注文住宅を建てるときに「地盤調査」を行うケースは一般的ですが、なぜ調査を行い、調査結果をどのように活用しているのかご存知の方は少ないでしょう。今回は、地盤に関するさまざまな情報と調査結果の活用法について、三井ホーム生産技術本部の担当者に教えて頂きました。

「地盤調査」が必要な理由とは

三井ホームundefined生産技術本部undefined品質管理室undefined品質・安全管理グループundefinedマネージャーの権田将也さん

三井ホーム 生産技術本部 品質管理室 品質・安全管理グループ マネージャーの権田将也さん。技術開発部で、構造躯体に関する研究開発グループに約14年在籍。現在は品質管理室にて、建物品質に関わる施工・検査が適切に実施されているかをチェックする業務に携わっています。

長く安心して暮らせる住宅には、強固な建物構造と、建物自体の重さを支えられる地盤強度が必要になります。そのために、多くの住宅メーカーでは、建築計画地の地盤強度をチェックする「地盤調査」をプラン作成前に実施しています。

「戸建住宅の場合、『スウェーデン式サウンディング試験』という方法で調査を行うケースが主流です。この方法では、建築計画地の何カ所かを専門機器で測定し、地盤の強度を調べます」(三井ホーム 生産技術本部 品質管理室 品質・安全管理グループ マネージャーの権田将也さん)
スウェーデン式サウンディング試験undefinedイメージ

「スウェーデン式サウンディング試験」は、鉄の棒の先端に取り付けたスクリュー状のポイントを、地面に回転させながらねじ込み、その回転数や音などで地盤の強度や土質を判定します。


もし、地盤調査を行わずに軟弱地盤に家を建ててしまうと、家はどうなるのでしょうか。

「軟弱地盤の上に家を建てると、家が傾く『不同沈下』が発生する恐れがあります。これは、家の重量によって地盤が長期にわたって変形するのが原因なので、建築直後ではなく、5年後ぐらいから現れるケースが多いです。

たとえ美しく平らに整えられた土地でも、見ただけで地盤強度は判別できないので、建築前の地盤調査は必須といえます」(権田さん)
不同沈下イメージ

地盤が弱いと、家の重さに耐えきれなくなり、建築後数年で家が傾いてしまう不同沈下が発生する恐れがあります。


地盤調査の方法は、住宅メーカーによって異なる

多くの住宅メーカーでは、スウェーデン式サウンディング試験のような機械で測定する「現地試験」のみで地盤強度を判断してしまっているケースが多いと思います。

しかし、三井ホームの場合、「現地試験」はもちろん、「現地踏査」と「資料調査」も実施し、これら3つの調査結果を踏まえて地盤強度と地盤改良の方法を判断しています。

「現地踏査とは、建築計画地やその周辺を目視で確認する調査です。計画地に建つ古家や、その周辺に建つ家を見て、基礎や外壁にクラック(ひび)が入っていないか、ドアなどの建具は開閉しにくくないかなどを確認します。これらは建物が傾いたときに発生するため、現象が見られると軟弱地盤の可能性は高いといえます。

資料調査とは、古地図や過去に撮影された航空写真などの資料から、土地の履歴を調べる調査です。明治頃は後背湿地だった、戦前は田んぼだったなど、その土地の経過は地盤強度を左右する重要な情報なので、さまざまな資料を集めて確認しています。

そして当社では、現地踏査と資料調査、専門機器で調べた現地試験の3つの調査結果を独自プログラムで解析します。その解析結果を専門的かつ幅広い知識を持つ『ジオエンジニア』が読み、地盤改良の必要性や、改良する場合の工事内容を判断しています」(権田さん)。
三井ホームundefined現地踏査の様子

専門スタッフが建築計画地に足を運び、入念に現場をチェックする「現地踏査」。現地試験や資料調査ではわからない情報を集める重要な調査です。


三井ホームでは、3つの調査と改良工事の判断を自社で行っていますが、住宅メーカーの中には、これらすべてを地盤調査会社に一括委託している会社もあります。

「多くの地盤調査会社では、調査後の改良工事や、改良後には長期地盤保証も請け負っています。このような会社にすべて委託すると、保証期間中にトラブルを発生させないために安全性を必要以上に厳しく判断し、過剰な改良工事につながる懸念があります。

地盤改良工事費は最低でも100万円程度はかかるため、家づくりの予算計画に大きな影響を与えます。できるだけ過剰工事は避けたいですし、家の安定性は地盤だけでなく建物構造とトータルで確保することが重要なのです。

