:表の欄外の(注)に書いてあることが気になりますが……。

ガイド:いいところに目がいきましたね。まさにそこが鍵です。転院などで複数の医療機関にかかった場合、高額療養費として合算することができますが、奥様のように69歳以下の場合、それぞれの自己負担額が2.1万円以上でないと計算対象にならないのです。

次ページでは、見落としがちな高額療養費制度の合算ルールを紹介します。