住宅の要となる建物構造の耐震性が優れていても、地盤やプランに合わせた基礎でなければその性能は十分に発揮されないことがあります。今回は、主な基礎の種類とその概要、さらに住宅メーカーよって仕様が異なることなどを、三井ホーム生産技術本部の担当者に伺いました。

基礎の種類と、その選択基準は?

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三井ホーム 生産技術本部 品質管理室 品質・安全管理グループ マネージャーの権田将也さん。建物品質に関わる施工・検査に関するマニュアルの作成・監修や、施工・検査の適切な実施を推進する業務に携わっています。

戸建住宅の「基礎」とは、建物と地盤との間にある、コンクリートでつくられた部分のことです。建物の重さを地盤に伝えることで構造を安定させ、建物の耐震性を左右する重要な部分です。

戸建住宅の場合、建物の底面全体を鉄筋コンクリートで覆った「ベタ基礎」か、建物の土台に沿って線上に配される「布基礎」が多く用いられます。

「ベタ基礎と布基礎の選択基準は、建築基準法で明確に定められています。その内容は、ベタ基礎は1平方メートル当たり2トン以上、布基礎は1平方メートル当たり3トン以上の荷重をかけても問題いない地盤で採用できるというものです。

日本の場合、1平方メートル当たり3トンの荷重をかけられない地盤が比較的多く、その土地に家を建てる場合にはベタ基礎を採用するケースが多いようです。

ただ、多くの住宅メーカーでは、自社工法に合わせた基礎を提案しています。たとえ建築地が軟弱地盤でも、提案された基礎に適応する地盤改良工事を行って家を建てれば、全く問題はありません」(三井ホーム 生産技術本部 品質管理室 品質・安全管理グループ マネージャーの権田将也さん)。
ベタ基礎

「ベタ基礎」は建物荷重をコンクリートの底面全体で支ええる構造。

布基礎

「布基礎」は建物荷重を土台部分などの線で支える構造。


三井ホームの場合、建物構造との相性を考慮し、ベタ基礎を標準採用にしています。

「基礎と建物構造は切り離して考えてもよいものですが、当社が採用している“面”で構成するツーバイシックス工法は、“面”で支えるベタ基礎との相性がよく、基礎と建物が一体化することで剛性がより高まるというメリットがあります」(権田さん)。

同じ「ベタ基礎」でも、会社によって仕様は異なる

三井ホーム以外にも、ベタ基礎を採用している住宅メーカーは数多くあります。しかし、会社によって鉄筋の量や位置などの仕様が大きく違うことは、あまり知られていません。

「当社では、独自開発した超剛性ベタ基礎『マットスラブ』を4年前に導入しました。『マットスラブ』は、従来のベタ基礎より鉄筋量を約2倍程度以上増やし、1センチ平方メートル当たり約240kgもの荷重に耐えられる強度の高いコンクリートを採用しています。

三井ホームがこれまでの基礎仕様を見直し、「マットスラブ」を導入したきかっけは東日本大震災でした。

「東日本大震災の後、被災地域で当社の家を全棟調査しました。住宅性能表示制度の耐震等級3相当の家は、激しい揺れによりタイルや壁紙に亀裂が入った軽微な被害は見られましたが、全・半壊した家は1棟もありませんでした。

ただ、建物が傾いてしまった現場はいくつか見られました。その原因は、古い擁壁が崩壊して地面が崩れときに建物が傾いてしまった、盛土が地すべりして建物も一緒にずれて傾いたなど、すべて地盤がらみでした。

この状況を見て、建物の構造強度は必要な水準まで到達しているから、地盤と、地盤と建物をつなぐ基礎の改良が必要だと感じました。とはいえ、地盤の問題は1宅地だけでは改良できないことも多いので、私たち住宅メーカーは基礎を見直そうと考え仕様を変更することにしました。

ただ、これまでの基礎も、地盤に被害がなければ建物に問題が生じていないため、“仕様変更する必要があるのか”という意見がありました。しかし、基礎の剛性をさらに高めれば、地盤に被害があっても建物被害は小さくできるはずだと思い、仕様変更に踏み切りました」(権田さん)。
三井ホームundefined耐震実験の様子