したがって、専門機器での測定が必要な現地試験は別として、地盤改良の有無や工事内容の判断は、建築を依頼する住宅メーカーが行うべきだと思います」(権田さん)。

地盤改良や補強の方法は主に4つ

地盤強度に問題がある場合、主に4つの方法で地盤改良や補強のための工事が行われます。
地盤改良の方法

主な地盤改良の方法は、1:表層改良工法、2:湿式柱状改良(深層混合処理)工法、3:RES-P工法、4:鋼管杭工法の4つ。地盤状態に合わせて、いずれかの工事が選択されます。


「1の表層改良工法は、地表面から1~2m以内に固い層がある場合に選択される工法で、土にセメントなどの固化剤を混ぜ、撹拌・転圧を行うことで地盤の強化を図ります。
一方、4の鋼管杭工法は、軟弱な層が非常に厚い場合に選択され、鋼管杭を支持できる固く良好な層まで到達させることで建物荷重を支える工法です。

ただ、実際の地盤は、柔らかい層と固い層が不規則に重なり合う複雑な構造をしているため、1や4を選択する割合は低く、2や3が選択される割合が高いです。

2の湿式柱状改良工法は、土とセメントを固めて柱状に改良する工法です。土とセメントの混ざり方が悪い部分があるとそこが弱点になり、期待した地耐力が得られないため、品質管理が非常に重要になる工法といえます。

3のRES-P工法は、杭と地盤の間に摩擦を働かせて建物を支持する工法です。住宅の荷重は比較的軽いので、鋼管杭の先端が固い層まで到達しなくても地耐力を確保できる場合に採用されます」(権田さん)

このような地盤改良や補強工事は、実際にはどの程度の割合で実施されているのかが気になるところです。

「日本の国土に占める軟弱地盤の割合は約12%に過ぎません。しかし、比較的都市部に多いため、そこに住む人口は45%といわれています。したがって、戸建住宅を建築する場合には4~5割が地盤改良している計算になります。

しかし当社の場合、『ジオエンジニア』による調査データの適切な判断により、地盤改良率は3割程度と一般より低くなっています。さらに地盤沈下による建物被害率も一般より低いことから、地盤改良の必要性を見極め、本当に必要な場合のみ実施していることがお分かりいただけると思います」(権田さん)

盛土と古い擁壁のある土地にも注意

戸建住宅の建築地では、地盤強度が低い「軟弱地盤」以外に、「盛土された土地」と「古い擁壁がある土地」にも注意すべきと権田さんはお話されます。

盛土とは、斜面や低地を造成するときに、土を盛って平らにすることです。山間部の斜面を宅地造成する場合、土地を削って平らに造成する「切土」と、削ったときに出た土を盛って平らに造成する「盛土」の両方が行われています。

「現在、盛土されているかは土地売買時の重要事項説明の対象になっていませんし、古い宅地では造成情報が紛失されていることもあるため、建築計画地が盛土・切土、どちらで造成されたのか分からないケースはとても多いです。

ただ、2014年8月に発生した広島市の土砂災害によって、大規模な谷埋めの盛土造成地には、豪雨時に地すべりのリスクがあることが明らかになりました。そのため、近年では該当地域の情報を自治体等が公開しています。気になる方は調べてみるとよいかもしれません」(権田さん)。
盛土と擁壁のイメージ

山間部のような傾斜地を宅地造成する場合、盛土と切土の両方を行い、土留めのために擁壁を造るケースが多くみられます。


擁壁とは、高低差のある土地で、側面が崩れ落ちるのを防ぐために設けた“土留め壁”のことです。造成方法の基準は建築基準法と宅造規制法で定められていますが、昔と今とでは安全基準が異なるため、古い擁壁は十分な安全性が確保できないケースが多いようです。

「地震発生時、建物は揺れに対して問題がなくても、古い擁壁が崩壊して思わぬ被害を受けることがあります。現地踏査のとき、擁壁の構造を目視し、安全性に不安があると判断した場合には、擁壁の造り直しか、万が一崩壊しても影響を最小限に留めるための地盤改良をご提案しています」(権田さん)。

どんな地盤でも、強固な家は建てられる

ミーティング

入念に調査した土地に関する調査資料と、適切に解析されたデータを、安心して住み継げる強固な家づくりに活かしています。

軟弱地盤、盛土、古い擁壁のある土地などは“注意すべき土地”ではありますが、適切な調査と必要な改良工事をすれば、問題なく宅地として活用できます。

「当社の耐震実験でも明らかになったように、建物構造の耐震性は確実に向上しています。先の熊本地震でも、揺れによる建物被害はほとんど見られず、大きな被害が見られた建物は地盤の一部が下がった、地表が滑った、擁壁が崩れたなど地盤がらみのケースでした。

つまり、大地震発生時、建物に被害が出るかどうかは地盤の状態で決まるのです。

当社で建てた家に長い間、安心・安全に住み続けて頂くためにも、地盤調査の質をさらに向上し、独自基準の分析・判断の精度をより高めることで、今以上に“強固な家”を提供していきたいと思います」(権田さん)


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