三井ホームでは、実際に起きた地震よりさらに過酷な耐震実験にも挑戦。最新の実験では震度7・連続60回に耐え抜き、強固な構造強度を備えていることが証明されました。


地盤強度とプランを考慮した設計手法を採用

三井ホームでは、「マットスラブ」への仕様変更時に、独自の設計方法も採用しています。

「ベタ基礎は、建物荷重に対して一律で鉄筋量を決めるという設計方法が主流です。しかし『マットスラブ』では、建物荷重だけでなく、地盤強度とプランも考慮し、必要に応じて部分的に鉄筋を割り増しするという設計方法を採用しています。

その理由ですが、例えば人間がベッドに寝たとき、柔らかいベッドと硬いベッドでは、身体が受ける圧力は違いますよね。特に硬いベッドだと腰や背中など特定のところに強い負担がかかります。

人の骨格を“基礎”、ベッドを“地盤”だとすると、ベッドの硬軟、つまり地盤強度に合わせて設計することで、基礎が受ける圧力・負担を分散または補強しています」(権田さん)

そして、プランを考慮して鉄筋の量や位置を決定しています。

「ベタ基礎はコンクリートと鉄筋で造られていますが、コンクリートは荷重が高すぎるとひび割れが生じてしまいます。ひび割れを防ぐために、プランを分析して荷重が集中する箇所を見つけ、鉄筋を割り増しすることで負荷に対する抵抗力を高めているのです。

このような設計手法は、ひび割れを抑制する“予防効果”とともに、基礎全体の剛性がバランスよく高まる効果も得られます」(権田さん)。
基礎のひび割れ

基礎のコンクリート部分に幅0.3~0.5ミリ程度以上のひび割れ(画像はイメージ)が生じると、そこから湿気が侵入して鉄筋を腐食し、耐久性が低下する恐れがあります。「マットスラブ」の建物荷重、地盤強度、プランを考慮した設計方法は基礎の剛性を高め、ひび割れが原因となる耐久性の低下を防ぎます。


構造劣化の二大要因を排し、耐久性の高い住まいに

「マットスラブ」は、建物荷重を分散し、コンクリートのひび割れを防ぐことで基礎の耐久性を高めていますが、建物構造部の劣化を防ぐ効果も持っています。

「木造住宅の寿命を縮める二大要因は、構造躯体が湿気で腐る、白アリに食べられる、というものです。住宅性能表示制度に『劣化の軽減』という表示項目がありますが、これは湿気と白アリ対策の内容で等級がほぼ決まります。

建物の底面が全面コンクリートの『マットスラブ』は、土から蒸発してくる湿気や、地面から侵入する白アリをシャットアウトする効果が極めて高い形状です。
さらに当社では、白アリ対策として土に薬剤または粒剤を散布する土壌対策を行い、構造木部には防蟻剤を加圧注入するなど、万全の対策をとっています」(権田さん)
三井ホームundefinedBSウォールとBS土台スペーサー

基礎の底面に防湿・防蟻シートを施すことで、土面からの湿気と白アリの侵入を防御。基礎と土台の間には「BS土台スペーサー」を配し、床下を均一な換気状態に保ち、湿気を溜め込みません。

三井ホームundefined防蟻対策

日本では、1階以下に被害を与える「ヤマトシロアリ」と、建物全体に大きな被害を及ぼす「イエシロアリ」の2種が多く見られます。三井ホームでは、ベタ基礎の採用と地域に合った適切な防蟻処理で、2006年以降は白アリ被害が発生していません。


つまり、耐久性の高い家を建てるためには、基礎がとても重要になるのです。
住宅メーカーを選ぶとき、ハイレベルな住宅性能を求めて構造・工法をじっくりと比較する方は多いでしょう。それはとても大事なことですが、基礎の種類や仕様、構造・工法との相性もあわせてチェックし、十分に理解したうえで選択してください。


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